執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [273]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

日本は人を大切にする国
人を大事にしない国が 他国のモデルになりえない
『プロフェショナルの条件』より



「今日日本は、一四〇年前と五〇年前の二つの 転換期に匹敵する大転換期にある。 ただし前の二つの転換とは違い、今回のそれは失敗、 混乱、敗北の類がもたらしたものではなく、 主として成功の結果もたらされたものである。 成功のもたらす問題は、失敗のもたらず問題とは大きく異なる。 しかし、そこで求められる姿勢、変化と継続双方へのかかわり方、 一人ひとりの人間のとるべき行動、リーダーシップは同じである」 (『プロフェショナルの条件』)
 一九九九年春、ドラッカーの新作『二一世紀のマネジメント・チャレンジ』 (邦題『明日を支配するもの』)が、世界的なベストセラーに なった頃である。 私は、あるレセプションで、立て続けに三人の方から 「他の本も読みたいが何にしたらよいか」と聞かれ、 もごもごと何冊かの書名を挙げた。
  その夜、米国に居るドラッカーに、 昼間の出来事をファックスで伝えた。 「ドラッカー・ワールドの地図がいるのではないか?」。  翌朝、彼は「自分は日本からいろいろなことを学んだ。大恩ある日本の読者のために、 そういう本を出そう。ついては、目次を考えてほしい」 と言ってきた。
 その話はすぐに、「マネジメント編」と「社会編」の二本立てで行くことになった。 ところが途中で、一人ひとりの読者に向けたものは、別に 「自己実現編」としてまとめられるのではないかと思い至る。  こうして『プロフェッショナルの条件』をはじめとする 「はじめて読むドラッカー・シリーズ」三部作が生まれた。 その後、世界中で発行されることになり、日本発の大ベストセラーになった。
 ドラッカーは、最後まで日本に期待していた。日本こそが世界のモデルになると言っていた。 日本は人を大切にする国である。人を大事にしない国が他の国のモデルになることなど ありえないと主張していた。 日本には、大転換の経験がある。古くは大化の改新に始まり、最近のものだけでも明治維新と 戦後復興がある。
「私に対し、そして世界に対し、一八六〇年代から七〇年代、 一九五〇年代から六〇年代という二度の転換を通じ、 いかにして激動を好機とし、苦難を絆に結びつけるかを示してしてくれたものこそ、 他ならぬ日本である」 (『プロフェッショナルの条件』)




↑ コラムリストへ戻る ← 前へ | 次へ →