執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [129]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

仕事の基盤の移行が知識に関わる者に新たな責任を課す
『イノベーターの条件』より



 「技能の発見が文明をつくり出した。今日再び人類は大きな発展を遂げようとしている。われわれは仕事に知識を使い始めた」(『イノベーターの条件』)
 ドラッカーは、これまでの怪しげな歩みを見ても、知識の仕事への適用が心踊る偉業であることは明らかであると言う。そこに秘められた可能性は、かつての技能のそれと同じくらい大きい。年月は要するかもしれないが、その与える衝撃は十分に大きく、そのもたらす変化は十分に膨大だという。
 歴史上、少なくとも西洋では、知識あるものが権力を持ったことはなかった。飾りにすぎなかった。権力の近くで演じることのできた役割も、道化師のそれとあまり変わらなかった。
 ペンは剣よりも強しどころか、せいぜい阿片にすぎなかった。知識に魅力はあった。苦しむものにとっての慰み、金持ちにとっての楽しみだった。だが、権力ではなかった。
 ところが、今日では知識が権力を握った。機会と栄進への道となった。科学者や学者は脇役ではなく主役である。必ず耳を傾けられる存在になった。安全保障や経済に関して、政策を左右する者になった。若者の人格の形成まで委ねられた。知識あるものは貧しくさえなくなった。
 「仕事の基盤が知識へ移行したことが、知識に関わる者に新たな責任を課す。それらの責任をいかに引き受けるか、いかに果たすかが知識の未来を左右する。知識そのものに未来がありうるかを決める」(『イノベーターの条件』)




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