執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [92]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

社会からの隔離孤絶を改善することが急務
『企業とは何か』より



 「企業の経営幹部は、自らの言動によって自らの企業を動かし、自らの企業によって自らの言動を動かされる。ところが彼らは、特殊な環境に身をおき、あたかも修道院にいるかのように隔離され孤絶した状態にある」(『企業とは何か』)
 この隔離孤絶には、やむをえない面がある。仕事以外に人に会う時間がない。仕事に直接関係のない情報は切り捨てられる。人との付き合いも、社内だけとは言わないまでも、同業、同類、取引先が中心となる。
 外部に利害忠誠の対象を持つなかれ、とは軍人だけのことではない。かくして経営幹部の生活は、軍人同様に狭い世界のものとなる。しかも、それを是とする。
 ドラッカーは、企業の経営幹部たる者、まず社会からの隔離孤絶を改善することが急務だという。
 この経営幹部の視野の狭さは、企業にとってあまりに危険である。企業は社会のためにある。そのうえ、社会に生きている。しかるに、社会から隔離された経営幹部は、仕事の世界しか理解できない。
 社会の動きが企業とその生存に影響を与えることは理解できる。しかし、最大の問題は、外の世界がなぜそのように動くかを理解できず、いかに動くかを予期できないことにある。
 「トップに近い位置にあるものは組織の虜たらざるをえない。したがって問題は、企業の経営幹部に対し、いかにして企業外の視点、世の中のものの見方への理解を深めさせるかにある」(『企業とは何か』)




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