岩槻で進める実践的調査
田尻研究室では、さいたま市岩槻区を対象に、大学と高校が連携したまちづくりの実践研究を進めています。実学重視を掲げるものつくり大学の大学院生と、地域経済界の発展を支える人材を長年輩出してきた歴史を持つ岩槻商業高校の生徒が探究を目的に協働する取り組みです。岩槻地域では埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)の延伸に関する計画が進行しており、地域の将来像を検討するうえで基礎的な調査の重要性が高まっています。そこで、大学院生と高校生らは、①地域住民、②商業関係者、③地域イベント来訪者の三者を対象としたフィールド調査を実施して、意識の把握や課題の抽出を行いました。
フィールドワークまちに出よう!
岩槻駅を中心とした幅広いエリアを対象とした住民調査では「地元の商店に関する情報」を求める声を得たこと、商業関係者調査では「若年層の流入による活性化」が期待されていること、地域イベントにおける来訪者調査では「伝統が息づくまち」のイメージを持たれていることなど、多くの有意義なデータが得られました。なかでも商店街でのヒアリングは、岩槻商業高校の生徒が店舗を一軒ずつ訪ね、鉄道延伸計画が及ぼす経済活性化への期待を丁寧に調査しました。大学院生はフィールド調査の同伴や、調査手法の指導・データ分析を担い、高大連携の実践的な学びが現場で具体化するとともに、地域との信頼構築にも寄与していると考えます。

地域へのフィードバック
調査の結果は、鉄道延伸後のまちづくり方針を検討する基礎資料として整理し、大学院生と高校生が協働した政策提案として取りまとめ、地域の課題を将来の視点から捉えて、持続可能な地域の形成に向けた道筋を考えるきっかけとなりました。また、岩槻区役所からの支援として、今回の取り組みの結果を一般市民や関係者に向けて報告するための場を設けることができ、「自分たちのまちの現状や課題の解像度が高まった」との声を得ました。商店会との意見交換では、大学院生が調査結果を報告し、高校生が現場で得られた課題を述べると、商店主から「若い視点は地域の将来を考える上で貴重であり、調査を継続してほしい」との評価が示されました。
次世代育成の場を形成
高大連携の取り組みは、次世代のまちづくり人材育成においても大きな意義を持つと考えます。大学や高校の若者たちが、調査設計や政策立案を通じて実践的な都市計画を学び、地域の商店主や住民と直接向き合うことで地域経済のリアルを体感します。また、お祭りやイベントの実行委員会では、多世代の市民と向き合い、地域の文化や歴史を肌で感じながら調査を進めることで、世代や立場を越えた対話が生まれ、地域の未来を共に創造していきます。このように、実学的な取り組みと地域密着型の学びが組み合わさることで、大学や高校の若者たちが地域の課題を自らの言葉で語り、解決策を提案する姿が生まれます。地域社会の構造を理解し課題解決に向けた思考を深める契機となり、地域の未来を担う人材を育成する場となっています。
埼玉新聞「知・技の創造」(2026年9月4日号)掲載

田尻 要(たじり・かなめ)
建設学科教授。九州大学 博士(工学) 総合建設会社、国立群馬工業高等専門学校助教授、ものつくり大学准教授を経て、2013年より現職。コンサルタント委託、自治体連携、審議会委員など。




