2018年8月,12日間の橋梁調査を行いました.ロンドンでレンタカー(ベンツ)を借りて,エジンバラまで時計回りで4,000km走りました.英国は基本的に高速道路が無料なので,とても経済的な方法です.日本と同じ左側走行右ハンドルなので,フランスやオランダで運転した時よりも楽でした.
ロンドン(2009.4,2012.7,2013.3,2018.8調査)
ロンドン市内の橋を見て回りました.1873年に完成したアルバート橋は現役でしかもオシャレですね.斜張吊橋の原型でしょうか,とても美しいです.


テムズ川のタワーブリッジはロンドンの名所です.1894年に完成した跳開橋です.側径間はアイバーの吊橋になっています.タワーの内部は博物館になっており,中央径間上部の歩道橋には世界の橋梁の写真などが展示されていました.また,中央径間は近年定期的に開閉していて,そのための内燃機関等も展示されています.



ミレミアムブリッジは ,コンペの結果,アラップ,フォスター・アンド・パートバーズ,アンソニー・カロによる設計案が当選しました. 2000年6月10日の開通当日は大勢の歩行者が訪れ,人々が橋を歩き始めると大きな横揺れをが始まりました.開通日の午後以降は通行人数を制限する対応がとられましたが,対策工事を行うため一時閉鎖となっています. この橋は主塔が低い吊橋であり,多少の揺れは予測されていましたが,歩行者の歩調に橋が共振したことが原因でした.本橋にはその後,東京大学の藤野先生が検討した制振装置が取り付けられ,2002年に再開通しています.






その他,テムズ川には昔からの古い鋼橋が多くあります.隅田川に似て,アーチが多いです.




ドッグランドも見て回りました.活気がありますね.昔,鋼橋技術研究会でドッグランドの橋展を行ったことを思い出しました.昔の造船所の跡地が再開発されています.アルミ製のポンツーンの上に歩道橋を載せた構造はユニークでした.いくつもタワーを立てた斜張橋はエレベータもしくは階段で上る歩道橋です.




斜張橋ですが,主桁がガラスで出来ているチャレンジ・オブ・マテリアルズ・ブリッジを見ました. ロンドンの科学博物館の中にある歩道橋です.強化ガラスの橋があってもいいですね.




ローリング・ブリッジは,巻き取って開く架道橋です.ユニークな橋です.


ロイヤル・オペラ・ハウスに設置されている歩道橋はユニークな形をしています.


イングランド西部(2018.8調査)
イングランド南部のプールという港町に,ツイン・セールス・ブリッジという跳開橋があります.車で渡る時に丁度赤信号で停車しました.桁を斜めに切断しているので,開いたら桁の裏もくっきり見えました.開いてボートが2艘通り,閉まるまで5分程度でした.


その後,南西部のエデン・プロジェクトも見ておきました.人気のある観光地であり,雨でも大勢の家族連れが来ていました.植物を愛する人が多いのでしょうか?光を取り入れることができる植物園はGFRPで作られており,採光に配慮しています.ちょっと変わったラーメン橋もありました.



プリマスにあるロイヤルアルバート橋を見ました.この橋は1859年に完成した鉄道橋で現役です.レンチキュラートラス(レンズ状のトラス)の初期のころのもので,上弦材はリベット接合のパイプであり,下弦材はアイバ―の板で構成しています.上弦材の座屈に対する配慮が感じられます.この橋はブルネルが設計したものです.
横にテイマー橋(吊橋の道路橋)があり,その歩道部からよく見えます.



ブリストルにあるクリフトン吊橋を調査しました.1864年完成で今なお現役の道路橋です.車の通行に1£必要です.箱に入れるだけですけど...高速道路は無料ですが,時々,橋梁のところだけ通行料が必要です.主ケーブルにはアイバ―を用いています.ラチストラスのポニー形式の補剛桁もおしゃれで,全体的に美しいと感じました.



バーミンガムは英国第2の都市,その中心部のデパートはユニークな構造です.ブツブツの外壁が印象的です.坂を下ると隣のビルとの間に吊り形式の歩道橋がありました.この近代的設計の自由さを感じました.



アイアンブリッジは1779年完成の鉄橋で世界遺産です.3つのアーチを法線方向に繋ぐ部材に亀裂が多くあるとのことで修復中でした.全景が撮影できなかったのは残念ですが,補修工事中の現場を見せていただきました.


チェスターの街は世界遺産です.とても美しい,木材をうまく使った建築がとてもよかったです.




リバプールではアルバートドッグ等を見ている時に,旋回橋が動いているのを見ました.作業者が実際に操作している様子がわかりました.


アンダートン・ボートリフト(英国産業遺産)では,約15mの高低差のある運河を観光船が昇降する様子が確認できました.実際に現役で使われており,観光資源になっています.



マンチェスターではユニークなアーチ橋を調査しました.横からはニールセンのように見えましたがアーチが桁を斜めに渡っていて,少し変わっています.



またマンチェスターの中心地のショッピングセンタービルの連絡歩道橋であるコーポレーション・ストリート・ブリッジは,ミノムシのような構造です.パイプをうまく利用しています.鋼管とロッドを利用した構造です.全体を強化ガラスで覆っており,床に木材を使っています.



ウェールズ(2018.8調査)
ニューポートにある運搬橋を見ました.1906年完成ですが,近くにアーチ橋もできており,数年前まで使われていたようですが,現在は使われていません.しかしながら,保存状態はよかったです.


ニューポート市内にユニークな歩道橋があります.リンク式のタワー2本で桁を吊っています.短径間吊橋ですが,初めて見た奇抜さです.



