B-008.jpg

ものつくり大学21世紀型木造住宅建設フォーラム主催第3回コンペについて

■第3回コンペの内容
 ものつくり大学21世紀型木造住宅建設フォーラムは、ものつくり大学が主体となって新しい木造住宅づくりのネットワークを構築し、大学ブランドの21世紀型の木造住宅を建設することを目的として2010年12月に発足し、現在に至っています。当フォーラムは「新しい家づくりネットワークプロジェクト」を計画し、大学と住み手・作り手・自治体が共に手を携えて近隣の森の木を使いながら、高度な伝統的木造建築技術及びその関連技術を活かした家づくり、即ち「伝統構法を用いた新しい家づくり」を目指します。
 この一環として昨年度に引き続き、今年度も社会人及び高校生を対象に設計競技を行ました。テーマはそれぞれ、「新しい伝統構法の家2012」、「近隣の森の木を使用した家- 住み続けられる家 -」としました。
 賞金は、実作部門第1位20万円、第2位10万円、第3位5万円、高校生部門第1位7万円、第2位5万円、第3位3万円、佳作(7点)各1万円とし、応募期間は、共に2012年12月1日(土)から2013年2月9日(土)迄、審査員として、赤松明、伊藤大輔、大島博明、大塚秀三、小野泰、佐々木昌孝、白井裕泰、林英昭、藤原成曉、三原斉、八代克彦(五十音順)が担当しました。
■第3回コンペの審査総評
総評 一般の部 「新しい伝統構法の家2012」
 登録数29点のうち応募作品数は15点でした。 応募点数は前回の24作品に比べて少ないものの、総じて内容のある質の高い作品が寄せられ、上位3作品の絞り込みに時間を要しました。審査基準は、主構造を伝統的木造軸組構法とし、かつ新しい専用住宅に関する提案を前提とした上で、①「文化としての家づくり」を目指しているか、 ②近隣の森の木の利用を前提としているか、 ③伝統的木造技術およびその関連技術を活かした家となっているか、④現代生活に調和したデザインとなっているか、⑤室内環境に配慮した工夫が見られるかを重視しました。
 コンペの1次審査は2月13日(月)に行われ、上位10作品を選出、翌日2月14日(火)の2次審査で審査員の持ち点を1位3点、2位2点、3位1点として投票、集計後、上位6作品に絞り、更に協議した結果、第1位から第3位までの3作品に決定しました。
 第1位の「花内屋リノベーション」(吉村理/吉村理建築設計事務所)は、耐震補強の「貫壁」を核とした部分的なリノベーションにも拘わらず、「大黒壁」として全体に存在感の精神性をも獲得している作品として高く評価されました。第2位の「ナガヤネ」(安河内 健司・西岡久実/一級建築士事務所 group-scoop)は、通り土間に特徴のある伸びやかなプランが平屋の「一枚屋根」と調和し、現代の木造建築としてシンプルにして豊かな空間を実現しています。第3位の「世代を超えて受け継がれる家づくり」(野尻稔/野尻稔建築設計事務所)は、川場村の風土に気を配りながら景観や眺望を生かした配置計画と伝統木造の長所を現代に適用した点が評価されました。
 その他、「見わたしの家」や「光格子の家」は選外となりましたが、入賞作品と共に最後まで残り、優劣つけ難い作品であったことを附記致します。
 以上、簡単に審査の経緯と入賞作品の感想を記して参りましたが、改めてご応募戴きました方々に感謝申し上げます。そして、今後とも当フォーラムが推進する「新しい家づくりネットワーク」の構築にご賛同いただき、ご協力を賜れば幸いです。

