IABSE 2006 Copenhagenテクニカルツアー(2006.6調査)
グレートベルト橋
グレートベルトEast Bridgeアンカレイジ内部の見学を行いました.橋上のアンカレイジ部分からアンカレイジの中を下り,スプレーサドル,ケーブルストランド定着部,支承,伸縮装置,ダンパー,桁内部の構造,維持管理用のモノレールなどを見学しました.メインケーブルは,亜鉛メッキ鋼線の上にワイヤーラッピングされ,エポキシ塗料とポリエステル樹脂でラッピングされています.デンマークの同様な吊り構造の腐食損傷を十分考慮した防食法を採用しているようですが,長期の暴露には飛来塩分だけでなく冬季の融雪剤散布考えるとどこまで耐久性があるのか不明の部分もあります.また,箱桁内部は除湿装置により空調していますが,鋼部材桁内面はミルプライマーの状態で塗装していないのが印象的でした.

また,本橋の箱桁内部には,中央径間長が1,624mと長いことから維持管理用,点検施設としてモノレールが設置されてます. 点検通路を設置するのではなく,点検車両(East Bridgeは,モノレール,West Bridgeは,軽自動車)を配備するところは点検員への負荷を最小限とする維持管理方針が感じられます.また,吊り橋部分の移動量を測定している装置で,常時モニタリングしているようでした.

アンカレイジの踊り場部分ですが,飛来塩分,海水の越波や鳥類の排泄物からコンクリートを保護する目的でエポキシコーティングされていました.確かに,塩分の白い粉が隅には残っていたことや鳥類の排泄物がいたるところに残っていたことから,コーティングの重要性を認識しました.

グレートベルトWest Bridgeの巨大な点検用検査装置の視察を行いました.桁内部の点検は,PC箱桁であることから前述の鋼桁と異なった自走式4輪点検車両が配備されているとのことです.また,外部点検には,PC連続桁構造の道路橋と鉄道橋の腹板に取り付けられたレールをガイドに点検装置が設置されていました.今回のIABSEテクニカルツアーの技術者に見せる目的で実際に可動させていただきましたが,鉄道桁と道路桁の間を検査車が移動し,点検場所ではフロアを90度回転して,桁下面や外側が点検できる機構になっています.想像を大きく超える点検装置のダイナミックさにまるでロボットを見ているようでした.いずれにせよ,このように長大な構造物の点検には,従来の人力歩行や路上を走行する点検車両では点検自体が困難であることを認識しました.

Dronning Alexandrines 橋(ブレースドリブ中路アーチ橋)
1943年完成のブレースドリブ中路アーチ橋であり,アーチ支間長は127.5m,アプローチはRC上路アーチが10数連から構成されています.壮観な橋梁です.
- 道路橋,2車線(交互に各1車線),両側に歩道があります.
- 鋼主構造の接合はリベットであり,同年代の日本と構造的には変わりはありません.
- 鋼材に部分的な発錆が見られるものの,塗膜,床版,コンクリートの部分を含めて全般に十分健全な状態に維持されているものと思われます.
- アーチ橋の東補剛桁側面に,幅70~80cm程度の点検用通路(H型断面)が設置されています.
- アーチ橋の西補剛桁側面に,送電線のストラットが設置されています.点検等で送電線の状態を見通しやすい位置ですが,日本国内にこのような事例は無く,むきだしの送電線が手の届くような場所にあるのは,保安・防犯上の問題がでないのかと感じました .

点検用通路
点検用通路
送電線のストラット
鉛直さる梯子
Dronning Alexandrines 橋
Farø橋(斜張橋)
1985年完成,中央径間長290mの鋼床版箱桁の斜張橋です.
- 本橋の主桁断面形状は,美観,耐風安定性のほかに塗装経費の低減を考慮して張出しの無い1箱桁閉断面を採用しています.
- 箱桁内部は除湿装置で湿度を抑えることで無塗装となっています.
- 橋梁の全長3.3kmにわたり,桁内に点検用のモノレールあり,点検員が移動できる構造です.
- 主塔はA型で,1面吊りケーブル構造であり,橋脚の幅を小さくするために,塔柱を桁下の下方で内側に折り曲げた形式が採用されています.
- 主塔はRC構造であるが,主桁直下の横梁は常時引張応力が作用するため,PC構造が採用されています.
- 道路橋,4車線(交互に各2車線,中央分離帯あり),歩道はありません.側部に点検用と思われる通路が設置されています.この点検用通路は,主桁に付けた小さなブラケットにプレキャスト床版を設置したものです.
- 主桁の外観は,特に目立つような劣化は見られていません.
- 斜張橋端部の橋台コンクリートに管理用の階段および入口ドアが設置されており,鋼床版箱桁にはマンホールのようなものが見あたりませんでした.

