Activities & Works活動・仕事

2018年度

ものつくり大学キャンパスの地震防災診断として、2015年度には「液状化診断」、2017年度には「建物簡易耐震診断」、そして2018年度には「家具・什器の地震時転倒診断」を実施しました。これらの成果の一部は各年度の卒業研究としてまとめてあります。

2015年度「液状化診断結果(PGA300Gal)」
2015年度「液状化診断結果(PGA300Gal)」
2017年度「建物簡易耐震診断結果」
2017年度「建物簡易耐震診断結果」

「地震防災診断」家具・什器の地震時転倒診断

2018年度には、ものつくり大学キャンパス内諸施設の家具・什器について、地震時の転倒および滑動診断を実施しました。診断にあたっては、まず、誰でも容易に家具・什器の転倒判定ができるように、「転倒判定チャート」を開発しました。

つぎに、本学諸施設の家具・什器について現地調査を行い、家具の幅高さ比(B/H)と床面の摩擦係数(μ)を測定し、これらを転倒判定チャート上にプロットして、各施設における家具・什器の転倒リスクをハザードマップで表示しました。ここでの診断結果は地震対策資料として利用できます。

「転倒判定チャート」の活用事例
「転倒判定チャート」の活用事例
ものつくり大学キャンパス内諸施設の転倒診断結果
ものつくり大学キャンパス内諸施設の転倒診断結果

東日本大震災から8年が経過しました。この間の復興状況は地域によって様々であり、8年の時間の重さをあらためて痛感する次第です。さて、昨年度から長谷川研究室では「3.11を学びに変える」をテーマに、東日本大震災の教訓をあらためて見直すプロジェクトを開始しました。

昨年度は石巻市の旧大川小学校を巡検し、震災遺構化の意義について探索しました。今年度はさらに北上して釜石市と宮古市田老町を視察し、「釜石の奇跡」と謳われた防災教育の果たした役割、また世界に誇る「田老の防潮堤」の崩壊の意味について探索しました。これらの詳細は2018年度卒業研究の成果としてまとめてあります。

釜石・大槌・山田・宮古・田老の視察概要
釜石・大槌・山田・宮古・田老の視察概要

釜石の奇跡を生んだ防災教育

「釜石の奇跡」とは、津波災害の甚大であった釜石市鵜住居地区において、鵜住居小学校(生徒361名)と釜石東中学校(生徒222名)の生徒全員が、後述の「避難三原則」に従って津波から逃れた出来事のことです。昨今では、これを釜石の奇跡とは云わず、「釜石の出来事」と呼ぶようになりました。

釜石市では、市の教育委員会が中心となって、特別な防災教育を実施しています。その背景には市の危機管理アドバイザーである、東京大学教授・片田敏孝先生というキーパーソンがいます。片田先生は「避難三原則」を提唱され、これを津波襲来時に徹底して守るように教育されました。

「避難三原則」とは、危機に立ち向かう姿勢として「①想定にとらわれるな」、「②状況下において最善を尽くせ」、「③率先避難者になれ」の三点です。「釜石の奇跡」と謳われた3.11の出来事を片田先生の「避難三原則」に基づいて検証しました。「釜石の奇跡」とは、決して奇跡ではなく、防災教育の成果であることをあらためて認識しました。

「釜石の奇跡」の検証過程
「釜石の奇跡」の検証過程

世界に誇る田老の防潮堤の崩壊

田老は防災の町として有名です。万里の長城と呼ばれるX字型に配置された防潮堤、その端には防潮林、避難の際に良く見通せるよう区画された隅切り、これに続く避難道、明治三陸地震や昭和三陸地震での津波被害を教訓として防災まちづくりが行われてきました。

このように古くから防災の町として知られる田老町を視察し、その防潮堤の崩壊によって多くの犠牲者を生んだ背景と教訓を探りました。防潮堤の崩壊はハードな対策だけでは賄えない何かを、ソフトな施策で補うことの重要性を示唆したものと言えます。

しかしながら、「田老は防潮堤で守る」との意識は未だ根強く、現在も新防潮堤の建設が進められています。

防災の町「田老」の概要
防災の町「田老」の概要

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