若年者ものづくり競技大会は、企業等に就業していない20歳以下の若年者のものづくりの技能向上と就業意識を高めるための大会です。技能五輪全国大会の登竜門でもあります。本学では第2回目から毎回出場しています。第17回大会は、2022年7月27日(水)から28日(木)にかけて広島県立広島産業会館にて開催されました。本学からは建設学科より2名が出場し、建築大工職種において銀賞、木材加工職種において敢闘賞を受賞しました。 今回は、2名の受賞者に大会への思いや今後の目標を伺いました。 先輩方からの指導を胸に大会に臨みました 木材加工職種 敢闘賞 建設学科1年 山口 菜さん 幼いころからものづくりに興味があり、中学では木材を使った技術科目の授業が好きで、本棚などを作っていました。その後、建築士になりたいという夢ができ、実習の授業が多いものつくり大学に入学しました。入学後は本格的に木材を加工することが好きになり、何かに挑戦してみたいという気持ちから、若年者ものづくり競技大会出場を目指しました。 指導いただいた先輩方からのアドバイスは、全て参考になるものばかりでした。特に、本番を想定した通し練習では、先輩方に作業ごとのタイムをメモしていただき、時間配分なども一緒に考えていただきました。大会が近づくにつれて、同じようなミスを繰り返してしまうことや、学業とひとり暮らしの両立のなかで練習時間が確保できず、落ち込んでしまうこともありました。しかし、大会で賞を取ることを目標に、心を強く持つことで最後まで頑張ることが出来ました。 大会では、タイムにこだわりましたが、組み立てのタイミングで木材が曲がってしまうなど想定外のミスが重なり、競技時間をオーバーしてしまいました。しかし、最後まで諦めずに完成を目指し、延長時間内に収めることができました。結果が敢闘賞だと分かった時には驚きましたが、一番に家族へ結果を伝え、喜んでもらえたので良かったです。卒業後に就きたい仕事はまだ決めていませんが、今後は技能五輪全国大会への出場を目標に、どんどん練習を重ねて腕を磨きたいと思っています。 険しい道は成長への第一歩。今後も挑戦し続けます! 建築加工職種 銀賞 建設学科 2年 森上 雄介さん 昨年は家具職種で出場しましたが、今年は建築大工職種を先生に薦められました。異なる職種なので技術を学び直すのは大変ですが、険しい道を選択すれば今後の役に立つと考え、建築大工職種に変更して大会に臨みました。練習は、非常勤講師の宮前先生やものつくり大学の卒業生の方にご指導いただきながら、インターンシップ先の宮前工務店で行いました。練習期間では、作業効率を意識しながらより多くの課題を仕上げることによって、大会直前までしっかりと練習を積み重ねることができました。家具職種とは注意を向ける工程が異なるので、新たな学びや、逆に昨年得た技術を活かすことができたと実感しています。また、練習で仕上げた課題の数が歴代の学生の中で多かったことも、今回の受賞に繋がっていると感じています。 大会当日は、昨年の出場経験から大きな緊張はありませんでした。原寸図の作成の際に、設計図を書き直してしまうという減点に繋がるミスはありましたが、常に練習通りを意識しながら、組み立てなど仕上がりに影響の出る箇所はいつもより多く時間を取り、時間内に終了させることができました。応援に駆けつけてくださった先生やOBの先輩と、無事に完成出来たことにホッと胸を撫でおろしました。 結果発表は競技の翌日でした。ドン!と待ち構えていましたが、銀賞受賞を聞いたときはやはり安心しました。すぐに仲間に連絡を入れて、「おめでとう」という声をかけてもらえたので、頑張った甲斐があったなと感じています。今大会では、計画をきちんと練り、時間通りに課題を進めることの大切さを学ぶことができたので、2級建築大工技能士や技能五輪全国大会の出場を視野に挑戦をし続けたいと思います。そのためには、日々の授業を楽しみながら仲間と技術を磨き合い、志を忘れずに過ごすことが重要だと思います。目標は、技能五輪全国大会で金賞受賞です! 関連リンク 若年者ものづくり競技大会出場実績 建設学科WEBページ
