執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [270]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

この大転換期は
いつ始まり
いつまで続くのか
『断絶の時代』より



「一九一三年(第一次大戦の前年)の数字と、 一九六八年の数字を見るならば、その間に起こった 二つの大戦、ロシアと中国の革命、ヒトラーのごとき 変事に気づかなくとも不思議ではない。 それらの変事は、一九六八年の数字にはいかなる痕跡も残していない。 たしかに戦後の経済発展は急速だった。 だが、それは第一大戦前の産業によるものだった」 (ドラッカー名著集F『断絶の時代』)
 ところが、この一見平穏な二〇世紀も三分の二を経た頃、 地震の群発のように、激動が先進社会を襲い始めた。 ドラッカーはこの地殻変動を、グローバル化の時代、 多元化の時代、知識の時代、企業家の時代としてとらえた。
 英国首相のサッチャーが、ドラッカーによるものとして 推進し、やがて世界中に広がった政府現業部門民営化の 構想が発表されたのも、この『断絶の時代』においてだった。 ドラッカーは、”再民間化”と名付けた。 手を広げ過ぎて疲れ果て、弛緩して不能になった中年疲れの政府に 元気を取り戻させるには、社会のための仕事の実行の部分、 すなわち、政府現業部門を再民間化しなければならない。
 現在、いわゆるハコモノ行政の問題にしても、有用でないから 廃止すべきなのではない。現業を苦手とする政府や自治体がやるべきではないから 廃止すべきなのだ。
 その断絶の時代がまだ続いている。ドラッカーは 『断然の時代』の二〇年後の一九八九年、『新しい現実』において、 歴史にも峠があると書き、さらにその四年後の九三年には、 『ポスト資本主義社会』において、この大転換期は二〇二〇年まで 続くといった。
 しかし、この調子では、二〇二〇年を超えても、今の大転換期は終わらないかもしれない。 情けないことに、われわれ自身が転換できないから、いつになっても転換期が終わらないのかもしれない。
「今や、経済も技術も断然の時代に入っている。われわれは、この時代をさらに偉大な発展の 時代にすることができる。ここで明らかなことは、技術、経済、産業、ガバナンス、マネジメントの すべてが断絶の時代に入るということである。つまり、偉大な一九世紀の経済的建造物の完成に 精を出している間に、まだにその土台そのものが変化を始めたのである。」 (『断絶の時代』)




↑ コラムリストへ戻る ← 前へ | 次へ →