【知・技の創造】多能・多彩な森林・木材

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ダイバーシティとは

ダイバーシティ(多様性)という言葉が広く用いられています。その本質は互いの価値観の違いを認めることです。森林も多面的な機能を有し、木材生産、水源涵養、地球環境保全、保健・レクリエーションなどを担い、人々の暮らしを支えています。日本の国土の約7割は森林ですが、多くの人は残り約3割の地域で生活しています。埼玉県では南西部の飯能地域や北西部の秩父地域に森林が広がる一方、主に南東部にかけて街が集中しています。近年は街路樹も減少し、都市部で暮らす人々が森林を意識する機会は多くありません。しかし、観葉植物や花を飾り、木製家具を取り入れることで心身がリラックスすることが多くの研究で示されています。最近ではDIYで木製什器をつくるニーズもあります。つまり、人は多彩な植物や木製品を通じて日常に小さな森林環境を取り込み、豊かさを感じているのです。埼玉県土の約3割が森林でそのうち約5割は人工林です。戦後80年を経て人工林の約8割が伐採期に達しました。昨年には全国植樹祭が開催され、彩の国として県産木材の普及と森林資源の循環を図る「活樹」が発信されました。同年、本学でも地域木材・森林共生研究センターを設立し、今年2月には渋沢MIXで埼玉県産木材イノベーションフォーラムを産学共同で開催しました。

「技能」と「工芸」

私は瀬戸内の海辺で育ち、海のない埼玉に住んで11年目です。秩父を訪れた際、大学時代に木造建築を学んだ奈良県吉野郡川上村を思い出しました。川上村は秩父と同様に渓谷と秩父古生層を有します。そこで林業や木造建築を学ぶ「木匠塾」に参加し、本学開学の契機となった「職人大学構想」に尽力された先生方と出会い、その思想に共感しました。本学部名である「技能工芸」には「職人の技能は工芸と呼べるほど高度な価値があることを社会に認知されたい」願いが込められています。職人の地位向上を目指すもので近年のブルーカラービリオネアにも通じます。職人不足が懸念される現在、私は木造住宅分野での「新たな多能工の育成」をテーマに、国の科学研究費を受けて研究を進めています。新たな多能工とは例えば、フィジカルな手作業とAIやBIMなどデジタルスキルを合わせ持ち、社会の多様なニーズに応えられる技術技能者です。私は研究者として、埼玉県(現・久喜市)出身で日本初の林学博士・本多静六が、川上村出身の山林王・土倉庄三郎から林業を学び、多くの公園を設計したことにも励まされています。水源地の村づくりは森林と水の深い関係を教えてくれます。木材も水を含み、かつては川を利用して山から街へ運ばれました。木造建築も、林業、製材・加工、設計・施工へと続くサプライチェーン(川上・川中・川下)として捉えられます。さらに、山から海へ流れる養分は牡蠣などの生育を支え、私たちの食卓にもつながります。

「多」の字は「夕」を二つ重ねて一日の終わりが積み重なることを表すともいわれます。多量という意味だけでなく、適材適所、足るを知る精神も想起させます。多世代に渡り育まれた木材で新たな多能工がつくる建築は、樹齢を超える長い年月の中で、人々の多彩な暮らしを記憶する器となるでしょう。

Profile

戸田都生男(とだ・つきお)
 
ものつくり大学技能工芸学部建設学科教授。1975年生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業、設計事務所等を経て京都府立大学大学院博士後期課程 博士(学術)、一級建築士。16年4月より木造建築・環境デザイン研究室。25年4月より地域木材・森林共生研究センター長。専門は木造住宅設計・環境心理行動学。

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大学概要、学科紹介、入試情報など、 詳しくは大学ホームページをご覧ください。
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