執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [208]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

人にとって経済は目的ではなく手段である
『すでに起こった未来』より



「私は、経済を支配的な領域として認めることはもちろん、独立した領域
として認めることもできない。
オーストリア学派の経済学者のように、経済的な領域を唯一の意味ある
領域とする考えはさらに認められない」
(『すでに起こった未来』)

ドラッカー自身、政治や社会にかかわるあらゆる意思決定において、
経済的なコストを考慮に入れるべきことを強く主張してきた。

 市場経済に代わるものをあまりに多く目にしてきたがゆえに、経済体制
としては、市場経済を支持するという。しかし、それでも、ドラッカーに
とって、経済は唯一の領域ではなく、一つの側面にすぎない。

 経済的な要因は、決定要因ではなく制約要因にすぎない。経済的な
ニーズとその充足は、重要ではあっても絶対ではない。

したがって、ドラッカーは、自分は経済学者、エコノミストではない、と言う。
このことを彼は、一九三四年にロンドンのマーチャントバンクのエコノミスト
としてケンブリッジ大学でケインズのセミナーを聴講して知った。

 そのとき突然、ケインズおよび出席していた優れた学徒の全員が
「財と経済の動き」に関心を持っており、彼自身は「人と社会の動き」に
関心を持っていることを悟ったという。

「経済活動、経済機関、経済合理性は、それ自体が目的ではない。
非経済的な目的、すなわち人間的な目的や社会的な目的のための
手段である」(『すでに起こった未来』)




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