統計と分析
先日の新聞にサッカー日本代表の森保監督の話しがありました。試合に臨むにあたり、 自チーム選手のコンディション、相手チームの状態、ピッチのコンディション、天候、審判のジャッジ等々、勝敗を決する要素が数多くある中で最善を尽くすのみという記事でした。
大学の学生募集も似ています。学生募集への影響因子としては、若者人口・オープンキャンパスの内容・大学広報活動・留学生動向・他大学の状況・世の中の経済動向など多岐に亘り、それらが時間と共に揺れ動くなかでの勝負です。

AIとアンケート
ものつくり大学は実習・実務教育を”売り”にしている大学です。高校生に教育の現場を見てもらいたいとオープンキャンパスに力を入れています。現在、弊研究室では学生募集活発化の糸口を見つけるべく、オープンキャンパス来場者の自由記述テキストアンケートを統計的に調べています。
分析にAIツールが使われています。自然言語処理(NLP)中の特異値分解アルゴリズムを使ってテキストを数値データに変換、そのデータを統計分析にかけています。ここでNLPがAI技術の一分野です。文章をAI分析にかけて感想を数値化して、年・月・季節・志望学科・回答者属性・催し物内容などの観点から翌年の新入生数との相関を調べています。アンケート分析では辞書に基づいて文章内の感情語を特定し、肯定的・否定的・全体的なスコア(スコア高い→肯定的感情大)を付けることができます。来場者アンケートが有す総体的感情の度数分布を見ることができるわけです。図は10年間の約9500データの分析結果の一例です。従来はアンケート分析に個人や特定のグループの主観的な判断が介在していましたが、AIを用いて客観的・定量的な分析とすることができます。感情分析は英文に限られますが、英文化の翻訳ソフトにもAI技術が使用されています。
AIに関しては、生成AIの大学での使われ方が課題です。学生の思考力や創造力成長の機会を奪うのでは?という一方、この便利なツールを使わない手はない、卒業後の社会人としての一種の作法ではないかとの意見です。この分野の動きが速すぎるのも対応を難しくしています。ユーザとしてAI技術の推移を見守っていきたいです。
話しを学生募集に戻しますと、『AI:知能、ハードウェア:AIと物理空間を繋げる”身体”』という構図の中で、ハードウェアすなわち「モノづくり」への注目が益々高まり、AIを使いこなしながらモノづくりで自己表現したい多くの高校生がものつくり大学を希望してくれることを期待しています。
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佐久田 茂(さくた しげる)
情報メカトロニクス学科教授。1961年生まれ。東京大学大学院精密機械工学専攻修士課程修了。工学博士、技術士(機械部門)。株式会社東芝生産技術センターを経て、2013年より現職。専門は精密機械システム。




