解題 ドラッカー30選
織りなす二つの系譜―社会生態学とマネジメント

1. 『「経済人」の終わり−全体主義はなぜ生まれたか』 1939年



第一次大戦後、民主主義が根づいていなかった国では、ブルジョア資本主義とマルクス社会主義に失望した大衆がファシズム全体主義にはしった。経済のために生き、経済のために死ぬという経済至上主義からの脱却を説く本書は、実に62年を経た今日、われわれの問題意識と同じである。時の大英帝国宰相ウィンストン・チャーチルの激賞を得た。ドラッカー29歳のときの処女作であって、ナチズムの日常を描いて息をつかせない。ドラッカー思想の原点である。 和英2冊



2. 『産業人の未来−改革の原理としての保守主義』 1942年



社会が機能するには、一人ひとりの人間に「位置」と「役割」があって、かつそこに存在する権力に「正統性」がなければならない。しかも、よりよい社会への改革の道は、現実に立脚した正統保守主義の原理によるべきである。ソクラテスからフランス啓蒙思想、ルソー、ロベスピエール、社会主義、マルクス、ヒトラーとつづく進歩主義、全体主義の系譜の破綻を明らかにするとともに、イギリスとアメリカの正統保守主義の実績をこれに対比させている。社会にかかわる一般理論を確立し、その産業社会への適用を特殊理論として展開したドラッカー社会学の原点である。 和英2冊



3. 『会社という概念』 1946年



当時の世界最大最強のメーカーGMに招かれて同社を1年半にわたって調査したドラッカーがまとめた本書が、世界中の企業、政府機関、NPOの組織と経営に重大な影響を与えた。フォードの再建の教科書となり、GEの組織再編の教科書となった。経営学は本書から始まったといってよい。今日のカンパニー制も本書がいちはやく唱えていたものである。(2004年新訳刊行予定) 0冊



4. 『現代の経営』 1954年



企業の機能はマーケティングとイノベーションである。マネジメントの本質を明示することによって、世界中の企業と経済に直接の影響を与えたロングセラーである。『会社という概念』発表の後、ドラッカーは、産業社会の主たる機関としての企業とそのマネジメントの成否が社会の行方を左右するとの認識のもとに、マネジメントを深化集大成し、本書によってマネジメントの父とあおがれるようになった。ドラッカー経営学の原典である。事業の目的は顧客の創出であると断じている。 和英3冊



5. 『創造する経営者』 1964年



マネジメントの師たちの師とよばれるに至ったドラッカーは、世界の企業、政府機関、NPOの相談相手となった。その豊富な経験をもとに、事業とは何かを明らかにした世界最初の、かつ今日にいたるも最高の経営戦略書である。 和英2冊



6. 『経営者の条件』 1967年



成果をあげることは、学ぶことができる。かつて社会のパワーセンターは、国王をはじめとする少数支配者だった。今日では、組織とともに働く一人ひとりの人間である。全員がトップのように働かなければ、組織の成功、社会の繁栄はない。プラトンからマキアベリにいたる賢人たちが、ときの支配者に教えたように、ドラッカーは現代社会の担い手たる普通の人たちに教える。万人のための帝王学として今日も広く読まれている。 和英2冊



7. 『断絶の時代−いま起りつつあることの本質』 1969年



地震の群発のように、激動が先進社会を襲いはじめた。その原因は地殻変動としての断絶にある。この断絶の時代をグローバル化の時代、多元化の時代、知識の時代、起業家の時代ととらえた本書は、世界中で読まれ世紀のベストセラーとなった。今日まさにその渦中にある大転換期への突入の様相と、その本質を明らかにしている。イギリスの首相マーガレット・サッチャーがドラッカーによるものとして推進し、やがて世界中に広がった政府現業部門民営化の構想は、本書で発表された。現代社会の哲人としての名声を不動のものにした名著である。 和英2冊



8. 『マネジメント−課題、責任、実践』 1974年



われわれの社会は組織社会として極度に多元化した社会となった。経済的な財とサービスの提供、医療、福祉、教育、知識の探求から環境の保護まで、主な社会的課題のほとんどすべてが専門の社会的機関にゆだねられた。それらの課題をいかに果たすかがマネジメントの課題である。 原著800頁、日本語訳1,300頁を超える本書は、今日も大学、ビジネススクール、経営セミナーの教科書としてつかわれている。「マネジメントを発明した男」(ジョン・タラント)の筆によるマネジメントの集大成である。この『マネジメント』の主要部分を抜粋したものが『抄訳マネジメント』であり、2001年発行の『エッセンシャル版マネジメント』である。 和英5冊