行田市はコロナ禍が続き、需要が低迷している市内の花卉《かき》農家を支援するため、「花いっぱい運動」を開始しました。行田市の観光事業である花手水に合わせて、忍城周辺や水城公園のヴェールカフェ周辺を花で彩っています。ものつくり大学では、建設学科の大竹研究室が、花によるフォトスポットやフラワースポットを制作し、花いっぱい運動に協力しました。今回は、忍城東小路とヴェールカフェ前のフォトスポット制作を担当した笠倉 圭佑さん(建設学科4年)と、忍城址内と浮き城の径のフラワースポット制作を担当した三森 公威さん(ものつくり学研究科1年)に伺いました。 フォトスポット制作が決まった時の気持ち 【笠倉】お話をいただいのが5月で、フォトスポットの設置時期が9月ということで、あまり時間も無く、最初は「できるかな」という気持ちでした。制作に関しては、フォトスポットは、今までに設計した事もありませんし、花についても詳しくないのですが、知らないが故に、逆にデザインの幅広さを感じていました。 【三森】最初は、笠倉さんのサポートというイメージで関わりました。2か所にフォトスポットを作るのだと思っていましたが、話を聞いているうちに他にもフラワースポットを作ることを知り、大竹先生から勧められて、制作を始めました。 フォトスポット、フラワースポットのコンセプト 【笠倉】フォトスポットのコンセプトは「カメラマンも被写体になる人も、花を楽しめるフォトスポット」です。フォトスポット制作の話を聞いたその日の午後には、スケッチを描き始めました。そこで、平面的なフォトスポットだと、被写体になる人から見えるのはカメラマンだけで、花を見られないのは勿体無いなと感じ、最初から奥行きのある立方体のデザインを考えていました。大竹先生からは、「フォトスポットの背後にあるヴェールカフェも背景に使ってみたら」というアドバイスをいただき、借景のヒントを得ました。 笠倉さんが描いたスケッチ ヴェールカフェ前のフォトスポット模型 【三森】フラワースポットは、行田市が月に1度開催している花手水のライトアップイベント「希望の光」をサポートして、より華やかにできるスポットを作ろうと思いました。浮き城の径の池に浮かべたフラワースポットのコンセプトは「浮かぶ行田市」です。池に花手水を作り、忍城の模型を浮かべて、「のぼうの城」の田楽踊りのシーンを作りました。忍城址内のフラワースポットは、番傘と組み合わせる予定だったので、番傘の上でよく回される「枡」をコンセプトにしました。ライトアップのメインである番傘との調和を崩さないことを意識して制作しました。 制作にあたって大学で学んできたことは活かせたか 【笠倉】設計の授業で、人の目線や見え方を学んでいなかったら、平面的なフォトスポットになっていたと思います。自分の好きなように設計するのではなく、使ってもらう人たちに楽しんでもらいたいと考えて作ることができました。 【三森】大学での学びを強く実感したのは、現場で施工している時でした。非常勤講師の先生と学生だけで施工したのですが、私たちは全員、1年生の時に架設の経験をしているため、スムーズに組み立てることができました。元々、2日間かけて単管を組む予定でしたが、1日目で組み終わり、2日目からは花を飾り付ける作業に入ることができました。 制作で苦労したことは 【笠倉】私が花に詳しくないため、花の飾り方は一番苦労しました。始めは、ただ花を吊るすことを考えていましたが、「花と花の間隔や、水やりや花の入れ替え作業の効率も考える必要がある」と行田市の方たちから意見をいただきました。そこで、フォトスポットの高さを低くし、作業をしやすくしました。また、花を斜めに設置すれば花が綺麗に見えると思い、格子状に組んだフェンスに入れる案や、板に丸い穴を開けて花を入れる案などを考えました。試行錯誤する中で、苗のポッドをアーチ状に結ぶ案が出て、試してみたところ強度もあり、花の見え方も綺麗だったので、実際に花を入れて撮った動画を行田市の方たちに見ていただき、強度を確認してもらい、この案に決定しました。 