猛暑を乗り越えるために
今年もまた夏が来ると考えるたびに恐怖を覚えます。昨年2025年の夏季(6〜8月)平均気温は3年連続で記録を更新したばかりか、群馬県の伊勢崎では41.8℃を観測するなど最高気温の記録まで更新してしまいました。もはや地球は壊れているとさえ感じます。
筆者らは暑さから身を守るための工夫や猛暑時代の省エネルギー対策について継続的に研究してきました。本誌にもその第1報として「夏期快適空間の実現」と題し、居住空間への日射を遮ること、すなわち日陰を作ることの有効性を説いています。そして、第2報では「持続的な生産活動を」というタイトルで、電力に頼らない工場冷却水の製法について解説しました。今回は第3報として、家庭用の冷蔵庫に着目した冷却効率アップによる省エネルギーについて考えてみたいと思います。地球温暖化対策や電気料金の上昇が社会的課題となる昨今です。冷蔵庫のさらなる省エネルギー化は重要なテーマであると言えます。

冷蔵庫のあれこれ
冷蔵庫は家庭内では多くの電力を消費する機器なんです。資源エネルギー庁のデータによれば、家庭における冷蔵庫の消費電力はエアコンに次いで2番目となっています。一般的な冷蔵庫では、液体状態の冷媒が冷却器と呼ばれる装置内で気化および膨張する原理によって庫内を冷やしていますが、その前段階ではかなりの電力を消費するコンプレッサーが必要となるためです。
さて、このコンプレッサーで圧縮されて高温となった冷媒は、通常冷蔵庫の側面近くの放熱パイプを通って冷やされ、冷却器に到達するまでに液体に変わります。この放熱のために冷蔵庫の側面は熱くなります、設置時には壁から数センチほど離す必要があるのです。しかし、たとえ冷蔵庫側面と壁面との間に十分なスペースをとっても、止まっている空気に向かっての放熱は効率がよくありません。もし、サーキュレーターなどを使って側面に風を通すことができれば放熱はもっと促進されます。うちわで扇ぐと、空気の温度が下がるわけでもないのに、涼しく感じるのと同じ理由です。放熱の促進はダイレクトに消費電力の低減に繋がりますので、一手間かける甲斐があるかも知れません。
とはいうものの、冷蔵庫の側面に十分な空間を空けること、まして風を通すことなど難しい家庭も多いと思います。そこでもう一つ提案します。側面の放熱パイプに沿って流路を作り、外側から水を流すというアイデアです。固体から水への放熱量は空気に比べて桁違いなので、効果が期待されます。設置スペースもほとんど要りません。熱を奪った水はトイレのタンクや風呂に放出すれば室内に熱は残りませんし、水道料金にも影響しないはずです。
もちろんこの方法は一般の家庭ではもっと難しいでしょう。それに漏電を引き起こす可能性もあるので軽率に試せるものではありません。将来的に冷蔵庫メーカーなどが提供してくれるのなら、あるいは標準装備となれば、ますます省エネルギーは進み快適な住空間が実現されることと思います。
埼玉新聞「知・技の創造」(2026年4月3日号)掲載

香村 誠(こうむら まこと)
情報メカトロニクス学科教授
慶応義塾大学博士課程中退、都内エンジニアリング企業を経て2002年ものつくり大学着任、現在に至る。
博士(工学)。明治大学兼任講師、専門は「流体力学・伝熱工学」




