執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [294]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

何に対して貢献するか
どのような貢献ができるのか
仕事ができる者は自分で考える
『プロフェッショナルの条件』より



「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。成果をあげ
るかどうかは、いくつかの習慣的な姿勢と、いくつかの基礎的な方
法を身につけているかの問題である。しかし、そもそも組織という
ものが最近の発明であるために、人はまだ、それらのことに優れる
にいたっていない」
(『プロフェッショナルの条件』)
 一流の仕事ができるようになるには、生まれつきの才能などいら
ないというのだから、うれしくなる。しかも必要なのは、習慣的な
姿勢と基礎的な方法だけだという。
 習慣的な姿勢と基礎的な方法で十分というのならば、誰でも身に
つけられる。しかし、ここで大きな「しかし」がつく。組織という
ものが、最近の発明であるために、われわれはまだ、組織で働くことに
慣れていないという。
 一八世紀の産業革命の後、大勢の人間が一緒に働くようになった。
ジェームズ・ワットが実用蒸気機関を発明したのが一七七六年、それから
わずかに二三〇年である。いかに習慣的な姿勢といっても、二
三〇年では身につかない。いかに基礎的な方法といっても、誰も
教えてはくれない。そもそも学校の先生には、組織で働いた経験がな
いからである。
 ドラッカーは、たとえば、身につけるべき習慣的な姿勢とは、こういうものだという。ペーパーワークと医師のさまざまな要求に追われている病棟の看護師は、大勢の外科の患者を見ながら、こう考える。
 「彼らが私の仕事だ。ほかのことは邪魔でしかない。おの本来の仕事に集中するにはどうしたらよいか。仕事の仕方に問題があるかもしれない。もっとよい看護ができるよう、皆で仕事の仕方を変えられないだろうか」
 成果を上げるには、何に貢献するかを考えなければならない。す
なわち、この看護師のように考える。次に、自分は何を最も貢献できるかを考えなければならない。すなわち、自らの強みを知る。
 まことに、簡単なことである。その簡単なことを、ドラッカーは教えてくれる。「成長のための偉大な能力をもつ者はすべて、自分自身に焦点を合わせている。ある意味では自己中心的であって、世の中のことすべてを成長の糧にしている」
(『プロフェショナルの条件』)


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