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自由市場といっても無秩序な市場は存在しない 不心得者は淘汰される |
『産業人の未来』より |
「最も重要でありながら最も理解されていないものが、 市場における権力の構造である」(『産業人の未来』) いわゆる自由市場には、どんな種類の制約も存在しないといわれてきた。政府が 企業や個人の経済活動に干渉せず、市場の動きに任せる状態をレッセフール(自由放任主義) という。仏語で「なすがままに任せよ」の意味だ。 だが、ドラッカーは、そのような無秩序な市場が存在したためしはない、と喝破する。 若い頃に英国の金融街・シティで働いた経験を持つドラッカーは、市場ではどのように権力が 行使されるのか観察していたのだ。 英国記入の権威筋が、市場の代表的な機関、すなわち証券売買市場、資本調達市場、外国為替市場などを通じて、 権力を行使していた。彼らは、市場のヒートアップを危惧しても、通達の類いを出さなかった。 抑圧的な規制はルールに反したからだ。 不心得者に対する権威筋の意向は、昼食時の雑談、電話でのさりげない会話、あるいは取引所や仲買人たちを通じて、 非公式に伝えられた。このサインは、控え目に二回まで出される。そして、ある日突然、裏書が拒否される。それまで、 不心得者が市場と関係していたことで得られた権威は、すべて取り上げられたという。 「市場には、常に市場自体の規制や権威が存在した。この経済的な領域における支配もまた、政治的な領域における政治的 権力と同様、その権力を実際に行使した」(『産業人の未来』) |
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