オークランド地区(2025年調査)
オークランド・ハーバーブリッジは,1959年に建設された主径間長244mの曲弦のトラス橋です.シドニー・ハーバーブリッジと同様に,ガイド付きのブリッジクライムがあります.この橋は街の象徴でもあり,元々の4車線から1969年に両側に2車線,合計8車線に拡幅されています.そのため,トラスの両側に箱桁が設置されています.元のRC橋脚から鋼製片持ち梁を接合した複合構造で,その上にU字型の鋼製橋脚を設置して,支承を介して箱桁を固定しています.橋長1,020mで,海面から約43mの高さになります.



ハーバーブリッジ





ウィンヤード・クロッシング・ブリッジは,歩行者自転車専用橋で,2011 年に建設された跳開斜張橋です.ウィンヤード・クォーターとハーバー・エンターテイメント地区を結んでいます.橋長100mで,2つの22mの可動部分を跳開して幅36mの水路を作り,港湾エリアに船舶が通行できるようにしています.満潮時の閉じられた橋のクリアランスは3mであり,小型船舶は通行可能です.橋の開閉はそれぞれ90秒と60秒かかります.船舶から無線で連絡が取れる現場のオペレーターによって制御されます.バックスティの鋼部材の中央にヒンジがついており,バクスティワイヤを巻き取るとそのヒンジ部分が内側に折れ曲がって開きます.たまたま,開閉の動画を撮影することができました.


ウィンヤード・クロッシング・ブリッジ

ウィンヤード・クロッシング・ブリッジ



ウィンヤード・クロッシング・ブリッジ跳開時
ウィンヤード・クロッシング・ブリッジの閉まるときの動画
ウィンヤード・クロッシング・ブリッジの東側に古い跳開橋がありました.カウンターウェイトは鋼部材にコンクリートを打設した複合構造になっています.



グラフトン橋Grafton Bridgeは,オークランドにあるグラフトン渓谷に架かる道路橋です.1910年に鉄筋コンクリートで建設され,オークランド中心業務地区とグラフトンと結んでいます.橋長は98m,橋台からの高さは26m,渓谷からの高さは約43mです.建設当時,世界最大の鉄筋コンクリートアーチ橋でした.この橋は片側1車線,両側に歩道が設けられています.1938年に橋のアプローチ部分のフィーレンデール構造に亀裂が発見され,補強工事が行われました.この後,橋の通行には重量制限が課され,1957年にはさらなる補強工事が行われました.

グラフトン橋



グラフトン橋補強構造
オークランド市内の歩道橋を以下に紹介します.
スカイタワー近くのトラス橋は斜材が浮き立ったデザインでした.



オークランド港近くの商業施設を連絡するプラットトラス橋はガラス張りです.


商業施設を連絡するプラットトラス橋
オークランド港近くの商業施設を連絡する歩道橋ですが,斜張橋ではないですね.普通の桁橋でピアと端部で屋根を吊っている構造です.


ハーバーブリッジに向かう高速道を横切るトラス構造の歩道橋は,全体をカバーして安全に配慮しているものでした.


ハーバーブリッジに向かう高速道を横切るトラス構造の歩道橋
オークランド港の桟橋設備,アプローチと浮体構造です.

ティウィティンガTe Whitinga歩道橋は,ヘンドン・フットブリッジとも呼んでいるようです.ウォータービュー・コネクション・プロジェクトの重要な構造物です.2017年に完成したアーチ支間長300mの高速道路上を跨ぐ歩行者自転車専用橋です.3次元的な美しい軌跡を描く曲線のデッキが,桁と交差する美しいアーチによって支持されています.




2018年に安全上の問題により,古いマンガレイ橋が閉鎖されました.新しいマンガレイMangere橋は,曲線の歩行者自転車専用橋であり,2022年に開通しました.斜めに傾けたアーチで曲線の路面の外側を吊っています.RC構造の旧橋も傍らに展示されていました.


マンガレイ橋

マンガレイ橋


マンガレイ橋

マンガレイ橋


エニーピンチェス歩道橋Ernie Pinches Footbridgeは,コンクリート床版斜張橋です.歩道橋とはいえ補剛桁のない斜張橋です.主塔は鋼構造ですが,桁はPCもしくはRCです.支間中央部は斜張橋としてのプレストレスが入らないので,どのような設計をしているのか心配です.斜吊部分にコンクリート横桁があるのみで,あとはコンクリート床版です.そのためか路面に凹凸が見られます.


