執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [215]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

六五歳定年は誤り
高年齢者パワーをあなどるなかれ
『変貌する経営者の世界』より



「高年者が働くのは、怠けているよりも働きたいからである。
仲間が欲しいからであり、依存したくないからである。
これらの欲求が、経済的な理由と同じように、
あるいはそれ以上に、彼らの労働力市場への参入を促している」
(『変貌する経営者の世界』)

九六歳を迎える直前まで活躍していたドラッカーにしてみれば、
六五歳の定年退職が間違っていることは当然だった。

 定年が六五歳に定められたのが、ビスマルク時代のドイツにおいてで
ある。これが米国に導入されたのが第一次世界大戦時で、今日の平均
寿命と高年齢者の健康状態から計算すれば、当時の六五歳は今日の
七五歳に相当する。

 ドラッカーは、六五歳定年は、元気な人たちをゴミ箱へ捨てているよう
なものだという。彼らの反撃は当然である。しかも、六五歳定年は、年金
制度にとっても耐えがたい負担の原因となっている。

 しかも彼ら高年齢者は、自らの主張を通すだけのパワーを持ちつつある。
ドラッカーは、この高年齢パワーを「パーマネント・マジョリティ」と呼ぶ。
先進国では、彼らの人口は増える一方であり、選挙での投票率も高い。

 定年延長ないし定年制廃止は、政治的にも、経済的にも、不可避である。
いまや、年齢による強制退職は差別である。残された問題は、高年齢者
自身が納得する退職基準の構築だけである。

「かつては、年齢の故に退職する者などいなかった。高齢者そのものが
いなかった」(『変貌する経営者の世界』)




↑ コラムリストへ戻る ← 前へ | 次へ →