課外活動プロジェクト

2011-2012年度学長プロジェクト

ル・コルビュジエ「カップ・マルタンの休暇小屋」の制作

世界を変えたモノに学ぶ/原寸プロジェクト実行委員会

八代克彦(建設学科)

休暇小屋の屋根越しに地中海を望む

休暇小屋の屋根越しに地中海を望む

本プロジェクトは2010年6月に神本武征前学長の「本学を元気にし、本学の存在感をアピールする企画募集」に採択されたものであり、「世界を変えたモノに学ぶ/原寸プロジェクト」と題し、建設・製造両学科協働で世界的名作と称される住宅や工業製品などを原寸で忠実に再現することで、ホンモノのエッセンスを体感することを目的としています。

そこで第一弾として、フランスの建築家ル・コルビュジエの終の棲家…フランス地中海沿岸、イタリアとの国境近くカップ・マルタンにある5坪(16.5㎡)という小さな休暇小屋…をマイナスネジ1個から家具・照明金物を含め2011-2012年度卒業研究の一環として制作しました。

なお、制作過程は建設学科YouTubeチャンネルにて公開中です。

フランス調査

梅津さとみ(建設学科2011年度卒業生)

2011年2月23日深夜、教職員6名+学生10名の総勢16名でフランスに旅立った。翌24日未明パリ・シャルルドゴール空港着、現地案内役のパリ在住の建築家野田真紅さんと合流。そのまま寝ぼけ眼で南仏ニースに空路移動、ホテル到着後休む間もなくカップ・マルタンに移動。日本からの総移動時間14時間、ついに休暇小屋にたどり着いた。

しかし、その日は内部を見られず外観のみを実測。調査後、背後の崖上にあるル・コルビュジエ夫妻の墓を見学。翌25日午前、地元観光局の内部見学ツアーに参加。内部に入れるのは4人まで、かつ20分間という厳しい制約の間隙をぬって4班に分かれて代わる代わる実測を行った。昼食後すぐに列車に飛び乗り今度は地中海沿いに西へ移動。26日午前、ル・コルビュジエがラ・トゥーレット修道院を設計する際に訪れたといわれるロマネスクの名作ル・トロネ修道院を見学。その日のうちにマルセイユに移動し、ル・コルビュジエ設計のユニテ・ダビタシオンで宿泊体験調査。翌27日パリに戻り、28日に建築遺産博物館でユニテの原寸模型を見学。最終日の3月1日、今回の調査の総まとめとしてル・コルビュジエ財団訪問。瞬く間のそして濃密な1週間だった。

前面部実測

前面部実測

背面部実測

背面部実測

ドアレバーハンドルの実測

ドアレバーハンドルの実測

図面作成

帰国後、実測データと写真を地道に繰り返し見比べて図面を描いていった。家具図面については、行田市の浦野建具の熟練職人の方々から実践的指導を受け、日本の気候を考慮して窓枠下部に水返しをつけることとした。

なお、実物の家具はクリやオークだったが、予算を遥かに超えてしまうのでタモを採用。
建築確認申請では、非常勤の朽木先生の事務所にインターンシップの一環としてお世話になった。申請段階で何度も法規の壁にぶつかった。

第一に基礎の問題。実物は基礎石の上に建物がのるというきわめて簡易な造りだったが、それでは建築基準法上問題がありとの指摘を受け、急遽、坂口教授にその妥当性を証明する“美しい手描きの構造レポート”を作成していただき、一件落着。

第二に開口の問題。「居室」で申請すると採光・換気不足とのことで、窓や防煙壁の増設に加え、24時間換気のファンまで付けることになる。それでは全く別物になってしまうので「住宅展示施設」でこれを回避した。

そして7月中旬、朽木先生のご指導のおかげで適合証明・建築確認申請が通り、ようやく着工にこぎつけることができた。

平面図

平面図

南立面図

南立面図

西立面図

西立面図

原寸制作現場

建屋の建設にあたってはフランス調査にも加わった教務職員の町田先生に地業から部材の刻み・施工にいたるまで実地指導を受けつつ行われた。

敷地は体育館脇の(地中海に見立てた!)調整池に面する一画で、まず整地と基礎の根切りを行った。問題の基礎については、直径50cmもあろうかという12個の巨石を石鑿やサンダーでひとつひとつ切り出して面をとり、これにアンカー用の穴を穿つ。それをベタ基礎に埋め込んでその上に土台をアンカーボルトで固定した。アンカーボルトの位置がずれてしまい修正に一苦労。

土台が完成したら軸組はあっと言う間に完成し、7月28日、なにはともあれ無事棟上式を迎えることができた。

プロジェクトに参加して

梅津さとみ(建設学科2011年度卒業生)