【三森】浮き城の径のフラワースポットは、打合せの時に忍城の模型を持参して、浮く素材を何パターンか提案しながら制作を進めました。花手水に使用する花が、ロス花を使用する関係上、数に限りがあったため、枠のサイズや厚みを調整して、花が綺麗に見えるパターンを探しました。また、池の流れで枠が流れてしまうため、重しの付け方や紐の長さも繰り返し試しました。 施工中の市民の方々の反応は 【笠倉】単管を組んでいる時は、近くを通った人たちから「何を作っているの?」と、たくさんの声をかけていただきました。花を飾り付けていくうちに「あ~、綺麗だね」という声が増えてきて、喜んでもらえていることを実感しました。忍城東小路のフォトスポットは、小学生の通学路になっていたため、単管を組んでいる時に「あ~、ジャングルジム!」って言われたりして、「登っちゃダメだよ」みたいなコミュニケーションがありました。制作中に声をかけていただいて、市民の方たちに注目されている事を感じることができ、嬉しかったです。 【三森】浮き城の径の池に入っている時に「池で花手水やるの?」という感じで、たくさんの方に話しかけられました。池に忍城と船を浮かべている時は、小さい子から中学生まで反応がすごく良かったので、やって良かったと感じました。 学生の視点から見る地域交流は 【三森】授業でものを作る時も、安全性は気にしながら作っていますが、学外にものを作る時は、長く設置されることを考慮して、継続性や見た目の変化を気にする必要があることを学びました。これは、授業では学べない事で、責任を感じました。 【笠倉】色々な条件がある中でものを作るのは難しかったですし、考える事がたくさんありました。ですが、完成した時に見てくれる人の数が学内で制作する時より格段に多く、人に見せるためにものを作るのは初めての経験でしたので、すごくやりがいがありました。大変でしたが、こんな経験はそうそうできないですから、制作できて良かったです。達成感が授業とは段違いでした。 地域と大学のより良い関係とは 【三森】今回のような連携は、学生にとっては経験になりますし、市役所の方たちにとっては新しいアイデアをもらえるということがお互いのメリットかと思います。普通、大学に依頼すると設計はできても、施工は企業に別途依頼すると思いますが、ものつくり大学であれば、設計から施工まで全部できる。できる幅が広いことが、ものつくり大学の強みだと思います。 【笠倉】頼られる大学になっていくと良いと思います。地域から頼られることで、学生は勉強する場ができます。ものつくり大学が作ったものが地域に増えたら、大学の名前も広がっていきますし、大学の外でものを作る経験をした方が絶対に自分の経験になりますから。 今回の学びをどう活かすか 【三森】行政の仕事に就くことを考えているため、行田市の方たちと仕事をできたことが貴重な経験になりました。私は、3Dプリンターやレーザーカッターを活用したデジタルファブリケーションについて研究していますが、レーザーカッターで多くの試作品を作ったことで、有用性や課題が見えてきました。手作業で模型を作ると時間がかかるのですが、レーザーカッターで作ると部材を切る時間は15分くらいで済みます。組み立てはあまり時間がかからず、加工も一定の精度でできるため、デジタルファブリケーションの強みが見えました。 【笠倉】条件がある中での制作で、考える力が身に付いたと思います。そして、知識が無いとそもそも思いつかない、知らない事が多いと何もできないということを実感しました。後は、伝え方が一番大事だと思いました。例えば、単管を組む時に、非常勤講師の先生から、どうやって作ればいいのか聞かれた時に、私は言葉で伝えるのが苦手なので、絵を描いて伝えていました。自分の強みを使って伝える力は大事だなと思いました。どう活かせるかというか、どこでも使える力だということを学べました。 関連リンク 【知・技の創造】装飾が愛着に繋がる 建設学科 デザイン・空間表現研究室(大竹研究室) 建設学科WEBページ
