執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [34]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

計画屋の目にとまってからではもう遅い
『イノベーションと起業家精神』より



 「イノベーションはその本質からして、分権的、暫定的、自律的、具体的、ミクロ経済的である。小さなもの、暫定的なもの、柔軟なものとしてスタートする」(『イノベーションと起業家精神』)
 イノベーションの機会は、現場で、あるいは現場に近いところで見出される。それは、いわゆる「計画屋」が対象とする膨大な総体ではなく、逸脱したもののなかに見出されるという。
 予期せぬ成功や失敗、ギャップ、ニーズ、認識の変化のなかに見出される。それら逸脱したものが、計画屋の目にとまるようになってからでは、もう遅い。
 イノベーションを行う者は、見聞きしたものを論理的かつ詳細に分析する必要がある。知覚するだけでは不足である。知覚というものが単に感じることだけを意味するのであれば、イノベーションにおいて知覚はまったく役に立たない。見えるものでなく、見たいものを見るにすぎないからである。
 とはいえ、実験と評価を伴う緻密な分析といえども、その基礎となるのは、あくまでも変化、機会、現実に対する知覚である。
 したがって、イノベーションを行うには、外に出かけ、見て、触って、聞く行為をしなければならない。イノベーションにおいては、すべてがそこから始まる。
 「イノベーションの機会は、暴風雨のようにではなく、そよ風のように来て去る」(『イノベーションと企業家精神』)



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