木造建築視察@岩手県遠野市・住田町

夏休み前,研究室有志で科研テーマである木造空き家に関する視察に岩手に行きました。

遠野市の山奥にある クイーンズメドウ・カントリーハウス 。木造の馬屋やゲストハウスが広大な敷地の中に点在しています。

外壁の木板はメンテナンス(張り替え)が容易な納まりで,板の上から桟 と真鍮釘で押さえられています(押縁)。建築家:吉村順三の軽井沢山荘と同じディティールとのことでした。

上から外壁の断面を見ると納まりがよく分かりました。

この地域の半屋外的中間領域空間【通り抜け土間】のある民家の形式は,近現代の住宅やゲストハウス等に引き継がれていました。かつて馬屋のあった民家で馬と人の出入りに配慮してこのような門構えが,通りと庭を繋いだのです。

今は自動車等を出し入れしたり機能的に異なる使い方もされているようですが、形態が現在にまで残っていることが重要です。 宿泊先の民宿もまさにこの形式でした。

古き良き時代の民家を補強しながら長く使い続けることで,多くの人達にその魅力を継承していくことになります。

続いて林産地である住田町へ。役場庁舎等をご案内頂き,3.11の木造仮設住宅を視察しました。町内の約9割もが森林に覆われ,主に地元の杉や唐松を用いて構成。大屋根は凸レンズ型のトラス梁で無柱空間や大きく張り出した庇となり,ラチスの耐力壁は採光・通風も可能。いずれも町内の加工場で製材・調達可能な材寸で制作されていました。

風徐室など後付けオプションで暮らし方の工夫】が見られる一方で,【空き家か否かは玄関先の雑草の量】で見当がつきます。 どんな高性能で最新の建材や設備よりも 【人が住み、暮らすことで住宅が維持され生きていく】というあらためて当然のことを想起させられました。