文化財建造物修復学研究室

CLASS

授業

木の建築文化を継承し、豊かな暮らしと社会を支える人材となるために

我国古来より存在する建築構造は木造であり、人々が生活を営む空間として1万年以上前からその構造は現代にも継承されています。また、古代・中世・近世と生活スタイルが土間から床上に変化して行くことに伴い、建築様式や形態も常に洗練されて行きました。
このように、我国の木造建築は生活や宗教などと密接な関係を保ちながら、一つの文化として成長を重ねてきたわけですが、このような変遷や構造的な成立ちを講義や実習を通して体感することで、日本建築の良さが再発見できると思います。また、その経験こそが、卒業後の大きな原動力にもつながっていきます。

担当科目

  • 日本建築史
  • 近現代建築史
  • 保存修復学 他

1年生

木造基礎および実習 Ⅰ実習系科目

鑿の研ぎから始まり、削ぎ継手制作や道具箱制作と木造の基礎的なことを学びます。

  • 鑿刃先の研ぎ実習風景

  • 道具箱制作の実習風景

木造基礎および実習 Ⅲ実習系科目

大工技能検定3級旧課題の制作に取り組み、勾配屋根の木組みと仕口、また、実践的な差し矩の使い方などを習得して行きます。

2年生

木造基礎および実習 Ⅴ実習系科目

格子形状の外柵制作を通して木造基礎実習の総括を行うことになりますが、この後に履修する長期の基礎インターンシップに対応できる木造の基礎知識習得を図ります。

  • 既存木製外柵格子取替の実習風景

  • 既存木製外柵柱根継取替の実習風景

基礎インターンシップ

選択必修として長期の40日間を企業に出向き、学内で1年間学んだ技術を試すことになりますが、多くの学生たちは悪戦苦闘しながらも真摯にこれに臨んで研修を受けています。このため、多くの企業様から真面目な本学学生の学び姿勢に称賛を頂いているところですが、基礎インターンシップ直後となる2年生第3Q(後期)からは、殆どの学生の勉学姿勢が一変して向上するのも、この研修効果が大であるからです。

3年生

日本建築史講義系科目

古代(飛鳥・奈良時代)から近世(江戸時代)までの建築体系や歴史意匠などを学び、社寺建築・民家建築・城郭建築・宮廷建築などにおける特徴を理解することで、資格試験は基より、木造建築の設計や施工などに活かせる能力を養います。

  • 江戸時代後期建立の六間取り民家見学

  • 国指定特別史跡さきたま古墳群の見学

近現代建築史講義系科目

幕末から明治維新後に我国に導入される西洋建築の諸相を学び、また、現代建築の礎となった近代建築の変遷を理解することで、日本古来のデザインと新たに導入されたデザインの両極を踏まえ、良い建築を見極める能力を養います。

保存修復学講義系科目

我国を代表する寺院建築の細部意匠などを学び、その部位の特徴から建物の時代判定や構造形式調書を書き取る実力を養います。更にはヴェニス憲章にも提言されるAuthenticity(真実性)についても考察を深め、文化財建造物の保存修理現場における実践的な判断能力も併せて養います。

木造総合および実習 Ⅴ・Ⅵ実習系科目

伝統工法を用いて制作する東屋実習を通じて、柱の四方転び・軒反り(真反り)・化粧隅木の口脇加工・茅負及び裏甲の軒反り・入母屋屋根組工法など、伝統技法による工作手法を身に着け、将来多様な木造建築造りに携わることができる能力を養います。

  • 化粧隅木配付垂木仕口等加工の
    実習風景

  • 東屋組立作業の実習風景

木造住宅設計 Ⅲ・Ⅳ実習系科目

木造住宅の設計課題に添って、それぞれが建築計画を検証し、法令に準拠した内容にて設計演習を行います。これによって実践的な設計が行える能力までも備えますが、更には過去に実施された二級建築士試験設計課題にも取り組み、最終的には殆どの学生が本番通りに、5時間以内で全作図を完成させる実力を身に付けています。

  • 設計演習課題の講評会風景

4年生

創造プロジェクト Ⅲ・Ⅳ、卒業研究卒業必修科目

3年生前期終りに所属研究室が決定し、その後、研究テーマをゼミや個別面談にて決定します。当研究室は文化財建造物保存修復学研究室であるため、建築史学研究を標榜する学生が中心に集まっています。近年、研究室では歴史的建造物の調査研究のみに留まらず、ご依頼者からの要望により、それら歴史的建造物の保存修理工事が完了するまで調査研究に携わることが多くなっています。このため、実践的な判断能力を当研究室のゼミ生たちは身に付けて、社会に巣立って行っています。

  • ゼミ生たちも携わった
    文化財建造物の移築・修復工事

大学院

保存・修復技術および演習講義・演習系科目

我国の歴史的建造物の意匠ディテールを学び、それらを比較検証することで、細部意匠が持つ意味などを学んで行きます。また、近年に保存修理工事が実施された個別の歴史的建造物を学生たちが再評価し、討議を重ねて活用を見据えた保存手法についても高度な理解を深めて行きます。なお、演習では課題の実測調査を行い、それを図化することで纏める能力も養います。

維持保全技術および演習講義・演習系科目

国土交通省の建築ストック統計(2017.08)によれば、我国のストック建築総量は83.7億㎡以上あると推測されており、明らかにフロー中心となる建物の建替えから既存建築のリファインを進めていくことが重要と考えられています。このため、建築・設備分野におけるリノベーションやコンバージョンについて事例を基に討議を重ね、状況に適した最良の改修手法やライフサイクルに伴う維持保全計画を学び、それが実践提案できる能力を養います。

ものつくりプロジェクト実習 Ⅰ~Ⅵ講義・演習系科目

Authenticity(真実性)の理念に基づいた保全計画案を企画できる能力を養います。このため、プロジェクト実習では実際に歴史的建造物の修理現場に赴き、実践的な調査研究や工事監理を体験することで、より実践的な判断能力を醸成できるように導きます。

  • 世界遺産 海外の歴史的建造物の
    調査研究風景