執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [271]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

事業上の目的による
企業買収に成功するには 五つの原則がある
『マネジメント・フロンティア』より



「事業上の意味のない企業買収は、 マネーゲームとしてさえうまくいかない。 事業上も金銭上も失敗に終わる。 企業買収に成功するには五つの簡単な原則がある」 (『マネジメント・フロンティア』)
 ドラッカーは、四〇年にわたる企業観察の結果、 すでに一九八〇年代の初めに、企業買収に成功するための 五つの原則を「ウォールストリート・ジャーナル」に 発表している。
 しかし、当時はよいことを聞いたと喜んでいた米国の企業家たちが、 いざとなると、それら五つの原則を守れずに失敗していった。 そして、今日も、相変わらず失敗し続けている。
 ドラッカーのいう、事業上の目的による企業買収に成功するための 五つの原則とは何か。  第一に、企業買収は、買収される側に大きく貢献できる場合のみ成功する。 問題は、買収される側が買収する側に何を貢献できるかではない。 買収する側が貢献できるものは、経営能力、技術力、販売力など、 さまざまである。
 第二に、企業買収は、買収される側と共通の核がある場合にのみ成功する。 共通の核がある場合にのみ成功する。 共通の核となりうるものは、市場であり、技術である。 あるいは、共通の文化である。
 第三に、企業買収は、買収する側が買収される側の製品、市場、 顧客に敬意を払っている場合にのみ成功する。 やがて、事業上の意思決定が必要になる。 そのとき、製品、市場、顧客への経緯がなければ、 決定は間違っったものとなる。
 第四に、企業買収は、買収される側に、一年以内にトップマネジメントを 送り込める場合にのみ成功する。マネジメントを買えると思うことは間違いである。 社長だった者が、事業部長になって満足し切れるわけがない。
 第五に企業買収は、最初の一年間に、買収される側の者と買収する側の者を、 多数、境界を越えて昇進させる場合にのみ成功する。 買収を、歓迎されるものに仕立て上げなければならない。
「少なくともニューヨーク株式市場は、六〇年代のコングロマリット熱から 目を覚まして以来、企業買収に関する五つの原則の重要性に気づいている。 買収のニュースによって、買収する側の株価が大幅に下落することが、 あのように多いのはそのためである」 (『マネジメント・フロンティア』)




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