木製家具の設計

3年2Q 家具技能および実習 I

「家具技能および実習」では、家具をデザインする時に、どのような図面を描くか、どのような模型をつくるか、といった基本的な事柄を学びます。
4クォータの家具実習で、受講生が一人一脚ずつ制作する椅子のデザインを、2クォータに行われる「家具技能および実習 I」の授業内コンペで決定します。
担当教員としては、毎年つくる椅子のデザインが変わるため、かなり緊張感がありますが、受講生たちは、自分のデザインが選ばれるために一生懸命やっています。
木製家具の設計図と建築物の設計図の描き方には、それぞれ異なったルールがあります。家具の製図は機械製図に似ています。例えば、建物の平面図を描く時には、木造でもRC造でも「通り芯」と呼ばれる基準線を描きますが、家具の図面では、基本的に通り芯は描きません。
スケッチや三面図を描きながらアイデアを考えたら、次に模型を作り、全体のプロポーションや構造等をチェックします。この時、日本でも西欧でも1/5スケール模型でチェックする事が多いです。
 
 

チェアーフィッティング

3年3Q 家具技能および実習 II・III

「チェアーフィッティング」という言葉を知っていますか?人間工学とは似て非なるもの、それがチェアーフィッティングです。
家具実習では、チェアーフィッティングという考え方の産みの親である木工家具作家の吉野崇裕氏をお招きして、このチェアーフィッティングについて、詳しく教えていただきます。

【吉野崇裕氏の談より】
現在の椅子は人間工学を元に設計されています。この理論は必要条件ではありますが、十分条件ではありません。さらに、男性体型中心の研究方法であったため、150cm台の小柄な女性にはどうしても大きすぎ、オフィスや交通機関で足がむくむなどの苦しい思いに悩んでいる方も多くいると思います。
身体を無理に椅子に合わせてきたのが今までの常識でした。
大切な基準はあなたの身体。まずご自身の身体から家具を考えるべきです。
身体各所の寸法を測り、理想的な背骨の形状を、リラックスしたまま容易に保つ事の出来るイスを、個人に合わせて設計し手作りで一脚ずつ作り上げる。さらに整体、生理学などの研究から、体に良く働きかけるツボを支持する事で、その効果を高める工夫をしています。
 
 

立式作業

3年3Q 家具技能および実習 II・III

ものつくり大学では、建設学科に入学した学生全員がノミとカンナを購入します。1年生からはじまる木造系実習は、建築大工の職能に則した作業がメインのため、作業台を用いた立式作業を行うのは家具実習だけとなっています。同じ「木工」でも、大工と家具とでは作業姿勢が大きく異なります。
 
 

安全のために

3年3Q 家具技能および実習 II・III

写真は、アブダビ(アラブ首長国連邦)の若者に木工指導をしている様子です。右手の日本人が指導員、左手がアブダビの訓練生です。電動工具や木工機械を使うときに保護メガネを装着するのは日本も海外も同じですが、日本のように作業帽をかぶる習慣は、必ずしも万国共通ではありません。日本では、作業帽(あるいはヘルメット)と安全靴が必須ですが、ヨーロッパやアメリカでは、加工場に入る時には保護メガネと防音用イヤーマフが必須と考えられています。
 
 

木工機械

3年3Q 家具技能および実習 II・III

ものつくり大学の学生は、1年次から木造系実習があるので、教員が木工機械を動かしている様子を見る機会はたくさんありますが、自ら加工を行う事はそれほど多くありません。3年次に開講される家具実習では、学生自らが加工者となり床置き汎用機械を使用します。作業に先がけて、しっかりと機械の構造から、安全作業の注意点を学んでもらいます。
 
 

電動工具

3年3Q 家具技能および実習 II・III

電動ドライバドリルやインパクトドライバーは、一般の人でも扱いやすい、馴染みの電動工具だと思います。家具実習では、普段あまり見たことのないビスケットジョイントカッターやドミノといった、昨今の家具製作では必要不可欠な電動工具を、学生に直接使ってもらいます。
 
 

接着作業

3年4Q 家具技能および実習 IV・V

家具実習にはあって、建築大工の木造実習では基本的に無い作業の一つが「接着」です。一般に「木工用ボンド」と呼んでいる接着剤は、正式には、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と言います。家具製作の現場では略して「酢ビ」と言ったり「白ボンド」と言ったりします。写真のような接着用のヘラを、作業者は適宜自作したりして、素早い接着作業を心がけます。
 
 

仕上げ塗装

3年4Q 家具技能および実習 IV・V

木材を使って木製品の形をつくるのが木地(きじ)工程です。完成した木地を商品にするためには仕上げの塗装が欠かせません。家具実習では、オイルやワックスを用いる塗装方法を学びます。
 
 

椅子張り

3年4Q 家具技能および実習 IV・V

ものつくり大学における家具実習は、他に類を見ない特徴的な授業の一つです。その家具実習における目玉の一つが「椅子張り」です。「椅子の出来栄えは椅子張りで決まる」とさえ言われている大切な工程を、家具実習では体験できます。
 
 

木製家具とは

木製家具の魅力とは何なのでしょうか?
優しい木肌と美しい木目。使い込むほどに味わいが増す素材感。愛着。癒やし。
もちろん、木材には天然素材ならではの長所もあれば欠点もあります。天然材料よりも人工材料の方が優れている点もあります。
2Qから4Qまでの家具実習をすべて受講し終わった時、木製家具、ひいては木製品の魅力を、受講生それぞれが、きっと再認識出来ると思います。