新しい家づくりネットワークプロジェクト コンペ
テーマ <新しい伝統構法の家・アイデア部門> 講評/八代克彦
1位:木骨・骨太の新・伝統構法でつくる「新・地域の家」(A-049)
小椋 祥司/フォレスト建築研究所
今回のコンペの5つのクライテリア、すなわち01:文化としての家づくり、02:近隣の森の木の利用、03:伝統木造技術の活用、04:現代生活に調和したデザイン、05:室内環境への配慮・工夫 に真正面から取り組む真摯な姿勢が評価された。それぞれのクライテリアへの解答は住宅以外にも適用可能で、平面のレイアウトにも私的な「家」というより「地域の拠点」としての公共性を感じる。
2位:新・日本の家(A-006)
村上 貴彦/一級建築士事務所 士
日本の伝統的・精神的な家をテーマに、1階中央の水廻りとその上に載せた屋根裏子供部屋を(構造+環境)×伝統精神のコアとし、その周囲にサーキュレーションを確保しながら諸室を配したユニークな提案。明るく開放的な空間は、住宅へのコンヴァージョンを果たした社寺建築を想起させないでもない。
新しい家づくりネットワークプロジェクト コンペ
テーマ <新しい伝統構法の家・実作部門> 講評/大塚秀三
1位:みらいのいえ コミュニティ・ビルドのやわらかな家(B-020)
遠野未来/遠野未来建築事務所
海の見える広大な敷地というロケーションに恵まれた住宅である。地場産材および古材による架構・建具,現場産土による左官仕上げなど伝統木造の記号を随所に散りばめながら,総体として現代的な表現に収斂させていることに加えて,室内環境への様々な仕掛けを見ることができる。さらに特筆すべきは,延べ200名が参加したワークショップ形式のコミュニティ・ビルドという社会性の高い手法を展開している点である。これにより,伝統木造にあって先進的なモデルの提示に成功していると言え,文化性を具有する伝統木造の道標を示しているとできる。
2位:吉野の家(B-011)
増谷高根/増谷高根建築研究所
吉野杉の産地に存する夫婦のための小住宅である。ファサードは,程よいスケールのヴォリュームに分節することで,全体としてシンプル,かつ端正なプロポーションとなっている。内部空間では,換気塔をも兼ねた2階部分を含めて,全方位に連続的につながる空間構成は,伝統木造が本質的に持つ,気配を感じさせつつ緩やかに分節された空間構成を現代的な表現として昇華させている。これにより,内外共に最小限の素材で豊かな空間の創出に成功しており,これが細部に至るまで完結されている。小品ながら伝統木造の新たな表現を示しているものと言えよう。
新しい家づくりネットワークプロジェクト 高校生コンペ
テーマ <近隣の森の木を使用した家> 講評/藤原成曉、大島博明
1位:Cedar Frame Unit (No.02)
黒澤宏樹/埼玉県立春日部工業高等学校
地元の県産杉材の利用による加工のし易さやユニット寸法の妥当性、ライフステージの変化に対応した3タイプのプラン内容、更に廃材の家具へのリサイクル利用など、全体にバランス良く提案を行っている点が評価された。但し、ユニットプランによるプレハブ化の試みは過去に多くの例があり、本案に新しい提案のないのが残念である。木造を意識した小屋組や屋根形状にも配慮することが望まれる。【藤原】
2位:軸組ハウス~木の温もりに包まれて~(No.05)
村越勇人・牧田光/静岡県立科学技術高等学校
自然と建築の関係を真剣に考察した力作である。コートハウスの考えを取り入れ、ひかりと風の動きを配慮し、快適な居住空間づくりを考えようとしている。また、ハウスインハウスの考えを持ちこみ、建物と外皮の間に新たな空間づくりを志向しているようだが、ポリカーネートの外皮の説明が不十分であったため、評価に意見が分かれた。構造計画も考えて、高校生らしくまとめている。【大島】
佳作:ざ かいだん。(No.46)
平岡美由紀/国立明石工業高等専門学校
中庭を中心に諸室を配置し、それぞれに高さの異なる床をもつ断面構成は興味深く、トップサイドライトにも工夫が見られる。室のほぼ中央にある柱の意味について説明があると良かった。【藤原】
佳作:自然を取り込む家~自然界に必然性をもち、存在している満ちた光~(No.57)
前田洋平/北海道札幌工業高等学校
自然と一体化した空間を作りたいという思いが伝わってきます。四季を感じながら、生活する空間は、たいへん魅力的です。中庭のスケールと木造建築としての表現を検討してほしい。堅実な表現力を感じる作品です。【大島】
佳作:梁と柱、地震に負けない家つくり(No.45)
松澤志門/山梨県立甲府工業高等学校
構造補強と壁面緑化を両立させる考えは、注目される。構造補強フレーム(フライングバットレス)を有効利用して、緑陰をつくりながら、くつろぎの空間をつくる配慮は都市計画としても優れている。【大島】
佳作:はたらき蜂の住処 はにかむ構造で高齢者と尾鷲ほのきを支える家(No.14)
浅野拳人/三重県立四日市工業高等学校
ハニカム構造の合理性に注目した本案のプランの長所は、3つの空間をコーナーで繋いでワンルーム化している点であろう。壁だけでなく、屋根(天井)にもハニカムを活かして欲しい。【藤原】