執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [272]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

必ず長期低迷を招く
ドラッカーが説く
事業上の五つの大罪
『未来の決断』より



「立派な企業が長期低迷に入る。 いずれの場合も主たる原因は、 事業上の五つの大罪の少なくとも一つを犯したことによる。 だが、それらは犯さずにすませる罪である」 (『未来への決断』)
原油価格の高騰を受けて、国際競争は一段と激化する。 ここでドラッカーのいう「五つの大罪」が、 再び大きな意味を持ってくる。 これもまた、「ウォールストリート・ジャーナル」 に発表されたドラッカーの有名な洞察である。
第一の大罪は、利益幅信奉である。 コピー機ほど急速に大きな成功を収めた製品はない。 しかし先行者は、機能を追加して利益幅を拡大した。 消費者の多くは単純な機能で十分だった。 そこで彼らは、単純な製品が現れれば、買う気になっていた。 そこへ、競争相手が現れて市場を奪っていった。
第二の大罪は、高価格品信奉である。これもまた、競争相手を 招き入れるだけの結果になる。ファックスを発明した米国企業は、 限度いっぱいの最高価格を設定した。 その結果、世界のファックス機市場は外国企業の手に渡った。
これに対して、ナイロンを開発したデュポンは、 下着メーカーに支払わせられる価格よりも四割安い価格を付けた。 同社はずっと一流繊維メーカーの地位を保った。
第三の大罪は、コスト中心主義である。ほとんどの欧米企業が、 コストを積み上げ、それに利益幅を上乗せすることによって価格を 設定し、その挙句に市場を失った。
価格設定の唯一の健全な方法は、市場が快く支払ってくれる価格から スタートすることである。そのうえで製品を設計する。米国の家電メーカーが 壊滅した原因は、価格設定の方法に誤りにあった。
第四の大罪は、昨日崇拝である。 昨日を重視し、明日を軽んじる。 IBMは、かつてパンチカード事業を無視してコンピュータ事業を 軽視し、その後、メインフレームを重視してパソコンを軽視した。
第五の大罪は、問題至上主義である。機会を放って問題にかかりきりになる。 GEは世界で一位か二位になる気のないものから手を引いたとき、成長路線に乗った。
「事業上の五つの大罪は、その害が十二分に明らかにされているものである。 五つの大罪については、言い訳は許されない。絶対に負けてはならない誘惑である」 (『未来への決断』)





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