執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [216]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

ほとんどの企業は 本当に重要な数字について知ろうとしてはいない
『明日を支配するもの』より



「人口構造の変化と同じように重要でありながら、経営戦略上ほとんど
関心を払われていないものとして、支出配分が重要な意味をもつ」
(『明日を支配するもの』)

かつては、生活水準の高さを示す数字として、エンゲル係数なるものが
使われた。消費支出に占める飲食費の割合のことだった。

ドラッカーは、経営環境の変化を知るには、
このエンゲル係数に相当するものを見つけよと言う。

多くの企業が売上への増減を気にする。あるいは市場シェアに気をつかう。
こうして、あらゆる企業の自らの成長の度合いを数字で把握しようとする。

それなのに、ほとんどの企業が、本当に重要な数字については
知らない。すなわち、顧客の全支出のうちで、自社が提供するカテゴリー
の製品とサービスに向けられているぶんの割合である。

 ドラッカーは、支出配分の変化こそ、企業にとってあらゆる情報の
基本だという。しかも、必要な情報のなかでは、むしろ手に入れやすい
ものである。支出配分は、一度落ち着けば、そのまま続く。それはトレンド
である。

 たとえば、携帯電話に取られてしまったぶんを、出版業その他既存の
産業が取り返すのは容易なことではない。ところが、この変化を重視する
企業やエコノミストがいない。そもそも、そのような問題があることを
知らない。

「支出配分の変化こそ、企業にとってあらゆる情報の基本である」
(『明日を支配するもの』)




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