執筆コラム 3分間でわかるドラッカー [218]
−「経営学の巨人」の名言・至言(週刊ダイヤモンド)

株主の利益のみを最大化?
企業の長期的な成果は
短期的な成果の累積にあらず
『ポスト資本主義社会』より



「企業の経営陣は、近頃では、利害関係者間の
均衡ある利益を実現すべき者とはされていない。
株主の利益のみを最大化すべき者とされるにいたってしまった」
(『ポスト資本主義社会』)

その結果、ドラッカーは、企業が短期的視点からマネジメントされる
ようになったと嘆く。
こうして企業が持つ富の増殖能力は傷つけられることになった。
得られたものは、一時的な株価の上昇であり、長期的な成果の低迷だった。
 ドラッカーは、長期的な成果は短期的な成果の累積ではない、
と断言する。
株価を上げ続けることによって、長期の繁栄を得ることはできない。
 かつて経営陣とは、ステークホルダー、すなわち多様な当事者間に
おける均衡ある利益の実現を図るものとされた。
それがステークホルダー説だった。
ドラッカーによれば、じつはこの認識が正しいものだった。

 問題は、経営があまりに下手なところにあった。そのため株価が
低迷し、買収して分解して売却するという乗っ取りが頻発した。

 そこで経営陣は、シェアホルダー、すなわち株主のために働けとする
シェアホルダー説が登場した。しかし、ドラッカーは、会社は株主だけの
ためのものであるとする説が成立したことは一度もないという。
 そもそも企業とは、資金の多寡ではなく、働く者の意欲と献身によって
支えられている存在である。
「投機家を儲けさせることに意欲をかきたてられる技術者はいない」
(『ポスト資本主義社会』)




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