点検通路
点検通路
管理用の階段および入口
Frederik den IX’s 橋(跳開橋)
1962年に完成した道路鉄道併用跳開橋です.操作管理塔の職員の方に本橋の操作室,機械室を案内して頂きました.
- 跳開橋(床版1枚が片側に開くタイプ),1962年完成
- 道路橋,4車線(交互に各2車線,中央分離帯あり),両側に歩道があります.
- 鉄道橋(単線).橋脚・橋台は道路と兼用しているが,橋そのものは分離され,1mほど離れています.
- 1箇所の管理棟では,道路,鉄道を総合的に管理しています.
- 管理棟に入り,操作室,機械室,カウンターウエイト,工具室など視察しました.設備管理,整理整頓が行き届いているように感じられました.
- 主桁の下面などを視察させて頂いたが,特に目立つような劣化は見られません.
- 機械室があるため,橋の下面や支承など,従来点検しにくい箇所が目視しやすかったです.
- 操作員は1名で,日に20回前後操作するとのことでした.開閉時の交通規制は,信号および遮断機によるものでした.
- 開閉操作は見られませんでしたが,道路橋,鉄道橋が同時に動くものと推察されました.
- 過去に架け替えが行われたらしく,100数十mほど位置を変えたようです.

Frederik den IX’s 橋(跳開橋)
Frederik den IX’s 橋(跳開橋)
Guldborgsund橋(跳開橋+アーチ橋2連)
東京隅田川に架かる勝鬨橋と同様に,双葉跳開橋(径間中央で分離された床板が両側に開くタイプ)+両側にアーチ橋各1連からなり,1934年に完成しています.
- 道路橋,2車線(交互に各1車線),片側のみに歩道あり.管理棟は2箇所.
- メインテナンスが行き届いており,特に目立つような劣化は見られませんが,床版はUリブタイプの鋼床版に取り替えられています.
- アーチ橋の桁端部は,アーチリブを桁の支承方向にカーブさせて仕上げています.
- 管理棟に入り,操作室,機械室,カウンターウエイト,変圧器など視察しました.設備管理,整理整頓が行き届いているように感じられました.
- 機械室があるため,橋の下面や支承など,従来点検しにくい箇所が目視しやすい構造です.
- 操作員は1名で,通行があるたびに随時開閉し,誘導船との間で連絡を取り合うようです.開閉時の交通規制は,信号および遮断機によものです.幸い,訪問時間中に船舶の通行があり,開閉操作を見学することができました.小型船舶(ヨット)3艘が通過するため片側のみ開きました.全開まで数分でしたが,音もなくスムーズでした.閉める時の方が,速度が遅いように感じられました.

開いている時にヨットが通過
Guldborgsund橋(跳開橋+アーチ橋2連)
アーチ端部
Guldborgsund橋(中央の跳開部)
リベット疑似箱桁
トラニオン支承部
跳開時の様子
Storstrømsbroen(3連のタイドアーチ橋)
1937年(完成年度確認中)に施工された本橋は,道路鉄道併用橋で,3連のタイドアーチ橋で構成されています.
- 道路鉄道併用橋,道路2車線(交互に各1車線),鉄道橋(単線).道路と鉄道の間に,コンクリート製の分離壁(高さ1m程度)があります.
- 歩道は,道路側のアーチの外側に設置されてます.
- アーチリブの両側に点検用の通路が後で添加されており,目視が行いやすいよう配慮されています.若干の発錆が見られます.
- 塗膜の劣化がかなり進んでおり,表層が落ちているところが散見されます.再塗装が近いものと思われました.
- 垂直材の一部が,ウェブに補剛材をボルト接合する形で補強されていました.
- 支承部には,点検を行うための梯子と転落防護の柵が設置してありました.

地覆部が塩害,凍結融解
Storstrømsbroen(3連のタイドアーチ橋)
垂直材の補強
垂直材の補強
アーチリブ両側の点検用路
補剛桁上フランジの腐食
コンクリート舗装
支承部の点検を行うための梯子と転落防護柵
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