執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [119]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

組織によって望みを実現させる能力を身につけさせる
『新しい現実』より



 「知識社会には、収入は豊かだが、生きるに値する生活は送っていないという教育ある野蛮人はいらない。同じく、社会の役に立たない文化的暇人もいらない」(『新しい現実』)
 知識社会における教育は、学生生徒に対し、役に立つ技術を教えるとともに、徳を身につけさせるものでなければならないと、ドラッカーは言う。
 そのためには、人文科学や一般教養といわれるすべてのものを、現実に照らし、意味あるものにしなければならない。人文科学を再び、あるべき姿に戻すことである。すなわち、物事を理解する光とし、正しい行動を示す指針とすることである。
 ドラッカーは、今日の教育制度は学生生徒に対し、やがて彼らが生き、働き、成果を上げていくことになる現実世界への準備をなんら施していないと、厳しく言う。
 しかし、じつは生産手段の大規模化と専門知識の高度化に伴い、人と人が共通の目的に向かって共に働くようになったのが、たかだかこの二〇〇年のことにすぎないとも言う。
 「今日あらゆる教育機関が、学生生徒に対し、組織の一員として成果をあげるための初歩的な技術を与えていない。自らの考えを口頭あるいは書面で、簡潔、単純、明確に伝える能力、人とともに働く能力、自らの仕事や貢献や経歴を方向づける能力、そして何よりも組織によって自らの望みを実現し、何事かを達成し、自らの価値観を実現するための能力を身につけさせていない」(『新しい現実』)




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