若年者ものづくり競技大会は、企業等に就業していない20歳以下の若年者のものづくりの技能向上と就業意識を高めるための大会です。技能五輪全国大会の登竜門でもあります。本学では第2回目から毎回出場しています。第17回大会は、2022年7月27日(水)から28日(木)にかけて広島県立広島産業会館にて開催されました。本学からは建設学科より2名が出場し、建築大工職種において銀賞、木材加工職種において敢闘賞を受賞しました。 今回は、2名の受賞者に大会への思いや今後の目標を伺いました。 先輩方からの指導を胸に大会に臨みました 木材加工職種 敢闘賞 建設学科1年 山口 菜さん 幼いころからものづくりに興味があり、中学では木材を使った技術科目の授業が好きで、本棚などを作っていました。その後、建築士になりたいという夢ができ、実習の授業が多いものつくり大学に入学しました。入学後は本格的に木材を加工することが好きになり、何かに挑戦してみたいという気持ちから、若年者ものづくり競技大会出場を目指しました。 指導いただいた先輩方からのアドバイスは、全て参考になるものばかりでした。特に、本番を想定した通し練習では、先輩方に作業ごとのタイムをメモしていただき、時間配分なども一緒に考えていただきました。大会が近づくにつれて、同じようなミスを繰り返してしまうことや、学業とひとり暮らしの両立のなかで練習時間が確保できず、落ち込んでしまうこともありました。しかし、大会で賞を取ることを目標に、心を強く持つことで最後まで頑張ることが出来ました。 大会では、タイムにこだわりましたが、組み立てのタイミングで木材が曲がってしまうなど想定外のミスが重なり、競技時間をオーバーしてしまいました。しかし、最後まで諦めずに完成を目指し、延長時間内に収めることができました。結果が敢闘賞だと分かった時には驚きましたが、一番に家族へ結果を伝え、喜んでもらえたので良かったです。卒業後に就きたい仕事はまだ決めていませんが、今後は技能五輪全国大会への出場を目標に、どんどん練習を重ねて腕を磨きたいと思っています。 険しい道は成長への第一歩。今後も挑戦し続けます! 建築加工職種 銀賞 建設学科 2年 森上 雄介さん 昨年は家具職種で出場しましたが、今年は建築大工職種を先生に薦められました。異なる職種なので技術を学び直すのは大変ですが、険しい道を選択すれば今後の役に立つと考え、建築大工職種に変更して大会に臨みました。練習は、非常勤講師の宮前先生やものつくり大学の卒業生の方にご指導いただきながら、インターンシップ先の宮前工務店で行いました。練習期間では、作業効率を意識しながらより多くの課題を仕上げることによって、大会直前までしっかりと練習を積み重ねることができました。家具職種とは注意を向ける工程が異なるので、新たな学びや、逆に昨年得た技術を活かすことができたと実感しています。また、練習で仕上げた課題の数が歴代の学生の中で多かったことも、今回の受賞に繋がっていると感じています。 大会当日は、昨年の出場経験から大きな緊張はありませんでした。原寸図の作成の際に、設計図を書き直してしまうという減点に繋がるミスはありましたが、常に練習通りを意識しながら、組み立てなど仕上がりに影響の出る箇所はいつもより多く時間を取り、時間内に終了させることができました。応援に駆けつけてくださった先生やOBの先輩と、無事に完成出来たことにホッと胸を撫でおろしました。 結果発表は競技の翌日でした。ドン!と待ち構えていましたが、銀賞受賞を聞いたときはやはり安心しました。すぐに仲間に連絡を入れて、「おめでとう」という声をかけてもらえたので、頑張った甲斐があったなと感じています。今大会では、計画をきちんと練り、時間通りに課題を進めることの大切さを学ぶことができたので、2級建築大工技能士や技能五輪全国大会の出場を視野に挑戦をし続けたいと思います。そのためには、日々の授業を楽しみながら仲間と技術を磨き合い、志を忘れずに過ごすことが重要だと思います。目標は、技能五輪全国大会で金賞受賞です! 関連リンク 若年者ものづくり競技大会出場実績 建設学科WEBページ
