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#2年生

  • 練習で磨いた100%の技術を ~第18回若年者ものづくり競技大会①~

    2023年8月1日から2日にかけて静岡県静岡市で第18回若年者ものづくり競技大会が開催されました。本学では建設学科から2名(建築大工職種1名、木材加工職種1名)の学生が出場し、建築大工職種で金賞、木材加工職種で銀賞という好成績を残すことができました。 今回は建築大工職種で金賞を受賞した古舘 優羽さん(建設学科2年)に、大会に向けて積み重ねてきた努力などを伺いました。 ※建築大工職種の競技は、決められた時間内に木造小屋組の一部を製作し、出来栄えを競います。作業は、「カンナによる部材の木ごしらえ」→「正確な墨付け」→「ていねいで素早い加工仕上げ」の順で進められ、最後に各部材を組み立てて完成させます。 高校時代にやり残したこと 私は工業高校の建築科に通っていました。高校時代は部活動のバスケットボールばかりしていました。高校生の時から大工の検定や競技大会に興味はありましたが、先生から部活か競技大会か絞るように言われ、小学生から続けてきたバスケットボールを優先しました。進路を選択する際に、大工以外にも専門工事や設計など幅広く担える技術者になりたいと思い、木造建築以外にも様々なコースがあって、幅広く学べるものつくり大学への進学を決めました。大学に入学後は、まずは高校生の時にやりたかった検定に挑戦しようと思いました。1年生の時は、木材加工職種での出場を目指していましたが、学内予選で2位だったため出場することは叶いませんでした。今年は、建築大工職種の技能検定3級を受験し、学内で1位の成績を取ることができ、大会への出場権を得ました。大会に出場が決まってからは、インターンシップとして2か月間、家の巧株式会社にお世話になり練習に明け暮れました。家の巧株式会社には、非常勤講師で大会の検定員も務めている宮前 守先生や大会に出場経験がある卒業生の方がいて、指導していただきながら練習を進めました。 本番で100%の力を出すために 競技が終わった瞬間、練習の時より良いものができたという直感がありました。大会本番は練習の時より少し余裕を持って仕上げることができたので、最後に見落としがないか確認することができました。金賞とは言わないけど賞は取れると思いました。 金賞を受賞した課題 練習を見ていただいていた宮前先生から「練習で100%、120%のものを作れないと本番で同じように作れない」とずっと言われていました。大会の2週間前に製作時間が競技の標準時間内に入ることができました。それまでは時間内に完成させることを優先していて精度が低かったので、次は正確に作ることに集中していたら、また時間内に完成しなくなってしまいました。これはマズいと思って、休日にリフレッシュして最後の1週間を迎えました。この1週間は、製作時間の管理をしっかり行い、課題を5つ作りましたが、今までと比べ物にならないほど急に良いものが作れるようになりました。最後の最後で、100%に近いものを出せたと思えたので、大会で少し余裕を持つことができました。練習で一番のものを作れたからこそ本番でも金賞の課題を作れたのだと思います。 最後の1週間で製作した課題 課題の制作では「削り」と「墨付け」の工程が重要になります。「削り」は最初に渡される木材が仕上げの寸法よりも1.5㎜大きく製材されているため、寸法どおりに小さくしなければなりません。 カンナがけを行う古舘さん 「墨付け」については、墨を付ける場所が間違っていたら加工にも影響してしまい正確なものが完成しません。木材は全部で8本ほどありますが、ずっと練習をしていると墨を付けている時などに「何かこれおかしいな」って体が勝手に反応するようになります。例えば、練習中にいつもどおりに墨を付けたつもりが、墨付けが終わった時に木材全体を眺めると、ここの幅がいつもと違うなと思って、測ってみたら1㎝足りなかったという事がありました。こういった事も練習を繰り返していないと体に沁みつかないと思います。 墨付けをする古舘さん 練習では課題を20台作りました。月曜日から土曜日まで練習していましたが、1日は道具を研ぐ時間に充て、それ以外の日は課題を作っていました。道具をしっかり研いでおかないと摩耗して欠けてしまったり、切れ味が悪くなったりしてしまうため、道具を研ぐことも練習と同じくらい大切だと考えています。本番で使う道具だからこそ、練習の時から本番と同じ状態にしておかないと意味がないと思っていました。もちろん、毎日の練習が終わった後の手入れも欠かさずしていました。練習は、家の巧株式会社の工房で行っていました。宮前先生や卒業生の方は、日中は現場に出ていて、現場終わりや土曜の午前中に見に来てくださってアドバイスを受けていました。お二人のアドバイスはいつも的確で、すごく参考になりました。アドバイスをいただいた後は自分で考えて練習に落とし込んでいきました。ただ、基本的に1人で練習していたためペース配分が分からないことがあり、競う相手もいないから出来栄えの比較もできなくて苦労しました。気が滅入った時も1人ではなかなか切り替えるのが難しく、色々な面で1人というのが辛かったです。夢でも練習をしていて、失敗する夢でうなされて起きたこともあります。 頑張れた理由 高校生の時に特に何もできなかった私ですが、大学に入学してからでも努力すればできるということを実感したかったからストイックに練習することができました。それと、少しは母校である八戸工業高校にメッセージとして伝えたいという思いもありました。また、技能検定3級の課題で100点を取っていました。大会の課題は技能検定より少し難しい程度で、基本的な加工はほぼ同じだったので、大会の課題も100点に近いものができるよなって思い、自然と金賞が目標になりました。若年者ものづくり競技大会ではしばらく本学から金賞を受賞した人がいないと聞いていたこともあって、何とかして久しぶりに金賞を取って大学に帰りたいという思いもありました。母校には金賞受賞を報告していませんでしたが、担任の先生から「金賞取ったって話題になってるぞ」って連絡が来ました。今回の結果が、高校の後輩たちの励みになっていたら嬉しいです。これからは、入学前から考えていた技能五輪全国大会への出場を目標にします。そのためにまずは、2月に実施される技能検定2級で上位入賞を目指して練習していきます。それから、ものつくり大学に入学したからには大工の勉強をもっと専門的にしたいと思っています。入学してからの1年半は想像していたとおりの学生生活を送ることができています。すごく建築に詳しい先輩もいて、毎日が勉強です。入学前に思っていたよりも色々なことが学べています。将来は地元に帰るのか、関東で就職するのかはまだ決めていませんが、大学で学んだことをしっかり活かして、必要とされる人材になりたいと思います。そのためにも、学業を頑張っていきたいです。 関連リンク ・先輩たちへの感謝を胸に大会へ ~第18回若年者ものづくり競技大会②~・若年者ものづくり競技大会 大会後インタビュー・若年者ものづくり競技大会実績WEBページ・建設学科WEBページ

  • フラワーデザインアートで駅利用者をHAPPYに!

