執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [264]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

予測はせずとも 見えてくる
グローバル化の流れ
『ポスト資本主義社会』より



「おそらくは一九七〇年代から国民国家の基盤が ゆるぎ始めた。いくつかの分野では、 国民国家はすでに唯一の意味ある存在ではなくなりつつある。 あらゆる政府が、一国だけではもとより、 多国間協力によっても対処できない問題に直面している。 それら新しい問題は、それ自身主権を有するグローバル機関を必要とする」 (ドラッカー名著集G『ポスト資本主義社会』)
  ポスト資本主義社会における”ポスト”とは○○の後という 意味である。 したがってそれは、資本主義社会の後の社会である。
 今から一五年前の一九九三年、すでにドラッカーは、 われわれは資本主義社会から抜け出し、ポスト資本主義社会という ”転換期”にあることを確認し、その様相を描写した。 その一景がグローバル化の進展だった。
 ドラッカーは、もはやグローバル化は、経済と情報だけの問題ではないとした。
 第一が、地球環境問題である。 人類の生息地としての大気であり、大地である。 地球の肺臓ともいうべき熱帯雨林であり、海洋である。 加えて、温度である。しかも一方には、途上国の産業需要の増大と、 生活水準の向上が控えている。
 第二の分野が、テロの根絶である。私兵の復活と一部国家の私兵化の阻止である。 たとえば、核爆弾を大都市のロッカーや郵便箱に仕掛ければ、 遠隔操作で爆発させることができる。 炭そ菌の入った細菌爆弾を使えば、大都市を居住不能にすることもできる。 すでに9.11同時多発テロがあった。
 第三が軍備の管理、とりわけ核の不拡散である。
 じつにすべてが洞爺湖サミットで議題となったものであった。
「現在必要されているグローバルな諸機関の構想は、いずれもいまだ提示さえされていない。 創設にどのくらいの時間がかかるかも分からない。各国の政府が、そのようなグローバルな機関と その決定を受け入れるには、何らかの破局的な事態を経験しなければならないのかもしれない。 しかし、今後数十年にわたって、グローバルな機関を構想し創設することが、 政治の中心議題となる。 すなわち、国民国家の行動を制限することが、外交内政のいずれにおいても中心課題となる」 (『ポスト資本主義社会』)




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