9. 『見えざる革命−年金が経済を支配する』 1976年



ドラッカーは予測しない。すでに起ったことの帰結を予告するだけである。50歳人口は20年後には70歳人口となる。高齢者の健康や住居しか論じられていなかったとき、まさに突然、ドラッカーが人口構造の激変の様相とその帰結について論じた。高齢化社会にかかわる古典として必読の書である。社会の高齢化にともなう経済、社会、政治の変貌を描いて本書の右に出るものはまだない。 和英4冊



10. 『乱気流時代の経営』 1980年



「乱気流の時代にあっては、マネジメントにとって最大の責任は、自らの組織の生存を確実にすることである。組織の構造を健全かつ堅固にし、打撃に耐えられるようにすることである。そして急激な変化に適応し、機会を捉えることである」の一文に始まる本書は、20年前の初版刊行時にもう少し丁寧に読んでいれば、バブルに踊らされ、その後遺症に悩むこともなかったであろうと思わせるものである。今日はやりのキャッシュフロー経営もすでに本書が説いている。 和英3冊



11. 『変貌する経営者の世界』 1982年



高度の専門知識をもつ大勢の人たちが共に働くとき、組織が生まれる。こうして先進社会はいつの間にか組織の社会になった。文明の進歩も、一人ひとりの人間の幸せも、組織をいかにマネジメントするかにかかっている。『ウォールストリート・ジャーナル』掲載の論文を中心にまとめられた本書は、まさに第一線のビジネスマン向けの教科書である。 英和2冊



12. 『イノベーションと起業家精神−その原理と方法』 1985年



イノベーションと起業家精神が天才のひらめきや天賦の才ではなく、誰でも学び実行することのできるものであることを明らかにした世界最初の方法論である。日本でも根強い人気のある名著。 和英4冊



13. 『マネジメント・フロンティアー明日の行動指針』 1986年



明日の世界は、政治家、官僚、学者ではなく、組織に働く普通の人たちによって開拓されると説く本書は、『ウォールストリート・ジャーナル』『フォリン・アフェアーズ』『フォーブズ』『ハーバード・ビジネス・レビュー』収載の37本の論文よりなる。「変化が機会である」が本書のテーマである。本書冒頭の「変貌した世界経済」(フォリン・アフェアーズ初出)は、その年世界中でもっとも読まれた経済論文である。 和英2冊



14. 『新しい現実−政府と政治、経済とビジネス、社会および世界観にいま何がおこっているか』 1989年



歴史には、ひとたび越えてしまえば、経済的、社会的、政治的な景色が一変するという境界がある。1965年から73年の間のどこかで、世界がそのような境界を越え、新しい次の世紀に入ったことを宣言した名著である。ソ連邦の崩壊、テロリズムの危険を予告したことでも有名。2004年1月日本版新訳を刊行。 和英2冊



15. 『非営利組織の経営−原理と実践』 1991年



NPOの役割の増大を予告し、そのマネジメントのあり方を明らかにした本書は、今日なおNPO関係者のバイブル、座右の書となっている。NPO発展の鍵を、「ここでは自分が何をしているかがわかる。私は貢献している。コミュニティの一員になっている」とのボランティアの声にみている。 和英2冊



16. 『未来企業−生き残る企業の条件』 1992年



何があろうと企業の活動は続けられる。本書は、その企業のあげるべき成果に焦点を合わせている。いずれも『ウォールストリート・ジャーナル』『エコノミスト』『ハーバード・ビジネス・レビュー』『ニューヨーク・タイムズ』など世界一流の紙誌に収載の論文である。1992年、経団連が中国の有力大学付属の日本研究所に日本語文献をまとめて贈呈すべく、会員の経済人にサイン入り本の寄贈を依頼したところ、もっとも多く寄せられたものが本書だった。 和英2冊



17. 『すでに起った未来−変化を読む眼』 1992年



「利益の幻想」「シュンペーターとケインズ」「企業倫理とは何か」「日本画に見る日本」「もう一人のキルケゴール」など40年を越える執筆活動からドラッカー自身が選んだ珠玉の論文集。本書においてドラッカーは、自らをゲーテ『ファウスト』の望楼守に擬し、社会生態学者「見るために生まれ、物見の役を仰せつけられ」(_橋義孝訳)し者と規定している。 和英2冊