    デザインフェスタ等への展示製作活動を行っている、ものつくりデザイナーズプロジェクト「MDP」は、鴻巣市と鴻巣市観光協会から依頼を受け、地域の魅力発信を目的にしたフラワーデザインアートを制作しました。 2021年度は鴻巣高校、鴻巣女子高校の美術部と協力してJR高崎線鴻巣駅に制作し、2022年度は吹上秋桜高校の美術部も加わり、JR高崎線吹上駅に制作しました。作品は現在も両駅舎を彩っています。 吹上駅のフラワーデザインアートを制作した当時、リーダーだった松本拓樹さん(総合機械学科4年、上記写真右)と、新リーダーの内田颯さん(情報メカトロニクス学科2年、上記写真左)に作品制作について伺いました。 フラワーデザインアートについて 【内田】私たちが手がけるフラワーデザインアートを町おこしの一助にしたいというのが一番の思いでした。そして、鴻巣、吹上の代表的な花や、コウノトリなどを取り入れて華やかにしたい。そういう思いを作品に込めました。吹上駅の作品は、吹上の代表的な花であるコスモスをふんだんに取り入れました。北口、南口の欄間に飾った作品にはその出口にある象徴的な風景を取り入れて、パッと見て方角が分かるように意識しました。北口には元荒川の桜並木を、南口には荒川に架かる水管橋をデザインしています。 【松本】関係者全体の会議で、以前の吹上駅は「北口」「南口」の表示が見づらかったので、大きく表示したいという意見から、北口、南口にある風景を絵にすれば直感的に分かりやすくなるのではという意見が出てデザインが決まっていきました。 デザイン検討の打合せ   南口の欄間に飾られている作品   北口の欄間に飾られている作品 制作過程について 【松本】私たちMDPは、ディレクターとして高校生たちが描いた絵をまとめていきました。一昨年の鴻巣駅の時は、高校の美術部にはレイアウトまでは考えてもらっていませんでした。今回の吹上駅は吹上秋桜高校も加わったこともあり、北口と南口に飾る絵については、各高校からどんな雰囲気で作りたいのか分かるように、ある程度のレイアウト案を考えてもらいました。その上で、3校の美術部には、自由に絵を描いてくださいとお願いしました。 【内田】高校生が紙に描いた絵を一枚一枚、私たちがスキャンしてデータ化しました。白地に描かれている背景を透過して、描かれた花をコピーして反転させたりして、見ていて飽きないように配慮しながらレイアウトしていきました。北口の桜についても、一枚の絵からピンクや白で濃淡をつけてランダムに配置しています。単調にならないように加工したのが特に苦労したところです。 【松本】北口の絵は、高校生から提案されたレイアウトが想定より小さかったんです。そのままでは、絵がスペースの半分もいかないくらいで終わってしまうので、不自然にならない程度に引き伸ばしました。空白を埋めるために桜を多くしたり、最初のレイアウトには無かった灰色のグラデーションを加えたりして整えました。改札を出て左手の柱に飾った作品は、3校に描いてもらった花を私たちでレイアウトしました。この作品は作業量が多く、特に大変でした。四季をイメージして柱を飾るということは決まっていましたが、柱が細いのでどうやって四季を並べるか苦心しました。4面を1面ずつ四季にして並べる案などが出ましたが、最終的に螺旋で四季が流れていくようなデザインになりました。下の方は春をイメージしてパンジーを並べ、真ん中あたりは夏をイメージして向日葵を配置しています。柱に貼る時は、一面全部に絵を描いた状態で柱に巻くことになっていたので、両側の絵が揃うように処理をしています。   改札付近の柱の作品 【内田】窓に貼ったイラストは、当初はステンドグラス風にする予定でしたが、それでは光が遮られてしまい、駅構内が暗くなってしまうため実現できませんでした。イラストの線が細すぎると目立たないし、色をつけると光を遮ってしまうし、折り合いをつけるのに苦労しました。最終的には色の無い線画に落ち着きましたが、できれば色をつけたかったなと思います。普段のプロジェクトの活動であれば、発想を広げることを重視して好きなように作れますが、今回のように公共の場に飾る作品となると様々な制約があることが分かり勉強になりました。       鴻巣女子高校の作品     鴻巣高校の作品     吹上秋桜高校の作品 【内田】今回、作業量が多かったのですが、前例があるというのは非常に助かりました。絵をスキャンしてデータに取り込む方法などは先輩が資料として残してくれていたから作業を効率的に進めることができました。作業は手順どおりにやればできたのですが、鴻巣駅より作業量が多かったため、その作業を一つひとつ終わらせていくことが大変でした。 【松本】鴻巣駅の作品は自由通路の両側に作品を展示していて、一枚の絵を分割して作りました。しかし、吹上駅では絵を3枚制作し、窓に貼るシールの制作もあり、複数の作業になりました。さらに、制作時期が高校の文化祭や私たちの碧蓮祭と重なっていました。高校生も私たちも文化祭で展示する作品の制作もあったので、フラワーデザインアートの制作スケジュールが圧迫されていました。高校生は期末テストもあり、その時期は打合せに参加できない高校生もいたから、意見をまとめたくても思うようにいかないことがありました。   鴻巣駅自由通路に飾られている作品①   鴻巣駅自由通路に飾られている作品② フラワーデザインアートの見どころ 【内田】やっぱり、改札付近の柱の作品です。春夏秋冬をできる限り表現して、どの方向から見ても楽しめるようにレイアウトを考えたので、一周ぐるりと回って見ていただきたいです。この柱は3校が描いた絵でできています。絵のタッチが花によって違っていますが統一感を出せたと思います。