【Fゼミ】私の仕事 #2--私が在籍してきた企業におけるマーケティング

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1年次のFゼミは、新入生が大学生活を円滑に進められるように、基本的心構えや、ものづくりを担う人材としての基礎的素養を修得する授業です。

このFゼミにおいて各界で活躍するプロフェッショナルを招へいし、「現場に宿る教養」とその迫力を体感し、自身の生き方やキャリアに役立ててもらうことを目的として、プロゼミ(プロフェッショナル・ゼミ)を実施しました。

今回は、外資系企業を中心に7社の在籍経験があり、約23年にわたってマーケティングに従事している平賀敦巳氏を講師に迎えたプロゼミの内容をお届けします。

マーケティングとは何か

本日の話の流れとして、まず初めに、「マーケティング」とは何を意味する言葉なのかを説明して、全体像をつかみ、その上で「マーケティング」に含まれる具体的な仕事の種類を説明します。
そして、より個別具体的に、私が在籍してきた企業でどんな仕事に実際に取り組んで来たのか、事例を紹介しながら説明します。

現在、担当している商品、当日学生に配布された

まず、大家と言われる3名の方が、「マーケティング」をどのように定義しているか?
ハーバード大学教授のレビットは、マーケティングとは「顧客の創造」だと言いました。
「マーケティングの父」の異名をとるコトラーは、「個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセス」という、大変緻密な定義を行っています。
そして、有名な経営学者であるドラッカーは、マーケティングとは「セリング(販売)を不要にすること」だと語りました。


では、私は、マーケティングをどのように定義しているか。
二つの○と、それを結び付ける両向きの矢印を使って、図で説明をすると分かりやすいのです。
片方の○は、生活していく中で様々な課題なり欲求を抱える消費者、生活者。
もう片方の○は、そういった課題を解決し、欲求を満たすリソースを持つ事業者。
これら二つの○を結び付けてあげると、そこに取引が生まれ、市場が生まれます。
この、市場をつくるために両者を結び付けてあげることがマーケティングなのですね。

MarketingというのはMarketにingが付いていることから分かる通り、「Marketすること」という意味。
要は、「市場を作ること」がマーケティング、市場をつくり、より大きくするために、色々な働きかけることが全てマーケティング活動と言えます。
こう定義すると、マーケティングというのはとても広い概念で、ほぼ「経営」と同じ意味合いになります。
とはいえ、経営活動の中には、人事、経理・財務、IT等々、確かにマーケティングとは言いにくいものも含まれるので、私は以下のように整理しています。
経営=直接お客様に働きかけて市場を作る広義のマーケティング+間接業務
広義のマーケティング=狭義のマーケティング+セリング


コトラーは、このマーケティングの全体像を、「R-STP-MM-I-Cモデル」という枠組みで整理しました。
R=Research(リサーチ・調査や情報収集)
STP=Segmentation(セグメンテーション・市場を分類すること)、Targeting(ターゲティング・お客様を絞ること)、Positioning(ポジショニング・お客様の頭の中での居場所、位置付けを決めること)、これらの頭文字で、マーケティングの戦略部分。
MM=Marketing Mixの略でいわゆる「4P」と言われるものと同じ意味。4Pとは、Product(商品)、Price(価格)、Place(販路)、Promotion(販促)の4つのPから始まる要素を指し、マーケティングの戦術部分。
I=Implementation(実行)の頭文字。頭の中で考えた戦略や戦術は、実際に実行に移されないことには現実が変化しないので、実行はとても大切です。
C=Control(改善)の頭文字。俗にいう「PDCA」。実行したら必ず結果を評価して、上手くいった点は維持し、上手くいかなかったことは改善する。そのプロセスを繰り返すことが重要です。

「お客様」を知ること

ビジネスをする場合、通常何らかの目的を持って始めます。
その目的を達成するために、様々な商品を取り扱い、その商品を市場で売れるようにするために、先程の「R-STP-MM-I-Cモデル」に沿って、戦略を考え、戦術を練り、それらを実行に移していきます。
マーケティング戦略を考える上では、まず何よりも先に、市場の一方当事者である「お客様」を知ることが重要です。
お客様は、何かしらモノを買うまでに、様々な段階を経て意思決定しますが、この時の心の流れを「パーチェスファネル」などと呼びます。
ファネルとは、漏斗(じょうご/ろうと)で、必ず上が広く、下に行くに従って細くなります。
基本的に、認知、興味、行動、比較、購入という段階を踏んで、ようやくモノを買ってくれることになるわけで、段階を進むごとに離脱する人も出て来るため、必ず下へ行くほど細い。
このパーチェスファネルを、出来るだけ横に広げていくことで、市場がつくられ、大きくなる。
また、下の方をより太らせて逆三角形から台形に近付けていくことで、更に市場が大きくなる。
なので、各段階の間口を広げること、そして次の段階へと進む確率を上げること、それを実現することがマーケティングの仕事のイメージとなります。


