執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [116]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

今日の現実はモダンの公理とは相いれない
『テクノロジストの条件』より



 「われわれはいつの間にか、モダン(近代合理主義)とよばれる時代から、名もない新しい時代へと移行した。われわれは世界観を変え、新たな知覚を得、したがって新たな能力を獲得した」(『テクノロジストの条件』)
 昨日までモダンとよばれ、最新のものとされていた世界観、問題意識、よりどころのいずれもが意味をなさなくなったとドラッカーは言う。今日に至るも、モダンは政治から科学に至る諸々のものに言葉を与え続けている。しかし、政治、理念、心情、理論にかかわるモダンのスローガンは、もはや対立の種とはなりえても、行動のための紐帯とはなりえなくなった。
 地球環境問題、途上国問題、教育問題など、われわれの直面する問題のすべてが、モダンを超えた解決を求めている。しかも、われわれの行動自体が、すでにモダンではなく、ポストモダン(脱近代合理主義)の現実によって評価されるに至っている。
 にもかかわらず、われわれはこの新しい現実についての理論、コンセプト、スローガン、知識を持ち合わせていない。
 「ポストモダンの最初の世代であるわれわれにとっての最大の問題は、世界観そのものの転換である。今日われわれが口にしているものは、三五〇年来の世界観である。だがわれわれが目にしているものはそれらのものではない。しかもわれわれが目にしているものには名前さえない。手段もなければ道具もなく、言葉さえない」(『テクノロジストの条件』)




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