それから、欄間に描かれている水管橋や元荒川の桜は、その方向に降りれば現物がありますから、ぜひ見に行っていただきたいです。 【松本】実は、北口の絵にものつくり大学を描くという案もありましたが、コンセプトがフラワーデザインアートだっため人工物より花をたくさん入れたいということもあり、ボツになりました。 【内田】制作中は、見ていて飽きない作品にするということを大切にしていました。町おこしとして協力させていただいているので、デザインに偏りが出ないようにすることも気をつけていました。現場では制約が多く、最初の構想と変わってしまい、断念したこともあるので、もっと華やかにできたという思いはあります。その中で、最善策を探して調整しなくてはならないということが分かりました。きっと、社会に出ても同じようなことは多々あると思いますが一足先に学べました。 【松本】大学でも授業やプロジェクトの活動で展示作品を作りますが、公共の場に展示され、なおかつ大規模な作品の制作に携わったことはありませんでしたから、すごい経験をさせていただいたと思います。それに、MDPだけではなく、鴻巣市の方々や高校生が関わっていて、スケジュールが厳しい中で無事に完成させることができ、リーダーとして安心しました。 【内田】私たちの通常の活動は、個人の自主的な活動が多いので、人をまとめて作業を進めるのは大変でした。だからこそ、プロジェクトとして一丸となって一つの大きな作品を作るというのは新鮮でしたし、皆でものを作る大切さを感じました。学内で限られた人だけに見られる作品と、不特定多数の人の目に触れる作品では達成感が違いました。両駅を利用している市民の方々に少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。フラワーデザインアートは鴻巣駅と吹上駅の2か所で終わってしまいましたが、リーダーを引き継いだ今、共通目標が無くなってしまったので、皆が団結できるようなものを作れないか模索しているところです。目標があると達成するための意志というか、やる気が湧いてくるから、それでプロジェクトが活発になると良いなと思っています。 関連リンク   ・ものつくりデザイナーズプロジェクト「MDP」WEBページ・情報メカトロニクス学科WEBページ

  • でっかいロケットを作りたい-1年生ながらリーダーとして種子島ロケットコンテストで優勝!-

    宇宙開発研究プロジェクト「MAXS」は情報メカトロニクス学科の学生プロジェクトの1つで、ロケットの構造や制御、整備、運用体制を学生が主体となって学んでいるプロジェクトです。 第19回種子島ロケットコンテスト(2023年3月2日~3月5日開催)に、6チームが参加し、ロケット部門の種目3「高度※」で優勝、種目2「ペイロード有翼滞空※」でベストデザイン賞(川崎重工賞)を受賞しました。 「高度」で優勝した機体「KYLEEROCKET-Ⅱ」をチームの中心となって製作したのは、ボートライト 海里さん(情報メカトロニクス学科2年)です。機体製作で工夫したことや初めてロケットコンテストに出場した印象などを伺いました。 最後にはロケット打ち上げの様子を動画で見ることができます。そちらもぜひご覧ください。 幼い頃のワクワクが蘇ってロケット製作へ 工業高校に通っていて、高校生の時から親にものつくり大学を勧められていました。大学進学はあまり考えていませんでしたが、宇宙開発研究プロジェクト(以下、宇宙研)というロケットを作っているプロジェクトがある事を聞きました。その時、幼い頃の記憶がふと蘇ってきました。当時の私はアメリカに住んでいて、広い平野の一角で、父が趣味で全長1mくらいの小さなロケットを打ち上げていました。その光景を見て「ロケットって楽しそうだな」と思っていました。親から勧められた進学でしたが、ロケット目当てに入学し、宇宙研に参加しました。 高校生の時は電子の勉強をしていて、CADは苦手でしたが、ロケットを設計するようになってからは苦手意識がなくなりました。宇宙研は1年生教育がしっかりしていて、入ってすぐにCADの勉強をさせてもらえます。特に、ロケットのトップの部分などは、SOLIDWORKSという3DCADソフトで作ります。CADだけではなく、ロケットの翼の部分はレーザー加工機でバルサ材から切り出して作っています。 種子島ロケットコンテストについて 種子島ロケットコンテストは、小型のモデルロケットを打ち上げる大会です。競技はロケット部門とCanSat部門に分かれています。私はロケット部門の4種目(「滞空・定点回収」、「ペイロード有翼滞空」、「高度」、「インテリジェント」)のうちの1つ「高度」に出場して、優勝することができました。この種目は、大会が支給する高度測定装置をロケットに搭載して、どれだけ高く飛ばせたかを競います。 競技のルールとして、打ち上げた後に機体からパラシュートが開かなかった場合や、落下途中に機体が分離してしまうと失格になります。また、射点から半径400m以内に落下しなかった場合も失格です。それから、高度ロケットは高度計や位置情報を把握するビーコンをロケットの先端に収納するのですが、落下した衝撃で中の機材が壊れたら失格になる可能性もあります。だから、他の部門のロケットに比べて頑丈に作る必要があります。 競技以外にも技術発表会があり、3分という限られた時間の中で機体のプレゼンテーションをします。その後、実行委員から技術面について質問を受けます。技術発表会は大会の結果にも影響があります。晴天であれば、ロケットを打ち上げた結果で順位が決まりますが、雨で競技が中止になってしまった時はこのプレゼンテーションで決まります。だから、必死です。 