学園祭の公開展示で学長と

学園祭の公開展示で学長と
2011年10月29日

現場打合せのたびに、どの図面をいつまでに準備という段取りを考えなければいけない。1箇所の変更が他の作業にも影響するので報告・連絡・相談がとても重要となる。当たり前だがこの当たり前の大切さを身をもって学ぶ事ができた。

またフランス調査では休暇小屋だけではなく、オペラ座や凱旋門、大聖堂など沢山の建築を目の当たりにし、異なる文化・風土を実際に肌で体感することができた。
このプロジェクトに参加して沢山の方々と出会い、沢山のかけがえのない財産ができた事を誇りに思っている。

豊田航平(製造学科2011年度卒業生)

金物制作

金物制作

出発前に何度もミーティングを重ねたとはいえ、20分間という制約下での実測は緊迫した状況となった。実測時に展示物に触れることが禁じられていたので1cmグリッドの糸を張った測定補助具などを駆使したものの、どうしても触れなければ測れない対象物については細心の注意を払い白手袋をはめて樹脂性のノギスやスケールをあてた。

本プロジェクトを通して普段あまり交流の無い製造・建設両学科間で密度の濃い時間を共有し、建築についても様々なことを学ぶことができた。

また卒業制作では測定、製図、製作という一貫した流れの中で、細田教授、渡辺先生をはじめ多くの方々のご指導をいただき様々な問題を試行錯誤しながら自分なりに解決できたと思う。

そしてものを創る楽しさと充実感を実感できたこと、このことが本プロジェクトに参加した最大の成果である。

参加メンバー

カップ・マルタンの現地調査

カップ・マルタンの現地調査

(五十音順:教職員/学生 ※太字は現地調査参加者)

建築班

朽木宏・坂口昇・藤原成暁八代克彦横山晋一町田清之/青木礼・井上雄介梅津さとみ・加藤遥・田中亮・八久保裕文・安田志信・山本賢人船山浩司池田達彦宮本哲

家具・建具班

赤松明佐々木昌孝/栗田徹・近藤翔太・田中亮・吉田翔・渡辺薫恵・菅原翔

金物班

市川茂樹・日向輝彦・細田保弘・松本宏行齋藤弘樹・鈴木尭幸・豊田航平

協力

生川工務店・野田真紅(パリ在住)・朽木建築設計事務所・株式会社 浦野建具・森美術館・緑栄

「カップ・マルタンの休暇小屋」見学ガイド

見学可能日

外観はいつでも見学可能です。

内部はオープンキャンパス開催日に一般公開します。(14:00~15:30の間)

ものつくり大学アクセスマップ

ものつくり大学アクセスマップ

内部見学にあたっての注意事項

入室前に以下の5項目をお読み下さい。

  • 人数:説明者除いて最大6名まで。→ スリッパをはいて入室して下さい。
  • 入口廊下の壁画等内壁に触れるおそれのある大きな荷物(バックパック等)は原則、外に置いて入室して下さい。
  • 壁・照明・ドアなどに触れないで下さい。→ 案内者がドア類を開閉します。
  • 内部撮影OKです。
  • 見学代表者の方がお名前(所属)、人数、感想などを正方形の白いノートにご記帳下さい。

建物の概要

ル・コルビュジエ〖Le Corbusier〗[1887~1965]とは

スイス生まれのフランス人建築家。ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライト、 ヴァルター・グロピウスとともに近代建築の4大巨匠のひとり。日本での作品に上野の国立西洋美術館。

カップ・マルタンの休暇小屋とは

地中海イタリア国境近く、著名な保養地リヴィエラにあるコル夫妻の小さな別荘。
1951年(コル64歳)妻の誕生祝いに即興で設計し1952年完成。

ものつくり大学ならではの制作

ネジ一個から建具金物、照明器具、家具・・・・建物一式を2011年2月の現地調査をもとに製造・建設両学科の学生が卒業共同制作(2012年11月完成)。

制作過程 → 建設学科YouTubeチャンネルにて公開中。

ル・コルビュジエ財団からレプリカとして2012年11月9日に正式認定。 

見学の5つのポイント

敷地

現物は地中海を眼下に一望できる急峻な傾斜地。本制作では手前の池を地中海に見立てる。コルは海水浴中に溺死?。池の古代蓮7月に開花、合掌。

壁画

正面左手にはレストランが既存。休暇小屋はこのレストラン横に増築。つまり左側のモデュロール壁画は現実には存在せず。モデュロールとは「黄金比+尺度」コル創作の設計基準尺 ⇨ 壁画参照:赤・青2系列で室内設計。

内部

廊下を除いた居室は366cm(2間 )四方の正方形、つまり八畳間。
この中に黄金比長方形(141×84)4つと一つの正方形(84×84)を卍型に機能配置。

三方の窓

居室入口に立って左から、横長窓 → 背後の崖地の岩、二つの正方形窓⇨ 庭の樹木と海(水)というように自然界の3要素を切り取る。

色彩

4原色+黒。××の補色対比効果。

完成後01

完成後02

完成後03