18. 『ポスト資本主義社会−21世紀の組織と人間はどう変わるか』 1993年



歴史は数百年に一度際立った転換をする。境界を越える。そのとき社会は数十年をかけて、次の新しい時代を用意する。世界観を変え、価値観を変える。社会構造、政治構造、技能、芸術、機関を変える。やがて50年後には、まったく新しい世界が生まれる。おそらくは2020年、30年まで続くであろう今回の転換期の様相を描いた必読書といってよい。 和英2冊



19. 『未来への決断−大転換期のサバイバルマニュアル』 1995年



『ウォールストリート・ジャーナル』『ハーバード・ビジネス・レビュー』『フォリン・アフェアーズ』収載の論文26本からなる本書は、マネジメントの指針であり、道具である。考えるヒントであり。行動のきっかけとなるものである。本書収載の「事業の定義」は、順風満帆の企業がなぜ突然挫折するかを明らかにしている。 和英2冊



20. 『P.F.ドラッカー経営論集−すでに始まった21世紀』 1998年



世界の経営の最先端をいくマネジメント専門誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』収載のドラッカー論文13本を厳選。いずれも世界のビッグビジネス、ベンチャー企業の経営戦略に影響を与えた。『エクセレント・カンパニー』の著者トム・ピータースによれば、今日の経営手法の八割はドラッカーが産みの親である。 和英2冊



21. 『明日を支配するもの−21世紀のマネジメント革命』 1999年



世界17カ国で発行され直ちにベストセラーとなった話題の著作。ビジネスの前提が変わり、現実が変わったことを知らせている。最終章では、いかに生きるべきか、いかに第二の人生を用意すべきかを語っている。 和英2冊



22. 『プロフェッショナルの条件−いかに成果をあげ、成長するか−
はじめて読むドラッカー〔自己実現編〕』
2000年



いまや組織に働く者全員がトップマネジメントである。そのように働かなければ、組織の繁栄も、世の中への貢献も、働く者一人ひとりの自己実現もかなわない。膨大なドラッカーの世界のエッセンスを網羅した三部作の第一作である。10カ国語で発行。 和英4冊



23. 『チェンジ・リーダーの条件−みずから変化をつくりだせ−
はじめて読むドラッカー[マネジメント編]』
2000年



あらゆる財、サービスが大勢の知識労働者の手によって生み出される組織の時代にあっては、マネジメントの成否が人の幸せ、社会の安全と繁栄、文明の進歩を左右する。本書は、変化の時代におけるこのマネジメントの真髄を明らかにしている。 和英4冊



24. 『イノベーターの条件−社会の絆をいかに創造するか−
はじめて読むドラッカー[社会編]』
2000年



新しい時代が到来しつつある。そこにおける社会、政治、経済、知識、教育はいかなるものとなるか。激動の転換期における思考と行動の原理を説く。 和英4冊



25. 『ネクスト・ソサエティ−歴史が見たことのない未来がはじまる』 2002年



いよいよ社会が経済を変える時代がきた。そのネクスト・ソサエティ(次の社会)とはいかなる社会か、それはいかに経済と経営を変えるかを示す。「本書はまさに日本のために書かれたというほど説得力がある。」(ソニー出井会長) 和英2冊



26. 『[ドラッカー名言集I]仕事の哲学−最高の成果をあげる』 2003年



ドラッカーの全著作から抽出した7,000にのぼる名言から、「社会的な存在としての一人ひとりの人間とその仕事」をテーマに約200を選んで編集。組織に働くことによって社会に貢献し、自己実現する人たちにとっての座右の書。 和英0冊



27. 『[ドラッカー名言集II]経営の哲学―いま何をなすべきか』 2003年



マネジメントを発明したマネジメントの父によるマネジメントにかかわる名言200を精選編集。一線の経営者から社会人一年生まで全組織人にとっての座右の書。 和英0冊



28. 『[ドラッカー名言集III]変革の哲学―変化を日常とする』 2003年



変革のマネジメントについて200の名言を精選、
編集。転換期における必読の書であり座右の書。
和英1冊



29. 『[ドラッカー名言集IV]歴史の哲学―そこから未来を見る』 2003年



人は社会を必要とする。その社会についてのドラッカー名言200を収載。 和英0冊



30. 『実践する経営者−成果をあげる知恵と行動』 2004年



 世界一の経済紙『ウォールストリート・ジャーナル』に三〇年にわたって執筆してきた社会時評のうち、具体的な経営の知恵を説いた二八本を精選、ベンチャー専門誌『インク・マガジン』収載のインタビュー二本を加え、事業家必読の書として編集。 和1冊



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