執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [89]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

人事の打率は一〇割にまで上げられる
『チェンジ・リーダーの条件』より



 「もっとも稀少な資源が人材である」(『チェンジ・リーダーの条件』)
 企業が富を創出するには、明確な目的意識の下に的確な人員の配置を行なうことが不可欠である。だがそのためには、人事の結果を記録し、一つひとつ検証していかなければならない。
 人事は、マネジメントがどの程度有能か、どのような価値観を持っているか、仕事にどれだけ真剣に取り組んでいるかを白日の下にさらす。人事とその基準、さらにはその動機まで、いかに隠そうとしても知られる。それは際立って明らかである。
 人は、他の者がどのように報われるかを見て、自らの態度と行動を決める。仕事よりも追従のうまい者が昇進するのであれば、組織そのものが、業績の上がらない追従の世界となる。
 公正な人事のために全力を尽くさないトップマネジメントは、組織の業績を損なうリスクを冒しているだけではない。組織そのものへの敬意を損なう危険を冒している。
 マネジメントは、人事に時間を取られる。そうでなければならない。人事ほど長く影響し、かつ元に戻すことの難しいものはないからである。ところが昇進、異動のいずれにせよ、実態はまったくお粗末である。
 だがドラッカーは我慢してはならないと言う。
 「人事に完全無欠はありえないが、限りなく一〇割に近づけることはできる。人事こそもっともよく知られた分野だからである」(『チェンジ・リーダーの条件』)




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