エニーピンチェス歩道橋

エニーピンチェス歩道橋

もう少し南東にも同様の設計をしている2径間の斜張橋もあります.


ビーチクロフトBeachcroft Bridge歩道橋は,主塔を傾斜させた支間長100mの パイプトラス斜張橋です.主塔も主桁も鋼管で構成されています.白い主塔に青いパイプトラスの補剛桁であり,美しさと安定感があります.斜め吊定着部を下弦材から面外に出しており,照明の機能も有しています.


ビーチクロフトBeachcroft Bridge歩道橋


タマルリザーブTaumanu Reserve 歩道橋は,鋼トラスの歩道橋ですが,橋内部の木製パネルに描かれたアートワークは,プロジェクトのマオリ族アドバイザーの指導を受けて制作されました.2015年に完成しました.





Remuera駅の北西にあるアーチ+逆アーチ歩道橋は,アーチ部分で高速道路を跨ぎ,逆アーチ部分で鉄道路線を跨いでいます.非常に斬新なでデザインですが,安定感も感じられます.


Remuera駅の北西にあるアーチ+逆アーチ歩道橋


Remuera駅の北西にあるアーチ+逆アーチ歩道橋
ハーハーブリッジを北に渡ったところのネオポト歩道橋 Onepoto Bridgeは,クジラの骨格,波,あるいは未完成の帆船を思わせる木製の湾曲した板で覆われています.板の上部は屋根を貼付けて腐食に配慮しています.


オークランドの建造物を簡単に紹介します.

オークランドの街
スカイタワーは,高さ328mであり,南半球で最も高いタワーです.展望台やレストラン,カジノ,アトラクション(スカイジャンプ,スカイウォーク)を備えた複合施設です.展望台はガラス床があり,回転レストランがあります.192mの高さから飛び降りるスカイジャンプやタワーの外周を歩くスカイウォークが人気です.

スカイタワー

スカイタワー バスターミナル

スカイタワー バスターミナル

聖マシュー教会は,石造りのどっしりした英国風ゴシック様式の教会です.ステンドグラスが素晴らしく,アンテ−クな雰囲気を醸し出す木造の屋根と天井から構成され,白い石柱が特徴的です.1902年に建てられた歴史的建造物です.教会の中からパイプオルガン,管弦楽器の音色や鐘の音が聞こえます.

聖マシュー教会

聖マシュー教会

聖マシュー教会

オークランド博物館は,ニュージーランドを代表する博物館であり,戦争記念施設です.1920年代に建設され,1950年代増設された新古典主義的な様式を示し,立地はオークランド中心商業地区で,展望台の丘と呼ばれる休火山の一部に位置します.収蔵品は特にオークランド地方を中心としたニュージーランド史や,自然科学史,軍事史に関連した資料が多くあり,オークランド戦争記念博物館(Auckland War Memorial Museum)とも呼称されています.

オークランド博物館
セント・メアリー教会は,木造ゴシック・リバイバル様式の教会であり,クライストチャーチで著名な建築家ベンジャミン・マウントフォートによって設計され,1897年に完成しました.以前の旧セント・メアリー教会の跡地に建てられましたが,1982年にパーネル・ロードを挟んで現在のホーリー・トリニティ大聖堂の隣に移転しました.

セント・メアリー教会



セント・ポール教会は,ニュージーランドのオークランド大学とオークランド工科大学に近いシモンズ・ストリートに位置する歴史ある英国教会です.この教会は市内で最も古い教会であり,オーストララシアで最大規模の英国教会信徒数を誇ります.大聖堂は1843年に完成しており,現在の建物は1895年のものです.

セント・ポール教会

セント・ポール教会
オークランド美術館は,オークランドの中心部のアルバート公園Albert Parkにあります.ニュージーランドで最大の収蔵作品数の美術館であり,1888年に美術館と公共図書館の複合施設として設立されました.現在は美術館だけに使用されています.美術館のコレクションが急速に増加した結果,展示スペースの増設が必要となり,1995年に拡張工事が行われ,別棟のニューギャラリーが開設され,現代作品が展示されるようになしました.2007年に改修工事が行われ,訪れた2025年にも改修工事中でした.

オークランド市庁舎(Auckland Town Hall)は,オークランド中心部(CBD)のクイーンストリートに位置する歴史的なエドワード朝様式の建物で,時計塔がランドマークです.アオテア・スクエアに面しています. 1910年に建設されました.建設当初から現在に至るまで行政機能に使用されていることで知られています.また,有名なグレートホールと独立したコンサートホールも備えています.歴史上初めて行政と娯楽の両方の常設拠点となり,その大ホール(1,673席)はライプツィヒのゲヴァントハウスをモデルに設計され,世界でも最も優れた音響設備の一つとされています.