宇宙研から出場した機体たち(最奥が「KYLEEROCKET-Ⅱ」) 優勝よりも記録を狙った機体づくり 初期デザインや設計計画書の作成は2022年度卒業の先輩に手伝ってもらいましたが、その他はほぼ一人で作りました。他にもチームメイトはいたのですが、他のプロジェクトが忙しかったり、アルバイトが忙しかったりしてなかなか来れなくて。だから、機体名も自分の名前から取って「KYLEEROCKET-Ⅱ」と名付けました(笑)。コンテストの前の試し打ちや機体の改良、技術発表会のプレゼンテーション資料の作成などもほとんど一人でやりました。機体の改良は先輩が残してくれた初期設計を元にして、自分で設計しながら作り上げていきました。 ロケットは打ち上げた後、落下時にバックファイアが開くのですが、初期デザインではチューブの細いところから出る設計でした。試し打ちした時は、展開せずに自由落下して壊れてしまったり、そのまま飛んでいって機体を無くしてしまったりしました。コンテストが迫ってくる中で、このままではいけないと思い、もっとチューブが太くなっている位置からバックファイアを出るようにデザインし直したら、上手く開くようになりました。 改良後の機体 また、機体の強度を上げるために、尾翼のバルサ材を硬化樹脂でコーティングして、落ちても割れないようにしました。他の部分にも硬化されたガラス繊維を使って、軽くて硬い機体を製作しました。それから、フィンの形状も工夫しています。ロケットのシミュレーションが可能な「オープンロケット」というアプリで、遊び心でデザインしてみたら今までで一番高く飛ぶという結果が出ました。たまたまだったのですが、よく考えてみると、先端の方が急な角度になっていて打ち上げた際に空気抵抗を受けにくいデザインになっていました。 今回の機体は、シミュレーション上は319mの高さまで飛びます。大会では280mくらいの高さでした。過去に優勝した機体は500m近くまで飛んだ機体もあって、今回の大会でも私の機体より高く飛んだ機体もひょっとしたらあったのかもしれません。しかし、他のチームは高く飛んでも機体が壊れてしまったり、強風に煽られて紛失したりして失格になってしまったチームも少なからずありました。その結果、私の機体が優勝ということになりました。初めての大会ですから、優勝を狙うよりも記録を残そうと思って頑丈に作っていましたが、それが結果として優勝につながりました。だから、優勝するためには高さをだすことも重要ですが強度のある設計も必要です。優勝した後も機体の改良を続けていて、5月に開かれるプロジェクト内の部内戦でその機体を打ち上げたいと思っています。 初めて大会に出場してみて 初めてロケットの大会に出場しましたが、めちゃくちゃ楽しかったです。競技の他にワークショップという、自分の機体を他の参加者にアピールできる時間があり、その時に私のロケットに興味を持ってくれた人が何人かいました。競技の時も話しかけてもらえて、表彰式の時に「何でこのフィンの形にしたの?」とか質問攻めでした。初めての大会で、1年生でチームのリーダーとして出場できて、優勝できるって言葉にならないくらい嬉しいです。 種目2「ペイロード有翼滞空」でベストデザイン賞(川崎重工賞)を受賞したチームとともに 種子島まで宇宙研のメンバーと行って楽しい思い出もできたかと思われるかもしれませんが、大会のことで頭がいっぱいですごく疲れてしまい、観光する余裕はありませんでした。宿泊していた旅館の近くに鉄砲館があったので、興味があった先輩にノリでついて行ったくらいです(笑)。大会が終わって種子島を離れる時に、ちょうどH3ロケットの打ち上げを港から見ることができました。ロケットを打ち上げる時って赤く光るのですが、その赤い物体がものすごい速さで高くまで上がっていくのを生で見て、遠くからでも凄さを感じました。実際に打ち上げの瞬間を自分の目で見ることができたのは良い体験でした。いつか、自分もでっかいロケットを作りたいです。 関連リンク ・宇宙開発研究プロジェクト 航空機製作への新たな挑戦・宇宙開発研究プロジェクト「MAXS」・情報メカトロニクス学科・種子島ロケットコンテストWEBサイト (※競技内容の詳細は上記のリンクを参照してください)

  • 練習で磨いた100%の技術を ~第18回若年者ものづくり競技大会①~

    2023年8月1日から2日にかけて静岡県静岡市で第18回若年者ものづくり競技大会が開催されました。本学では建設学科から2名(建築大工職種1名、木材加工職種1名)の学生が出場し、建築大工職種で金賞、木材加工職種で銀賞という好成績を残すことができました。 今回は建築大工職種で金賞を受賞した古舘 優羽さん(建設学科2年)に、大会に向けて積み重ねてきた努力などを伺いました。 ※建築大工職種の競技は、決められた時間内に木造小屋組の一部を製作し、出来栄えを競います。作業は、「カンナによる部材の木ごしらえ」→「正確な墨付け」→「ていねいで素早い加工仕上げ」の順で進められ、最後に各部材を組み立てて完成させます。 高校時代にやり残したこと 私は工業高校の建築科に通っていました。高校時代は部活動のバスケットボールばかりしていました。高校生の時から大工の検定や競技大会に興味はありましたが、先生から部活か競技大会か絞るように言われ、小学生から続けてきたバスケットボールを優先しました。進路を選択する際に、大工以外にも専門工事や設計など幅広く担える技術者になりたいと思い、木造建築以外にも様々なコースがあって、幅広く学べるものつくり大学への進学を決めました。大学に入学後は、まずは高校生の時にやりたかった検定に挑戦しようと思いました。