執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [280]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

大きな流れを知り基本に従う
個々の変化には振り回されず
流れそのものを機会とせよ
『ネクスト・ソサエティ』より



「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとって最大の問題は
社会のほうである。この五〇年に及ぶ経済の成功をもたらしたものは、
社会的な制度、政策、慣行だった。その典型が系列であり、
終身雇用、輸出戦略、官民協調だった」
(『ネクスト・ソサエティ』)

 それらのものは、日本の古くからの伝統として片付けられることがある。
間違いである。ドラッカーは、それらのものは、初めて日本を訪れた
一九五〇年代にはまだ生まれていなかったという。
じつは、それらの経営手法を制度化した戦後財界人を後押ししたのが、
ドラッカー、デミング、ジュランだった。
 日本の社会に根ざしたものではあった。だから成功した。
戦後の荒廃から今日の経済をもたらしたのは、千五のリーダーたちが
生み出したそれらの制度、政策、慣行だった。
いずれもすばらしい社会的イノベーションだった。
 しかも、九十年頃まで見事に機能した。
日本の面目躍如たるものだった。
ドラッカーに言わせるならば、なにしろ日本は、大化の改新において
中国の制度を日本化したばかりか、明治維新においては、
日本の西洋化ではなく、西洋の日本化に成功した国だった。
 だが、それら過去の制度、政策、慣行も期限切れとなった。
もはや、満足に機能しているものはほとんどない。
同時に、雇用や高齢者医療などへの取り組みも弥縫策のままである。
したがって、今の日本こそ、あくまでも日本の社会に根ざした新しい
制度、政策、慣行を緊急に生み出さなければならない。
 産業、雇用、教育、医療、年金その他すべて、経済の仮面をかぶった
社会の問題である。あらゆる先進国と新興国が抱えている問題である。
しかし、すべて社会のあり方にかかわる問題であるがゆえに、
それぞれの国がそれぞれの伝統のうえに、それぞれの解決策を見出すべきものである。

「次の社会 ネクスト・ソサエティはすでに到来した。もとには戻らない。
急激な変化と乱気流の時代にあっては、大きな流れを知り、基本に
従わなければならない。個々の変化に振り回されてはならない。
その大きな流れが、ネクスト・ソサエティの到来である。」
(『ネクスト・ソサエティ』)




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