執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [02]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

多様な専門外の知識を有する者が教養ある者 『ポスト資本主義社会』より



 「専門知識を一般知識へと統合できない教養課程や一般教養は、教養ではない。教養としての第一の責務、すなわち相互理解をもたらすこと、文明が存在しうるための条件たる対話の世界を造り出すことに失敗しているからである」(『ポスト資本主義社会』)
 知識は、高度化するほど専門化する。しかも他の専門知識と結合するとき爆発する。したがって、多様な専門知識への理解が不可欠である。ドラッカーは、そのような自分の専門外の知識を持つ者を、知識社会における教養ある者とする。

 専門知識のすべてに精通する必要はない。しかし、それらのものが何についてのものか、何をしようとするものか、中心的な関心事は何か、中心的な理論、問題、課題が何かは知らなければならない。
 もちろん、専門知識が一般知識となるには、それぞれの知識の所有者たる専門家たちが、それらの知識を理解しやすいものにしておかなければならない。
 アインシュタインは相対性理論よりも、『物理学はいかに創られたか』を書くのにより多くの時間を使ったという。中学一年生だった小柴昌俊さんに「物理というのは、おもしろいことをやるもんだ」と思わせたのが、この本だ。
 「すべての専門知識が真理にいたる。しかし、専門知識を真理すなわち一般知識への行路とすることは、専門知識を有する人たちの責任である。彼らは知識を預かっている」(『ポスト資本主義社会』)



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