行田市はコロナ禍が続き、需要が低迷している市内の花卉《かき》農家を支援するため、「花いっぱい運動」を開始しました。行田市の観光事業である花手水に合わせて、忍城周辺や水城公園のヴェールカフェ周辺を花で彩っています。ものつくり大学では、建設学科の大竹研究室が、花によるフォトスポットやフラワースポットを制作し、花いっぱい運動に協力しました。今回は、忍城東小路とヴェールカフェ前のフォトスポット制作を担当した笠倉 圭佑さん(建設学科4年)と、忍城址内と浮き城の径のフラワースポット制作を担当した三森 公威さん(ものつくり学研究科1年)に伺いました。 フォトスポット制作が決まった時の気持ち 【笠倉】お話をいただいのが5月で、フォトスポットの設置時期が9月ということで、あまり時間も無く、最初は「できるかな」という気持ちでした。制作に関しては、フォトスポットは、今までに設計した事もありませんし、花についても詳しくないのですが、知らないが故に、逆にデザインの幅広さを感じていました。 【三森】最初は、笠倉さんのサポートというイメージで関わりました。2か所にフォトスポットを作るのだと思っていましたが、話を聞いているうちに他にもフラワースポットを作ることを知り、大竹先生から勧められて、制作を始めました。 フォトスポット、フラワースポットのコンセプト 【笠倉】フォトスポットのコンセプトは「カメラマンも被写体になる人も、花を楽しめるフォトスポット」です。フォトスポット制作の話を聞いたその日の午後には、スケッチを描き始めました。そこで、平面的なフォトスポットだと、被写体になる人から見えるのはカメラマンだけで、花を見られないのは勿体無いなと感じ、最初から奥行きのある立方体のデザインを考えていました。大竹先生からは、「フォトスポットの背後にあるヴェールカフェも背景に使ってみたら」というアドバイスをいただき、借景のヒントを得ました。 笠倉さんが描いたスケッチ ヴェールカフェ前のフォトスポット模型 【三森】フラワースポットは、行田市が月に1度開催している花手水のライトアップイベント「希望の光」をサポートして、より華やかにできるスポットを作ろうと思いました。浮き城の径の池に浮かべたフラワースポットのコンセプトは「浮かぶ行田市」です。池に花手水を作り、忍城の模型を浮かべて、「のぼうの城」の田楽踊りのシーンを作りました。忍城址内のフラワースポットは、番傘と組み合わせる予定だったので、番傘の上でよく回される「枡」をコンセプトにしました。ライトアップのメインである番傘との調和を崩さないことを意識して制作しました。 制作にあたって大学で学んできたことは活かせたか 【笠倉】設計の授業で、人の目線や見え方を学んでいなかったら、平面的なフォトスポットになっていたと思います。自分の好きなように設計するのではなく、使ってもらう人たちに楽しんでもらいたいと考えて作ることができました。 【三森】大学での学びを強く実感したのは、現場で施工している時でした。非常勤講師の先生と学生だけで施工したのですが、私たちは全員、1年生の時に架設の経験をしているため、スムーズに組み立てることができました。元々、2日間かけて単管を組む予定でしたが、1日目で組み終わり、2日目からは花を飾り付ける作業に入ることができました。 制作で苦労したことは 【笠倉】私が花に詳しくないため、花の飾り方は一番苦労しました。始めは、ただ花を吊るすことを考えていましたが、「花と花の間隔や、水やりや花の入れ替え作業の効率も考える必要がある」と行田市の方たちから意見をいただきました。そこで、フォトスポットの高さを低くし、作業をしやすくしました。また、花を斜めに設置すれば花が綺麗に見えると思い、格子状に組んだフェンスに入れる案や、板に丸い穴を開けて花を入れる案などを考えました。試行錯誤する中で、苗のポッドをアーチ状に結ぶ案が出て、試してみたところ強度もあり、花の見え方も綺麗だったので、実際に花を入れて撮った動画を行田市の方たちに見ていただき、強度を確認してもらい、この案に決定しました。 