1年生の時は、木材加工職種での出場を目指していましたが、学内予選で2位だったため出場することは叶いませんでした。今年は、建築大工職種の技能検定3級を受験し、学内で1位の成績を取ることができ、大会への出場権を得ました。大会に出場が決まってからは、インターンシップとして2か月間、家の巧株式会社にお世話になり練習に明け暮れました。家の巧株式会社には、非常勤講師で大会の検定員も務めている宮前 守先生や大会に出場経験がある卒業生の方がいて、指導していただきながら練習を進めました。 本番で100%の力を出すために 競技が終わった瞬間、練習の時より良いものができたという直感がありました。大会本番は練習の時より少し余裕を持って仕上げることができたので、最後に見落としがないか確認することができました。金賞とは言わないけど賞は取れると思いました。 金賞を受賞した課題 練習を見ていただいていた宮前先生から「練習で100%、120%のものを作れないと本番で同じように作れない」とずっと言われていました。大会の2週間前に製作時間が競技の標準時間内に入ることができました。それまでは時間内に完成させることを優先していて精度が低かったので、次は正確に作ることに集中していたら、また時間内に完成しなくなってしまいました。これはマズいと思って、休日にリフレッシュして最後の1週間を迎えました。この1週間は、製作時間の管理をしっかり行い、課題を5つ作りましたが、今までと比べ物にならないほど急に良いものが作れるようになりました。最後の最後で、100%に近いものを出せたと思えたので、大会で少し余裕を持つことができました。練習で一番のものを作れたからこそ本番でも金賞の課題を作れたのだと思います。 最後の1週間で製作した課題 課題の制作では「削り」と「墨付け」の工程が重要になります。「削り」は最初に渡される木材が仕上げの寸法よりも1.5㎜大きく製材されているため、寸法どおりに小さくしなければなりません。 カンナがけを行う古舘さん 「墨付け」については、墨を付ける場所が間違っていたら加工にも影響してしまい正確なものが完成しません。木材は全部で8本ほどありますが、ずっと練習をしていると墨を付けている時などに「何かこれおかしいな」って体が勝手に反応するようになります。例えば、練習中にいつもどおりに墨を付けたつもりが、墨付けが終わった時に木材全体を眺めると、ここの幅がいつもと違うなと思って、測ってみたら1㎝足りなかったという事がありました。こういった事も練習を繰り返していないと体に沁みつかないと思います。 墨付けをする古舘さん 練習では課題を20台作りました。月曜日から土曜日まで練習していましたが、1日は道具を研ぐ時間に充て、それ以外の日は課題を作っていました。道具をしっかり研いでおかないと摩耗して欠けてしまったり、切れ味が悪くなったりしてしまうため、道具を研ぐことも練習と同じくらい大切だと考えています。本番で使う道具だからこそ、練習の時から本番と同じ状態にしておかないと意味がないと思っていました。もちろん、毎日の練習が終わった後の手入れも欠かさずしていました。練習は、家の巧株式会社の工房で行っていました。宮前先生や卒業生の方は、日中は現場に出ていて、現場終わりや土曜の午前中に見に来てくださってアドバイスを受けていました。お二人のアドバイスはいつも的確で、すごく参考になりました。アドバイスをいただいた後は自分で考えて練習に落とし込んでいきました。ただ、基本的に1人で練習していたためペース配分が分からないことがあり、競う相手もいないから出来栄えの比較もできなくて苦労しました。気が滅入った時も1人ではなかなか切り替えるのが難しく、色々な面で1人というのが辛かったです。夢でも練習をしていて、失敗する夢でうなされて起きたこともあります。 頑張れた理由 高校生の時に特に何もできなかった私ですが、大学に入学してからでも努力すればできるということを実感したかったからストイックに練習することができました。それと、少しは母校である八戸工業高校にメッセージとして伝えたいという思いもありました。また、技能検定3級の課題で100点を取っていました。大会の課題は技能検定より少し難しい程度で、基本的な加工はほぼ同じだったので、大会の課題も100点に近いものができるよなって思い、自然と金賞が目標になりました。若年者ものづくり競技大会ではしばらく本学から金賞を受賞した人がいないと聞いていたこともあって、何とかして久しぶりに金賞を取って大学に帰りたいという思いもありました。母校には金賞受賞を報告していませんでしたが、担任の先生から「金賞取ったって話題になってるぞ」って連絡が来ました。今回の結果が、高校の後輩たちの励みになっていたら嬉しいです。これからは、入学前から考えていた技能五輪全国大会への出場を目標にします。そのためにまずは、2月に実施される技能検定2級で上位入賞を目指して練習していきます。それから、ものつくり大学に入学したからには大工の勉強をもっと専門的にしたいと思っています。入学してからの1年半は想像していたとおりの学生生活を送ることができています。すごく建築に詳しい先輩もいて、毎日が勉強です。入学前に思っていたよりも色々なことが学べています。将来は地元に帰るのか、関東で就職するのかはまだ決めていませんが、大学で学んだことをしっかり活かして、必要とされる人材になりたいと思います。そのためにも、学業を頑張っていきたいです。 関連リンク ・先輩たちへの感謝を胸に大会へ ~第18回若年者ものづくり競技大会②~・若年者ものづくり競技大会 大会後インタビュー・若年者ものづくり競技大会実績WEBページ・建設学科WEBページ

  • フラワーデザインアートで駅利用者をHAPPYに!