総評 高校生の部「近隣の森の木を使用した家 - 住み続けられる家 -」
前回21校58作品に対し、今回20校84作品の応募がありました。主な審査基準は①最小限住宅としての工夫があるか、②エコハウスの内容、特徴が明記してあるか、③近隣の森の木の使用に関して、工夫した点を具体的に示しているか、④延べ面積が100㎡以内になっているか、⑤住まう人の構成と家の使い方をわかりやすく表現しているか、⑥(内容に相応しい)作品名がついているかの6項目としました。
 1次審査は2月13日(月)に行われ12点を選出、翌2月14日(火)の2次審査で各審査員の持ち点を1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点とし投票、集計後、更に協議した結果、第1位から第3位まで上位3作品と佳作7作品の計10作品に決定しました。全体を通して感じたことは、①の「最小限住宅として工夫」よりも②の「エコハウスの内容、特徴」の方に傾倒した作品が多く見られ、環境への関心の強さが感じられました。
 第1位の「深谷パッシブナガヤ」(高田彬寛/埼玉県立熊谷工業高等学校)は、実際とイメージ図とのギャップはあるものの、日本の伝統的都市型住居の典型である短冊型狭小敷地に対してエコに配慮した提案を行うという意欲とプレゼンテーション力が評価されました。第2位の「タテの筒 / ヨコの筒 」(吉田拓矢/北海道札幌工業高等学校)は、最小の単位空間を設定し、積むことで生まれるタテ方向のエネルギーを建築に応用しています。また、上階に設けられたリビングや寝室に眺望とプライヴァシーが確保されています。第3位の「かぐや姫からの贈り物」(岡太樹ほか/京都市立伏見工業高等学校)は、竹を素材としたワンルーム空間に適度な距離感を持った家具配置がされており、自然と空間を同時体験できる「場」を形成しています。
 その他の作品については、図面表現は魅力的だが平面計画上に問題が残る、内容は良いが表現不足であるなど、後もう少しという作品が目立ちました。前者の例では、佳作1「呼吸する家」(福永真也/愛知県立愛知工業高等学校)、後者の例では、佳作3「ぶどう畑で暮らす」(井部雄介/新潟県立上越総合技術高等学校)が該当し、惜しくも入賞には至りませんでした。
 以上、審査の経緯と主な応募作品の印象を概括して参りましたが、今回のテーマである「環境型最小限住宅」を通して、建築のスケールや人体寸法、自然との共生やエコロジーなどを考えるきっかけにしてもらえれば幸いです。
 最後に当コンペに応募された高校生諸君は元より、ご指導にあたり多くの時間をつくってくださった教員の方々に感謝の意を表します。今後とも、若い芽が育つよう当フォーラムが主催する「高校生建築設計競技」に御理解、御協力をお願い申し上げます。

2013年3月31日
ものつくり大学21世紀型木造住宅建設フォーラム
コンペ審査委員長 
大島 博明(ものつくり大学 建設学科 教授)

新しい家づくりネットワークプロジェクト 第3回コンペ
テーマ <新しい伝統構法の家 2012>  講評/大島博明

B-008.pdf

1位: 木と土のある暮らし -土間・土壁・置き屋根による自然共生住宅-
金田 正夫/有限会社無垢里 一級建築士事務所

 第一に、伝統工法である土間・土壁・置き屋根による低気密高蓄熱工法を科学的に立証する姿勢が評価された。快適な温熱環境づくりを伝統工法に求めながら、温水配管による土間蓄熱、根太間モルタル蓄熱などの新たな設備手法に取り組んでいる。第二に、現代の「結」として、小舞掻きと荒壁塗を復権させた点も、評価された。デザイン性において、審査員の評価が分かれたが、ものつくり大学の求める「新しい伝統構法の家」の審査基準に合致したたいへん挑戦的な力作である。5年後、10年後とすまい手の「生活感」を継続してお聞きしたいと思う興味ある作品である。

B-001.pdf

2位:風塔の家
野尻 稔/野尻稔建築設計事務所

 上州の気候風土と建築文化から導き出されたこの住まいは、風をメインテーマに構成されている。2層半の「風の塔」が、四季を通して土地の風を巧みにコントロールする仕組みづくりは、有効と考えるが、家自体がカシグネとなることによる2階寝室部分の音環境が心配である。上州のからっ風は、たいへん強い。光庭を中心に置き、間仕切りにより4つの部屋が夏は開き、冬は閉じる可変性のある空間づくりは、パッシブデザインの基本となる。限られた敷地を有効に生かしているが、今後の植栽計画による内外部空間の演出に期待したい。地域材の活用も、評価される。

B-013.pdf

3位:八ヶ岳の山荘
森 清敏・川村 奈津子/株式会社MDS 一級建築士事務所

 環境を形にするオーソドックスな建築手法にたいへん共感する作品である。形態に媚びる作品が多い中で、環境を分析し、環境因子を巧みに操作しながら、豊かな空間を作り出している。八ヶ岳の様々な風景と一体化しながら、季節を楽しみ、ひかりと影で演出された空間構成は見事である。八ヶ岳の自然を楽しむために用意された和モダンの空間は、素材感を大切にした、周到に練られた素材によって作られている。四季折々楽しめる、何度も訪ねたくなる山荘である。障子のある主開口は、ひかりの様々な制御が可能であり、より繊細な演出を可能としている。風景と共に成立している室相互の連続感を確認したい。

