執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [202]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

自由市場といっても無秩序な市場は存在しない
不心得者は淘汰される
『産業人の未来』より



「最も重要でありながら最も理解されていないものが、
市場における権力の構造である」(『産業人の未来』)

 いわゆる自由市場には、どんな種類の制約も存在しないといわれてきた。政府が
企業や個人の経済活動に干渉せず、市場の動きに任せる状態をレッセフール(自由放任主義)
という。仏語で「なすがままに任せよ」の意味だ。

 だが、ドラッカーは、そのような無秩序な市場が存在したためしはない、と喝破する。
若い頃に英国の金融街・シティで働いた経験を持つドラッカーは、市場ではどのように権力が
行使されるのか観察していたのだ。

 英国記入の権威筋が、市場の代表的な機関、すなわち証券売買市場、資本調達市場、外国為替市場などを通じて、
権力を行使していた。彼らは、市場のヒートアップを危惧しても、通達の類いを出さなかった。
抑圧的な規制はルールに反したからだ。

 不心得者に対する権威筋の意向は、昼食時の雑談、電話でのさりげない会話、あるいは取引所や仲買人たちを通じて、
非公式に伝えられた。このサインは、控え目に二回まで出される。そして、ある日突然、裏書が拒否される。それまで、
不心得者が市場と関係していたことで得られた権威は、すべて取り上げられたという。
「市場には、常に市場自体の規制や権威が存在した。この経済的な領域における支配もまた、政治的な領域における政治的
権力と同様、その権力を実際に行使した」(『産業人の未来』)




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