【知・技の創造】建築観察学

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建築観察学とは

本稿タイトルの“建築観察学”とは何か?この言葉は、小生が数年前から本学で展開している授業の科目名です。この授業では、建築物を構成する建築材料とそれらがどのように建築に取りついているのかを、本学の校舎を受講生が子細に観察して、最終的に図面化することを行います。

では、なぜ“建築観察”なのか?例えば大学入試の問題では、問題文が答えであることはないと思いますが、建築は謂わば答えが見えて建っている状態と言えます。目の前に立ち上がっている建築は倒壊していなければ,それがある意味の正解だからです。正解が目の前にあるのにこれを観察しない手はありません。建築物は,主には構造材料、仕上材料および下地材料(建築材料を支えるための下地に使われる建築材料、一般には壁や天井の中にあるため目に触れることは少ない)で構成されており、非常に多くの建築材料の集合体と言えます。

これらを観察することによって、建築材料の成り立ちや諸物性を知るとともに、どのように施工して組み立てられているかなど、建築を成立させるための技術体系の一端を体得できる効果があります。

現場を知る

建築は、経験工学の集積である側面が強く、机上の空論よりも現場を知ること、観察することによって、正に「百聞は一見に如かず」の事象の塊と言っても過言ではありません。小生は若い頃に大学での正式な建築の教育を受けないまま建設業界に勤めることとなりました。そのため、業務で分からないことがあると、どの書籍にどの技術が書かれているのか?について、恐らく大学の建築学科において専門教育を受けてきた方々は知っている基本的な事柄すら分かりませんでした。

そこで、当時の少ない給料で片っ端から専門書を購入し、読み漁りました。その結果、どの書籍にどのような技術的な答えが載っているのかの見当がつけられるようになりましたが、一部の書籍では実務では使わない古すぎる技術が記載されていることにも気づきました。すなわち、市販の書籍が全てではないことが分かったのです。

自分の足で調査する

そこで始めたのが、自分が触れる建築物がどの建築材料でできているのか?材料はどのように構成されているのか?寸法?などについて、巻き尺やスケッチブックを手に測ることでした。元来凝り性なところがあって、山手線の車内のつり革や手摺の直径にはじまり、椅子の寸法構成なども乗客からの奇異な目で見られることも厭わず測ることが癖づいていました。お酒を飲みに行っても、カウンターの素材や寸法などを観察していました。周りからするとちっとも酔えない酒席です。

現在のようにインターネットが無く、自分の足を使って情報収集するしかなかったのです。今どきで言うところの“タイパが悪い行為”でした。ところが、観察することによって体得した知識が未だに活きており,普段の教育研究活動のみならず日常業務への向き合い方を考える際にも大いに役立っています。建築に限らず,特に初学者や新入社員の若い方々は、目の前にある物事や事象を観察する癖をつけてみてはいかがでしょうか。必ずや将来の自身の血となり肉となり、真の知識として体得できると思います。

埼玉新聞「知・技の創造」(2026年3月6日号)掲載

Profile

大塚 秀三(おおつか しゅうぞう)
建設学科教授

川口通正建築研究所を経て、2005年ものつくり大学技能工芸学部建設技能工芸学科卒業(社会人入学、1期生)
2013年日本大学大学院理工学研究科博士後期課程修了 博士(工学)
2018年4月より現職。専門は建築材料施工、コンクリート工学

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