窰洞(ヤオトン)とは中国黄土高原の伝統的洞穴式住居であり、その中でも生活空間全体を地下に求めた下沈式と呼ばれる類型は、穴居でしかも地下住居という理由から、中国のみならず世界的にみても特異な住居とみなされてきた。本研究では、2年間の西安留学を含む、十数年に及ぶ現地での継続調査を基に窰洞住居の実態を明らかにするとともに、北京四合院をはじめとする中国住宅全般に見られる、中庭を核とした配置構成や居住様式が、窰洞住居にも投影されていることを明らかにした。また特に黄土高原の南部に偏在する下沈式については中庭空間の呼称や集落規模での経年変化を調査した結果、西部と東部の中庭空間の形態的な違いが集落の変容過程にも影響を及ぼすことが明らかなった。 A4版139p |