    デザインフェスタ等への展示製作活動を行っている、ものつくりデザイナーズプロジェクト「MDP」は、鴻巣市と鴻巣市観光協会から依頼を受け、地域の魅力発信を目的にしたフラワーデザインアートを制作しました。 2021年度は鴻巣高校、鴻巣女子高校の美術部と協力してJR高崎線鴻巣駅に制作し、2022年度は吹上秋桜高校の美術部も加わり、JR高崎線吹上駅に制作しました。作品は現在も両駅舎を彩っています。 吹上駅のフラワーデザインアートを制作した当時、リーダーだった松本拓樹さん(総合機械学科4年、上記写真右)と、新リーダーの内田颯さん(情報メカトロニクス学科2年、上記写真左)に作品制作について伺いました。 フラワーデザインアートについて 【内田】私たちが手がけるフラワーデザインアートを町おこしの一助にしたいというのが一番の思いでした。そして、鴻巣、吹上の代表的な花や、コウノトリなどを取り入れて華やかにしたい。そういう思いを作品に込めました。吹上駅の作品は、吹上の代表的な花であるコスモスをふんだんに取り入れました。北口、南口の欄間に飾った作品にはその出口にある象徴的な風景を取り入れて、パッと見て方角が分かるように意識しました。北口には元荒川の桜並木を、南口には荒川に架かる水管橋をデザインしています。 【松本】関係者全体の会議で、以前の吹上駅は「北口」「南口」の表示が見づらかったので、大きく表示したいという意見から、北口、南口にある風景を絵にすれば直感的に分かりやすくなるのではという意見が出てデザインが決まっていきました。 デザイン検討の打合せ   南口の欄間に飾られている作品   北口の欄間に飾られている作品 制作過程について 【松本】私たちMDPは、ディレクターとして高校生たちが描いた絵をまとめていきました。一昨年の鴻巣駅の時は、高校の美術部にはレイアウトまでは考えてもらっていませんでした。今回の吹上駅は吹上秋桜高校も加わったこともあり、北口と南口に飾る絵については、各高校からどんな雰囲気で作りたいのか分かるように、ある程度のレイアウト案を考えてもらいました。その上で、3校の美術部には、自由に絵を描いてくださいとお願いしました。 【内田】高校生が紙に描いた絵を一枚一枚、私たちがスキャンしてデータ化しました。白地に描かれている背景を透過して、描かれた花をコピーして反転させたりして、見ていて飽きないように配慮しながらレイアウトしていきました。北口の桜についても、一枚の絵からピンクや白で濃淡をつけてランダムに配置しています。単調にならないように加工したのが特に苦労したところです。 【松本】北口の絵は、高校生から提案されたレイアウトが想定より小さかったんです。そのままでは、絵がスペースの半分もいかないくらいで終わってしまうので、不自然にならない程度に引き伸ばしました。空白を埋めるために桜を多くしたり、最初のレイアウトには無かった灰色のグラデーションを加えたりして整えました。改札を出て左手の柱に飾った作品は、3校に描いてもらった花を私たちでレイアウトしました。この作品は作業量が多く、特に大変でした。四季をイメージして柱を飾るということは決まっていましたが、柱が細いのでどうやって四季を並べるか苦心しました。4面を1面ずつ四季にして並べる案などが出ましたが、最終的に螺旋で四季が流れていくようなデザインになりました。下の方は春をイメージしてパンジーを並べ、真ん中あたりは夏をイメージして向日葵を配置しています。柱に貼る時は、一面全部に絵を描いた状態で柱に巻くことになっていたので、両側の絵が揃うように処理をしています。   改札付近の柱の作品 【内田】窓に貼ったイラストは、当初はステンドグラス風にする予定でしたが、それでは光が遮られてしまい、駅構内が暗くなってしまうため実現できませんでした。イラストの線が細すぎると目立たないし、色をつけると光を遮ってしまうし、折り合いをつけるのに苦労しました。最終的には色の無い線画に落ち着きましたが、できれば色をつけたかったなと思います。普段のプロジェクトの活動であれば、発想を広げることを重視して好きなように作れますが、今回のように公共の場に飾る作品となると様々な制約があることが分かり勉強になりました。       鴻巣女子高校の作品     鴻巣高校の作品     吹上秋桜高校の作品 【内田】今回、作業量が多かったのですが、前例があるというのは非常に助かりました。絵をスキャンしてデータに取り込む方法などは先輩が資料として残してくれていたから作業を効率的に進めることができました。作業は手順どおりにやればできたのですが、鴻巣駅より作業量が多かったため、その作業を一つひとつ終わらせていくことが大変でした。 【松本】鴻巣駅の作品は自由通路の両側に作品を展示していて、一枚の絵を分割して作りました。しかし、吹上駅では絵を3枚制作し、窓に貼るシールの制作もあり、複数の作業になりました。さらに、制作時期が高校の文化祭や私たちの碧蓮祭と重なっていました。高校生も私たちも文化祭で展示する作品の制作もあったので、フラワーデザインアートの制作スケジュールが圧迫されていました。高校生は期末テストもあり、その時期は打合せに参加できない高校生もいたから、意見をまとめたくても思うようにいかないことがありました。   