執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [128]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

人を育てる能力を失うのは小利に目が眩んだと同じ
『ネクスト・ソサエティ』より



 「さしたる注目を集めることなく、いま驚くべきことが起こっている。第一に、働き手のうち唖然とするほどの多くの者が、現に働いている組織の正社員ではなくなった。第二に、ますます多くの企業が、雇用と人事の業務をアウト・ソーシングし、正社員のことさえマネジメントしなくなった。流れが変わる気配はない。むしろ加速している」(『ネクスト・ソサエティ』)
 雇用と人事は費用がかかるだけではない。時間と手間を要求する。
 圧倒的に多くのマネジメント、特に中小企業のマネジメントが、製品とサービス、顧客と市場、品質と流通という業績向上のための時間がないとこぼす。本業の仕事ではなく、雇用関係の規制という問題に取り組まされている。
 これが今日世界中の先進国に共通する傾向だとドラッカーは言う。
 しかも規制が要求する費用と労力のほかにも、人材派遣会社と雇用業務代行会社の成長を促す要因がある。知識労働者の特性、特に知識労働者の極度の専門性である。
 知識を基盤とする大組織には、多様な専化家がいる。彼ら全員をいかにマネジメントするかが、問題である。それぞれの専門家がそれぞれの期待と要求を持つからである。
 だが、人の育成こそ最も重要な課題であることを忘れてよいはずはない。それは、知識経済下において競争に勝つための必須の条件である。
 「雇用と人事を手放すことによって人を育てる能力を失うならば、小利に目が眩んだとしかいいようがない」(『ネクスト・ソサエティ』)




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