お客様が持っている顕在ニーズと潜在ニーズ(ホンネ)を、質的調査(ヒアリングや観察)や量的調査(アンケート、データ分析)を通じて調べ上げたら、そのニーズを満たすことを考えなければなりません。
そのために、「コンセプト」を練り上げます。
コンセプトの要素は、よくABCで整理されます。
A:Audience・お客様
B:Benefit・便益、嬉しさ
C:Compelling Reason Why・お客様がその嬉しさを得られると信じるに足る理由


お客様に選ばれる商品をつくるには、Aの誰を相手にするのか、Bの相手が喜んでくれそうな何を提供するのか、そしてCのそれがいかに良い商品だと分かるような根拠をどうやって伝えるか、これらABCをワンセットで提供しなくてはなりません。
3つ目の、お客様に提供する「根拠」については、3つの「差別化軸」(①手軽軸、②品質軸、③密着軸)を活用します。

私が在籍してきた企業の具体例

①女性用カミソリのポジショニング
圧倒的なシェアを持っていた競合の商品が、ハッキリとしたポジショニングを持っていない点に気付き、消費者のニーズに基づいた明確なポジショニングで「挟み込み」を行った結果、多くの売場を獲得し、シェアの逆転につなげることができました。

②商品をラッピングしてギフト化し、価値を高めて価格を上げる
一つだと安価なキャンディを、沢山集めてお花のブーケのようなラッピング仕立てにすることで、単価を上げて発売しています。キャンディだけで比較すると割高ですが、ギフトとしての価値を創り出すことで多くの方に買い求めていただいています。

③商品カテゴリによるコスト構造の違いと値付け
化粧品や日用雑貨で様々な商品を扱ってきた中で、売価と原価の関係はカテゴリによってバラバラであることを見て来ました。より多くの粗利を稼げるカテゴリでは、その粗利を原資にして、広告や販促を展開し、逆に粗利が低いカテゴリでは、ギリギリ安値でとにかく数をさばくというやり方になっています。

④小売店のバイヤーとの「棚割」商談における資料作成
小売店では半年に一度、「棚割」といって棚に並べる商品の入れ替えを実施しています。消費者に商品を買ってもらう機会を確保するために、棚割で自分のところの商品がなぜ必要なのか、ロジックを組み立て、説得を試みます。

⑤TVCM制作
広告代理店に依頼をして、誰にどんなメッセージを伝えたいのかを説明し、目的に応じたクリエイティブを制作してきました。

⑥店頭販促
消費者は、「期間限定」だったり「お買い得」といったメッセージ、見た目に反応することが多いので、店頭でより多くの人に、より頻度高く買っていただくための工夫を様々に行ってきました。

⑦DMを用いた店頭への集客
化粧品会社で、愛用顧客の方に再び店頭へと足を運んでもらうために、凝りに凝ったDMを送付していました。頻繁に新商品を出し、常に店頭を新鮮に保って、DMによる集客でにぎわいを創り出していました。

Profile

平賀 敦巳(ひらが・あつみ)

1972年東京都出身、横浜市在住
1996年慶應義塾大学大学院法学研究科修了(法学修士)
外資系企業を中心に7社の在籍経験。
27年強のキャリアのうち、約23年マーケティングに一貫して従事。
これまでに取り扱ってきた商品は、主に日用雑貨と化粧品を中心に、洗剤や家庭紙(トイレットペーパーやティッシュペーパーなど)、スキンケアやヘアケアやボディケア、カミソリ、香水、キャンドル、保険などが挙げられる。
マーケティング戦略の立案から、商品・コンセプトの調査や開発、値決め、チャネル開拓、広告宣伝・PR、販売促進に至るまで、幅広い経験を積んで来た。
現在は、ベルフェッティ・ヴァン・メレ・ジャパン・サービス株式会社に勤務、カテゴリーマネージャーとしてメントスとチュッパチャップスの二つのブランドを管掌。

原稿
井坂 康志(いさか・やすし)
ものつくり大学教養教育センター教授

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