ウエールズではトーマステルフォード設計の橋を調査しました. ポントカサステ水路橋は1805年完成の鋼桁とコンクリート橋脚を合成させた複合構造の原型のような構造で世界遺産です.船が1艘通れるぎりぎりの幅の水路があります.





メナイ吊橋は1818年完成の道路橋,今なお現役で使用されています.中央径間177mの立派な橋です.英国の産業革命後の著名なエンジニアであるトーマステルフォードの代表作です.もちろん主ケーブルはアイバーです.


コンウィ城橋は1826年に完成した中央径間100mの吊橋です.世界遺産のコンウィ城の横でコンウィ川に架かっています. テルフォードの設計で,橋を支える塔が城の小塔 (turret) と調和するようにしたとのことです.すぐ横のコンウィ鉄道橋は北ウェールズ沿岸鉄道線を通しています.この錬鉄製の管状橋は スティーブンソンによりデザインされた歴史遺産であり,補剛箱桁の原型のようなものです.


ホーリーヘッドの先端で鉄道を跨ぐ,ステンレスアーチのセルティックゲートウェイ歩道橋は,溶接箇所もわかりにくく美しい構造です.ステンレスパイプ構造で中路橋になっており,主構アーチが外に広がっています.アプローチはPC橋ですが,中央部はステンレスの現場溶接です.


フォイード・ハーバー歩道橋(Foryd Harbour Bridge)はFRP製の斜張橋であり,ケーブルを巻き取り方式の跳開橋です.



スコットランド(2010.2,2018.8調査)
スコットランドのエジンバラは3度目ですが,今回初めてゆっくりフォース鉄道橋を見ました.これまで横の吊橋を通行中に見ただけでした.1890年に開通したキャンチレバートラスの長大橋で主径間長521mです.130年前に恐るべしですね.




最近,完成した4径間斜張橋であるクイーズフェリー・クロッシングも見ました.2017年夏に開通しました.主径間長は650mであり,両側から中央にプレストレスを導入しているのでRC床版のひび割れに配慮した構造です.メトロと道路が通行しています.横の吊橋が老朽化しているために建設されました.主桁は鋼箱桁とRC床版の合成桁です.阪神高速殿の神戸湾岸延伸PJに,ちょうど参考になると思いました.





また,エジンバラから少しグラスゴー寄りに,運河エレベータのファルカーク・ホイールがあります.近代的なデザインの大きな構造物です.これも観光資源になっています.



グラスゴーにはユニークな橋が多くあります.サウス・ポートランド・ストリート吊橋は1853年に完成したアイバーの吊橋です.いい感じで,歩道橋として供用されています.これもスチーブンソンによって設計されました.




また,クライド川にはユニークな橋が多くあります.ミレミアムブリッジはパイプをフランジに使った橋桁です.支間中央部はトラス構造で補剛しています.屋根のある斜張橋もありました.また,アーチと桁が斜めにクロスするニールセン橋もあります.古いラチストラスの鉄道橋もグラスゴーの駅付近にあります.










中心部には斜材がPCで桁がメタルの変わった橋もあります.桁がS字カーブしています.



2010年2月にスコットランド北部のオークニー島にある潮流発電サイトEMECで装置などを見ました.



イングランド東部(2011.2 ,2018.8調査)
2011年2月にニューキャッスルに行きました.ブレースドリブアーチのタイン橋が有名です.支間長は162mで形式はシドニーのハーバーブリッジに似ています.1928年に開通しています.



ゲーツヘッド ミレニアム橋 は,川を航行する船を通すため,湾曲した歩道面が持ち上がる画期的な橋です. 歩行者と自転車利用者向けに設計されたこの橋は,その中央からゲーツヘッドの街並みを眺めることができます.橋全体が斜めに傾くことで,小型船が橋の下を通ることができる仕組みになっています.アーチ部分は歩道面とのバランスを保つ役割を担い,約 5 分かけて斜めに傾くそうです.橋の長さは 126 m です.


その他,この付近は昔の小さな造船所などもあったそうで,おしゃれな旋回橋もありました.色使いがいいですね.

エジンバラからイングランド東海岸を南下しました.サンダーランドのアーチ橋2つを調査しました.モンクウエアーマース・鉄道橋と道路橋です.ブレースリブの3ヒンジアーチは趣がありました.小さい方の鉄道橋のアーチは腹材が丸くなっていて,魅力がありました.



また,ミドルズラブでは現役稼働中の運搬橋をみました.1911年完成でゴンドラに車を乗せて動いている時に撮影できました.現役で動いている様子は,感動します.



さらに,桁が上下する昇開橋のニューポートブリッジは1932年建造です.カラフルに塗り替えられており,かっこいいですね.近くにおしゃれな斜張橋もあります.


最後に2つのアーチを繋げたインフィニティ歩道橋を見ることができました.構造力学を理解したデザインであると感じた次第です.



イングランド東部のハンバー橋は学生時代の憧れでした.中央径間長1,410mで当時世界一,スレンダーな箱桁に斜めハンガーという斬新さであり,技術力の高さを感じました.明石海峡大橋に首位の座を奪われ,その後多くの橋梁が建設され,今では中央径間長で10位近くになってしまいましたが,その優雅さは健在です.


鉄ちゃんの聖地,ヨークにある英国立鉄道博物館で,ゴーンレス橋を見ました.1825年にストックトン・ダーリントン鉄道が開通した時に,その支線で使われていた4m弱の4径間のレンチキュラートラスです.この橋はジョージ・スティーブンソンが息子とともに建設に携わったとのことです.



⏎ BRIDGES 世界の橋・建造物 に戻る
⏎ HOME フロントページ(ものつくり大学 橋梁・構造研究室)