鴻巣駅自由通路に飾られている作品①   鴻巣駅自由通路に飾られている作品② フラワーデザインアートの見どころ 【内田】やっぱり、改札付近の柱の作品です。春夏秋冬をできる限り表現して、どの方向から見ても楽しめるようにレイアウトを考えたので、一周ぐるりと回って見ていただきたいです。この柱は3校が描いた絵でできています。絵のタッチが花によって違っていますが統一感を出せたと思います。それから、欄間に描かれている水管橋や元荒川の桜は、その方向に降りれば現物がありますから、ぜひ見に行っていただきたいです。 【松本】実は、北口の絵にものつくり大学を描くという案もありましたが、コンセプトがフラワーデザインアートだっため人工物より花をたくさん入れたいということもあり、ボツになりました。 【内田】制作中は、見ていて飽きない作品にするということを大切にしていました。町おこしとして協力させていただいているので、デザインに偏りが出ないようにすることも気をつけていました。現場では制約が多く、最初の構想と変わってしまい、断念したこともあるので、もっと華やかにできたという思いはあります。その中で、最善策を探して調整しなくてはならないということが分かりました。きっと、社会に出ても同じようなことは多々あると思いますが一足先に学べました。 【松本】大学でも授業やプロジェクトの活動で展示作品を作りますが、公共の場に展示され、なおかつ大規模な作品の制作に携わったことはありませんでしたから、すごい経験をさせていただいたと思います。それに、MDPだけではなく、鴻巣市の方々や高校生が関わっていて、スケジュールが厳しい中で無事に完成させることができ、リーダーとして安心しました。 【内田】私たちの通常の活動は、個人の自主的な活動が多いので、人をまとめて作業を進めるのは大変でした。だからこそ、プロジェクトとして一丸となって一つの大きな作品を作るというのは新鮮でしたし、皆でものを作る大切さを感じました。学内で限られた人だけに見られる作品と、不特定多数の人の目に触れる作品では達成感が違いました。両駅を利用している市民の方々に少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。フラワーデザインアートは鴻巣駅と吹上駅の2か所で終わってしまいましたが、リーダーを引き継いだ今、共通目標が無くなってしまったので、皆が団結できるようなものを作れないか模索しているところです。目標があると達成するための意志というか、やる気が湧いてくるから、それでプロジェクトが活発になると良いなと思っています。 関連リンク   ・ものつくりデザイナーズプロジェクト「MDP」WEBページ・情報メカトロニクス学科WEBページ

  • でっかいロケットを作りたい-1年生ながらリーダーとして種子島ロケットコンテストで優勝!-

    宇宙開発研究プロジェクト「MAXS」は情報メカトロニクス学科の学生プロジェクトの1つで、ロケットの構造や制御、整備、運用体制を学生が主体となって学んでいるプロジェクトです。 第19回種子島ロケットコンテスト(2023年3月2日~3月5日開催)に、6チームが参加し、ロケット部門の種目3「高度※」で優勝、種目2「ペイロード有翼滞空※」でベストデザイン賞(川崎重工賞)を受賞しました。 「高度」で優勝した機体「KYLEEROCKET-Ⅱ」をチームの中心となって製作したのは、ボートライト 海里さん(情報メカトロニクス学科2年)です。機体製作で工夫したことや初めてロケットコンテストに出場した印象などを伺いました。 最後にはロケット打ち上げの様子を動画で見ることができます。そちらもぜひご覧ください。 幼い頃のワクワクが蘇ってロケット製作へ 工業高校に通っていて、高校生の時から親にものつくり大学を勧められていました。大学進学はあまり考えていませんでしたが、宇宙開発研究プロジェクト(以下、宇宙研)というロケットを作っているプロジェクトがある事を聞きました。その時、幼い頃の記憶がふと蘇ってきました。当時の私はアメリカに住んでいて、広い平野の一角で、父が趣味で全長1mくらいの小さなロケットを打ち上げていました。その光景を見て「ロケットって楽しそうだな」と思っていました。親から勧められた進学でしたが、ロケット目当てに入学し、宇宙研に参加しました。 高校生の時は電子の勉強をしていて、CADは苦手でしたが、ロケットを設計するようになってからは苦手意識がなくなりました。宇宙研は1年生教育がしっかりしていて、入ってすぐにCADの勉強をさせてもらえます。特に、ロケットのトップの部分などは、SOLIDWORKSという3DCADソフトで作ります。CADだけではなく、ロケットの翼の部分はレーザー加工機でバルサ材から切り出して作っています。 種子島ロケットコンテストについて 種子島ロケットコンテストは、小型のモデルロケットを打ち上げる大会です。競技はロケット部門とCanSat部門に分かれています。私はロケット部門の4種目(「滞空・定点回収」、「ペイロード有翼滞空」、「高度」、「インテリジェント」)のうちの1つ「高度」に出場して、優勝することができました。