新しい家づくりネットワークプロジェクト 第5回コンペ
テーマ <新しい伝統構法の家 2014> 講評/白井 裕泰
1位: 西向きの家 House Facing West
髙砂 正弘/髙砂建築事務所/和歌山大学大学院教授
西向きの家は、前庭・路地・庭・坪庭・作業庭を挟んで片流れ屋根と深い軒、西向きに大きな開口を設けた細長い主屋と共有空間である小間を東西に配置した、2世帯住宅であり、1階を親世帯、2階を子世帯とし、西側の小間を介してつながっている。この家の特徴は、静岡の地場産材である天竜杉を用い、1階外壁のスタッコ、2階外壁の焼杉板、床と天井・軒天井の赤味板の面構成による白と黒と赤のコントラストであり、このような簡明な建築構成にすがすがしさを感じる作品である。
2位:生駒の家
安部 秀司・松田 修平/安部秀司建築設計事務所
生駒の家は、いろいろな機能が納められた4つの箱を、隙間を設けて配置し、中央の隙間を「家中庭」とし、そこに採光のためのトップライト(空のリビング)を設け、各居室に光を届けている。箱と隙間が、連続する空間として構成され、ワンルームのような繋がりのある空間を演出している。「家中庭」を外部的空間として捉え、外部の光と風、すなわち自然を感じることのできる空間に各居室が繋がっている構成や、グレイを基調とした色調、隙間に架構された大梁とグレーチングは、都会的なアトリウム空間をイメージさせる。
新しい家づくりネットワークプロジェクト 第5回高校生コンペ
テーマ <近隣の森の木を使用した家 -左官塗り仕上げの木造住宅-> 講評/三原 斉
1位:地球環境にやさしく、人にやさしく、住み続けられる住処~現在によみがえる漆喰の町屋~
加藤 涼太・吉田 悠人/埼玉県立熊谷工業高等学校
タイトル「地球環境にやさしく、人にやさしく、住み続けられる住処 -現在によみがえる漆喰の町屋―」に示されたことが、そのまま図面に表現されていることが読み取れる。例えば、土壁の材料とそのつくり方、しっくい仕上げ材料とつくり方、三和土の材料とつくり方、これらのどれをとっても、左官の伝統構法を十分に理解し満足しているものである。伝統構法と現代構法を上手く融和し、かつ表現していることが、高く評価できる。
2位:土を感じる家
高桑 江理/静岡県立科学技術高等学校
タイトル「土を感じる家」では、設計条件である「地域の土を使用」、「土壁にする」にすること以外に、「版築にする」、「屋根を緑化する」等の工夫を取り入れ、土をふんだんに使った住宅を表現している。また、土壁の特徴や版築のつくり方など、左官構工法上重要なポイントがわかりやすく示されており高い評価ができる。さらに、図面のすべてが手書きであり、かつイラストで描かれており、見やすく大変興味深いものである。
佳作:土間廊下で繋ぐ家-新しい形容(かたち)のシェアハウス-
川原井 千晴/栃木県立宇都宮工業高等学校
近年、多くなってきたシェアハウスを取り上げ、その住宅の部屋を三和土の廊下でつなぐという発想が大変面白い。また、外壁は雨風に強いとされる土佐しっくいを使用し、内壁は、大津みがき壁を使用しているところは興味深い。左官をふんだんに取り入れ、一度は住んでみたくなる住宅を表現してくれた。
佳作:包忍の家
安生 天翠/東京工業大学付属科学技術高等学校
壁には、珪藻土を使用し、石庭を土塀にする等、左官材料をふんだんに使用したいという気持ちが良く表れている。しかし、これらの左官材料の使い方や図面の表現方法が見つからず、描くことに苦労をしていることも読み取れる。この家では、夫婦お互いの苦労を癒してもらえるものであってほしい。
佳作:トンネルを潜る家
増野 紗樹/東京工業大学付属科学技術高等学校
まず、トンネルという設定が興味深い。次に、土間、しっくい壁、珪藻土壁等、左官の伝統構法を現代の住宅に上手に取り入れている。また、この家で使用した珪藻土は、海底から採取した藻類の化石からできている等の発想が良い。さらに、外壁は、貝灰を使用しており、材料の研究を十分に行ったことが良くわかる。
佳作:左官がつくる層の家
飯澤 舞/静岡県立科学技術高等学校
タイトル「左官がつくる層の家」とあるが、左官を表現した箇所が少なく、左官壁や土間および左官材料をもう少し詳細に表現してほしかった。しかし、図面全体の表現がとても良い。特に、マリンブルーを主として使用した図面の色合いが良い。左官の表現の少なさが惜しかった。