執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [38]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

予測と投機でなく現在あるものをマネジメントする
乱気流時代の経営』より



 「乱気流の時代にあって、マネジメントにとって最大の責任は、自らの組織の生存を確実にすることである」(『乱気流時代の経営』)
 すなわち、組織の構造を健全かつ堅固にし、打撃に耐えられるようにすることである。急激な変化に適応し、機会を捉えることである。さもなければ、生き残れるはずがないであろうとドラッカーはいう。
 今やあらゆる先進社会が組織社会である。あらゆる財とサービスの生産と流通が、組織の手に委ねられた。しかも組織は、一人ひとりの人間にとって、生計の資、社会への貢献、自己実現を手にする唯一の場になっている。
 「そのように大事な組織を潰すがごときは、無責任の最たるものである」
 ドラッカーがこれをいったのが、一九八○年というバブルの直前だった。多くの人が、今日の延長としての明日を読み、多くを儲けようとした。そうして罠にはまった。バブルが潰えたとき、生き残っていたのは、予測と投機ではなく、日々の本業に専念していた者だった。
 ドラッカーは、構造自体が変わるという乱気流の時代にあっては、まず行うべきは、現在あるものをマネジメントすることだという。そして将来ありうべきものを自ら創造することだという。
 「乱気流の時代にあっては、未来についての最も妥当な前提は、構造そのものを変える特異な事象が生起することである」(『乱気流時代の経営』)



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