この種目は、大会が支給する高度測定装置をロケットに搭載して、どれだけ高く飛ばせたかを競います。 競技のルールとして、打ち上げた後に機体からパラシュートが開かなかった場合や、落下途中に機体が分離してしまうと失格になります。また、射点から半径400m以内に落下しなかった場合も失格です。それから、高度ロケットは高度計や位置情報を把握するビーコンをロケットの先端に収納するのですが、落下した衝撃で中の機材が壊れたら失格になる可能性もあります。だから、他の部門のロケットに比べて頑丈に作る必要があります。 競技以外にも技術発表会があり、3分という限られた時間の中で機体のプレゼンテーションをします。その後、実行委員から技術面について質問を受けます。技術発表会は大会の結果にも影響があります。晴天であれば、ロケットを打ち上げた結果で順位が決まりますが、雨で競技が中止になってしまった時はこのプレゼンテーションで決まります。だから、必死です。 宇宙研から出場した機体たち(最奥が「KYLEEROCKET-Ⅱ」) 優勝よりも記録を狙った機体づくり 初期デザインや設計計画書の作成は2022年度卒業の先輩に手伝ってもらいましたが、その他はほぼ一人で作りました。他にもチームメイトはいたのですが、他のプロジェクトが忙しかったり、アルバイトが忙しかったりしてなかなか来れなくて。だから、機体名も自分の名前から取って「KYLEEROCKET-Ⅱ」と名付けました(笑)。コンテストの前の試し打ちや機体の改良、技術発表会のプレゼンテーション資料の作成などもほとんど一人でやりました。機体の改良は先輩が残してくれた初期設計を元にして、自分で設計しながら作り上げていきました。 ロケットは打ち上げた後、落下時にバックファイアが開くのですが、初期デザインではチューブの細いところから出る設計でした。試し打ちした時は、展開せずに自由落下して壊れてしまったり、そのまま飛んでいって機体を無くしてしまったりしました。コンテストが迫ってくる中で、このままではいけないと思い、もっとチューブが太くなっている位置からバックファイアを出るようにデザインし直したら、上手く開くようになりました。 改良後の機体 また、機体の強度を上げるために、尾翼のバルサ材を硬化樹脂でコーティングして、落ちても割れないようにしました。他の部分にも硬化されたガラス繊維を使って、軽くて硬い機体を製作しました。それから、フィンの形状も工夫しています。ロケットのシミュレーションが可能な「オープンロケット」というアプリで、遊び心でデザインしてみたら今までで一番高く飛ぶという結果が出ました。たまたまだったのですが、よく考えてみると、先端の方が急な角度になっていて打ち上げた際に空気抵抗を受けにくいデザインになっていました。 今回の機体は、シミュレーション上は319mの高さまで飛びます。大会では280mくらいの高さでした。過去に優勝した機体は500m近くまで飛んだ機体もあって、今回の大会でも私の機体より高く飛んだ機体もひょっとしたらあったのかもしれません。しかし、他のチームは高く飛んでも機体が壊れてしまったり、強風に煽られて紛失したりして失格になってしまったチームも少なからずありました。その結果、私の機体が優勝ということになりました。初めての大会ですから、優勝を狙うよりも記録を残そうと思って頑丈に作っていましたが、それが結果として優勝につながりました。だから、優勝するためには高さをだすことも重要ですが強度のある設計も必要です。優勝した後も機体の改良を続けていて、5月に開かれるプロジェクト内の部内戦でその機体を打ち上げたいと思っています。 初めて大会に出場してみて 初めてロケットの大会に出場しましたが、めちゃくちゃ楽しかったです。競技の他にワークショップという、自分の機体を他の参加者にアピールできる時間があり、その時に私のロケットに興味を持ってくれた人が何人かいました。競技の時も話しかけてもらえて、表彰式の時に「何でこのフィンの形にしたの?」とか質問攻めでした。初めての大会で、1年生でチームのリーダーとして出場できて、優勝できるって言葉にならないくらい嬉しいです。 種目2「ペイロード有翼滞空」でベストデザイン賞(川崎重工賞)を受賞したチームとともに 種子島まで宇宙研のメンバーと行って楽しい思い出もできたかと思われるかもしれませんが、大会のことで頭がいっぱいですごく疲れてしまい、観光する余裕はありませんでした。宿泊していた旅館の近くに鉄砲館があったので、興味があった先輩にノリでついて行ったくらいです(笑)。大会が終わって種子島を離れる時に、ちょうどH3ロケットの打ち上げを港から見ることができました。ロケットを打ち上げる時って赤く光るのですが、その赤い物体がものすごい速さで高くまで上がっていくのを生で見て、遠くからでも凄さを感じました。実際に打ち上げの瞬間を自分の目で見ることができたのは良い体験でした。いつか、自分もでっかいロケットを作りたいです。 関連リンク ・宇宙開発研究プロジェクト 航空機製作への新たな挑戦・宇宙開発研究プロジェクト「MAXS」・情報メカトロニクス学科・種子島ロケットコンテストWEBサイト (※競技内容の詳細は上記のリンクを参照してください)