新しい家づくりネットワークプロジェクト 第3回高校生コンペ
テーマ <近隣の森の木を使用した家 -住み続けられる家->  講評/大島博明、大塚秀三

62.pdf

1位:陽に包まれる空間
古川 亮・松本 祐輝/神奈川県立神奈川工業高等学校

 本設計競技のテーマについて、十分に研究し、よく練られた案である。設計力及び建築知識も十分あり、たいへん実現性の高い秀作である。住み替えについて、真摯に考え、収納壁による間仕切り変更という、基本的な手法で解決した。水廻りコアを中心に置き、外壁と内壁の2重構造を採用し、冬と夏の温熱環境を制御しながら、ひかりに満ちた中間領域を創り出している。この中間領域は、ワンルーム空間の動線計画を解決しながら、環境型住宅のメインテーマを構成している。【大島】

19.pdf

2位:~続の棲家~
福田 奎也/埼玉県立春日部工業高等学校

 家族構成の変化だけでなく、地域コミュニティの変化も同時に考察しながら、「続の棲家」をとらえている点がよい。空間構成としては、水廻り空間を固定し、中心にひかりと風を取り入れる「かまど空間」をつくり、テラスのフレキシビリティが、すまいの可変性を可能にしている。桐職人家族の温かい人間関係と愛情を感じるすまいとなっている。家族の成長と地域とのふれあい及び桐を中心とした生命の活動が、様々な生活シーンとして描かれている。【大島】

45.pdf

3位:都会の森
清水 瑠美香/静岡県立科学技術高等学校

 都会の森というメタファーを用いた空間づくりは、楽しい構成となった。木々に見立てられた柱を中心に、すまい手がそれぞれのテリトリーを作りながら、空間をつくるプログラムは、建築空間づくりの基礎である。矩形の空間を様々に分割しながら創られたテリトリーは、変化に富んだ演出空間となっている。一方で、ロフトの意味付けや時間変化ダイヤグラムの中で示された機能設定が、やや説得力にかける点が気になる。【大島】

55.pdf

佳作:Endless House 親から子,子から孫へ家を,伝統を,繋いでいく―.
吉田 聖/国立明石工業高等専門学校

 地場産の和紙で構成された空間の雰囲気を,デジタルツールを用いた淡い色彩使いにより魅力ある表現にまとめている。ただ,現実離れした急勾配の屋根など,立・断面構成の詰めにやや甘さを感じる点が惜しいところである。【大塚】

46.pdf

佳作:森と共に生きる家
大石 理奈/静岡県立科学技術高等学校

 丁寧なタッチのドローイングによって作品の意図をうまく表現できている。可動式の家具化されたボックスによって住空間を可変できる点が面白い。ボックスのサイズが最小限に過ぎるのが惜しい点である。【大塚】

48.pdf

佳作:育みHome
遠藤 瞳/静岡県立科学技術高等学校

 課題の要求事項に対して丁寧かつ具体的に案を提示している点に好感が持てる。ただ,フライングバットレス状の架構が構造合理性の観点から必然性に乏しく,更なる思慮があるとなお良い。【大塚】

20.pdf

佳作:羽子板職人の家 ~続いていく技術~
後藤 琢哉/埼玉県立春日部工業高等学校

 羽子板職人を題材として,師弟関係の持続性の観点から住空間を構成している点に独自性が見出せる。デジタルツールによる表現で統一されており,スキルの高さが垣間見られる。弟子が使用する空間のスケールに少々無理がある点が惜しいところである。【大塚】

01.pdf

佳作:思考×試行 ~七割が動く家~
髙畠 亜由美 /鹿児島県立隼人工業高等学校

 スケルトンインフィル住宅の考え方を基本に,家具の配置により空間構成を可変させることを目論んでいる。家具の配置を変えた場合の展開を示すと,より本提案の魅力が増すと思われる。【大塚】

26.pdf

佳作:今昔古民家物語 ~未来に受け継ぐ思い出の家~
高橋 悠太/埼玉県立熊谷工業高等学校

 古民家の田の字型の骨格を利用して,住まい手によって変化する空間の機能を分かりやすく表現している。古民家を再生させる手法としては,やや凡庸な感がありもう少し踏み込んだ提案が望まれる。【大塚】

49.pdf

佳作:海と縁側とフレームと...
中野 萌子/静岡県立科学技術高等学校

 完結している住宅の周囲をグリッドフレームで覆った点の解釈にやや困惑するものの,ブルーを基調とした淡い色彩使いで,独特の世界観を創出している。対極の要素を融合させる際の建築的な意味を模索することを心掛けたい。【大塚】