【三森】浮き城の径のフラワースポットは、打合せの時に忍城の模型を持参して、浮く素材を何パターンか提案しながら制作を進めました。花手水に使用する花が、ロス花を使用する関係上、数に限りがあったため、枠のサイズや厚みを調整して、花が綺麗に見えるパターンを探しました。また、池の流れで枠が流れてしまうため、重しの付け方や紐の長さも繰り返し試しました。 施工中の市民の方々の反応は 【笠倉】単管を組んでいる時は、近くを通った人たちから「何を作っているの?」と、たくさんの声をかけていただきました。花を飾り付けていくうちに「あ~、綺麗だね」という声が増えてきて、喜んでもらえていることを実感しました。忍城東小路のフォトスポットは、小学生の通学路になっていたため、単管を組んでいる時に「あ~、ジャングルジム!」って言われたりして、「登っちゃダメだよ」みたいなコミュニケーションがありました。制作中に声をかけていただいて、市民の方たちに注目されている事を感じることができ、嬉しかったです。 【三森】浮き城の径の池に入っている時に「池で花手水やるの?」という感じで、たくさんの方に話しかけられました。池に忍城と船を浮かべている時は、小さい子から中学生まで反応がすごく良かったので、やって良かったと感じました。 学生の視点から見る地域交流は 【三森】授業でものを作る時も、安全性は気にしながら作っていますが、学外にものを作る時は、長く設置されることを考慮して、継続性や見た目の変化を気にする必要があることを学びました。これは、授業では学べない事で、責任を感じました。 【笠倉】色々な条件がある中でものを作るのは難しかったですし、考える事がたくさんありました。ですが、完成した時に見てくれる人の数が学内で制作する時より格段に多く、人に見せるためにものを作るのは初めての経験でしたので、すごくやりがいがありました。大変でしたが、こんな経験はそうそうできないですから、制作できて良かったです。達成感が授業とは段違いでした。 地域と大学のより良い関係とは 【三森】今回のような連携は、学生にとっては経験になりますし、市役所の方たちにとっては新しいアイデアをもらえるということがお互いのメリットかと思います。普通、大学に依頼すると設計はできても、施工は企業に別途依頼すると思いますが、ものつくり大学であれば、設計から施工まで全部できる。できる幅が広いことが、ものつくり大学の強みだと思います。 【笠倉】頼られる大学になっていくと良いと思います。地域から頼られることで、学生は勉強する場ができます。ものつくり大学が作ったものが地域に増えたら、大学の名前も広がっていきますし、大学の外でものを作る経験をした方が絶対に自分の経験になりますから。 今回の学びをどう活かすか 【三森】行政の仕事に就くことを考えているため、行田市の方たちと仕事をできたことが貴重な経験になりました。私は、3Dプリンターやレーザーカッターを活用したデジタルファブリケーションについて研究していますが、レーザーカッターで多くの試作品を作ったことで、有用性や課題が見えてきました。手作業で模型を作ると時間がかかるのですが、レーザーカッターで作ると部材を切る時間は15分くらいで済みます。組み立てはあまり時間がかからず、加工も一定の精度でできるため、デジタルファブリケーションの強みが見えました。 【笠倉】条件がある中での制作で、考える力が身に付いたと思います。そして、知識が無いとそもそも思いつかない、知らない事が多いと何もできないということを実感しました。後は、伝え方が一番大事だと思いました。例えば、単管を組む時に、非常勤講師の先生から、どうやって作ればいいのか聞かれた時に、私は言葉で伝えるのが苦手なので、絵を描いて伝えていました。自分の強みを使って伝える力は大事だなと思いました。どう活かせるかというか、どこでも使える力だということを学べました。 関連リンク 【知・技の創造】装飾が愛着に繋がる 建設学科 デザイン・空間表現研究室(大竹研究室) 建設学科WEBページ