執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [281]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

マネジメントの実践が
物質的な豊かさと
精神的な豊かさを左右する
『マネジメント』[上]より



「あらゆる先進社会が組織社会になった。
経済、医療、教育、環境、研究、国防など主な
社会的課題はすべてマネジメントによって運営される
永続的存在としての組織の手にゆだねられた。
今や現代社会そのもの機能が、それらの組織の
仕事ぶりにかかっている。
しかも、今日の市民は被用者である。
彼らは組織を通じて働き、組織に生計の資を依存し、
組織に機会を求める。自己実現とともに、
社会における位置づけと役割を組織に求める」
(ドラッカー名著集L『マネジメントー課題、責任、実践』[上])

 こうしてわれわれは、今日、組織社会に生きることになった。
社会が組織化されたということではない。
組織から成る社会になったという意味である。
その組織の運営の仕方がマネジメントである。
 だがドラッカーは、続けてこう言う。
「われわれは、その新たな組織社会のための社会理論と政治理論を持たない。組織社会は、今日われわれの社会観、政治観、あるいは世界観を支配している理論では説明できない。組織社会という新しい現実のための理論が完成するには、さらに時間を要する。」

したがって、ドラッカーはこう付け加える。
「われわれは、理論の完成を待っているわけにはいかない。」
現実を生きるわれわれとしては、行動していかなければならない。
そのためには、たとえまだ十分でなくても、組織と組織社会について
すでにわかったことを使っていかなければならない。

 幸い、実践の体系としてのマネジメントは、仕事の現場で日々形成されている。
大事なことは、日々発展するマネジメントを吸収して使っていくことである。
 組織社会が始まって、わずか二百数十年である。
人類の長い歴史から見ればごく最近のことにすぎない。だからこそ、すでに得られた知識は、人類共通の資産と見なすべきである。うまくいくとわかった仕事の進め方などは、大いに使わせていただく。
それが、マネジメントであり、文明である。
「われわれは、マネジメントに関わりのない時代、マネジメントを知らない時代、
マネジメントが確たるものとして存在しない時代、すなわち、マネジメント以前の時代に戻ることはできない」(『マネジメント』[上])




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