オークランド市庁舎

オークランド市庁舎
オークランド・シビック・シアターAuckland Civic Theatreは,2,378席の客席をもつ文化的遺産劇場です.1929年に開場し,最近では2000年に改修及び保全工事が行われています.館内のロビーはインド様式をモチーフに造られていて,天井はドーム状,釈迦の座像,ねじれた柱などが見られます.

オークランド・シビック・シアター
セント・パトリック大聖堂は,オークランド中心業務地区にある文化遺産に登録さローマ・カトリック教区の母教会です.1843年に木造の礼拝堂が建設され,1848年には石造の教会に建て替えられ,1884年には拡張工事が行われ,最終的に1907年に現在の大聖堂に建て替えられました.

フェリービルはオークランド港湾施設の拠点であり,市内中心業務地区とノースショア他,ハウラキ湾の島々を結んでいます.ワイテマタ駅(地元のバスと鉄道の拠点)に位置しています.黄色のエドワード朝バロック様式の建物と,新しい埠頭と待合室の建物の2つの主な要素で構成されています.

フェリービル

フェリービル
ワイテメイトWaitemata駅(ブリトマート駅)は,オークランドの中央駅であり,駅周辺にはバスターミナルやフェリーターミナルがあり,全体としてブリトマート交通センターと呼ばれています.駅舎は1912年頃に建てられた古典的な外観の郵便局の建物を使用しています.2003年に街外れの不便な所にあった旧オークランド駅をここに移転して,ワイメイト駅に名称が変更されました.プラットフォームは地下にあり,4本の近郊線の始発駅となっています.

ワイテメイト駅(ブリトマート駅)
ファンガレイ地区(2025年調査)
ローワー・ハテア・クロッシングLower Hatea Crossing のマリーナに到着に,テ・マタウ・ア・ポヘTe Matau A Poheという象徴的な跳開橋があります.この橋は,骨で作られたマオリ族の釣り針のデザインからヒントを得たとのことです.開く時は,橋脚に設けた黄色い2台のジャッキで桁端部を突き上げ,局面を持った跳開部の主桁が回転しながら跳ね上がります.ブルージュの橋に似ていますが,跳開機構は異なっています.船の高さが 6.5 メートルを超える場合は,無線または電話で橋を上げるようリクエストする必要があります.







コトゥイトゥイ・ウィティンガ歩道橋は,ポート・ロードからワイアロヒア川の西半分に架かっています.これにより,リバーサイドを結ぶハテア・ループ ウォークウェイが繋がりました.橋は2014年に完成しています.中央のトラス部分が旋回して開きます.橋脚に旋回機構があり,ワイアロヒア川を利用するボートが通行できます.





コトゥイトゥイ・ウィティンガ歩道橋 旋回部路面
この橋の近くに石造の波と船がありました.

石造の波

石造の船
ハミルトン地区(2025年調査)
ビクトリア橋Victoria Bridgeは,ハミルトンのワイカト川に架かる優美な道路橋です.1910年に開通した全長152mの鋼鉄アーチ構造です.オープンスパンドレル構造で,104mの3ヒンジアーチと両側に2径間のアプローチスパンを備えています.幅員は5.5mで1.4mの歩道を有しています.鋼部材は英国のクリーブランド社によって製作され,架設されました.当初の鉄筋コンクリート床版は路面電車を通行できるように設計されていたが,1930年代に軽量の鋼床版が設置されました.これはカナダ国外では最古のものとされていましたが,1992年に安全上の理由から車道拡張工事の際に撤去され,現在の鋼床版に取り換えられました.



ビクトリア橋



ビクトリア橋

クロードランズ橋 Claudelands Bridgeは,ワイカト川に架かる2車線の鋼トラス道路橋で,クロードランズとハミルトン・セントラルを結んでいます.1883年7月末頃に完成した旧鉄道橋を,1968年に上路トラスの道路橋として改修されました.本橋の横に別のコンクリート鉄道橋が施工されています.



クロードランズ橋


クロードランズ橋
フェアフィールド Fairfield Bridge橋は,ワイカト川に架かる鉄筋コンクリート製のタイドアーチ橋です.橋長139mで,主構造の幅は70cm,支間長40m,路面からのアーチ高さ約8mである3つのアーチから構成されています.幅員は6.1m,歩道幅は1.5mです.






フェアフィールド橋 型枠を上手に作っています.
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