執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [98]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

われわれは今歴史の峠を越えつつある
『新しい現実』より



 「平坦な大地にも上り下りする峠がある。そのほとんどは、たんなる地形の変化であって、気候や言葉や生活様式が変わることはない。しかしそうではない峠がある。本当の境界がある。そして歴史にも境界がある。目立つこともない。気づかれることもない。だが、ひとたび越えてしまえば、社会的な風景と政治的な風景が変わり、気候が変わる。言葉が変わる。新しい現実が始まる」(『新しい現実』)
 ヨーロッパ大陸では、アルプスのブレンネル峠がそのような境界だという。それは古より地中海文明と北欧文明を分けてきた。
 一九六五年から七三年のあいだのどこかで、世界はそのような境界を越え、新しい次の世紀に入ったとドラッカーは言う。それが現在なお進行中の転換期である。この転換期は二〇二〇年あるいは二〇三〇年まで続く。
 われわれは政治家、経済学者、経済人、労働組合幹部、諸々の学者が関心を持ち、書き、話している問題がすでに現実のものとは違うことを知っている。今日の政治学や経済学に特徴的ともいうべき救いがたい非現実性が、その証拠である。
 しかもドラッカーは、われわれが直面している問題のいくつかは、過去の成功によってつくり出されたという。
  「未だに昨日のスローガン、約束、問題意識が論議を支配し、視野を狭いものにしている。それらが、今日の問題の解決に対する最大の障害になっている」(『新しい現実』)




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